高評価ローグライトSTGに「アクセシビリティ要素で実績取りやすくなりすぎ」との批判寄せられる。ゲーム実績の希少性と、ホスピタリティのジレンマ

『Whisker Squadron: Survivor』の開発者Aaron San Filippo氏は9月28日、同作のアップデートにおける「アクセシビリティ設定実装の意図」を説明する声明を投稿した。実績が以前より取得しやすくなるのではないかといった批判が寄せられていたという。

Whisker Squadron: Survivor』の開発者の1人Aaron San Filippo氏は9月28日、同作のアップデートにおける「アクセシビリティ設定実装の意図」を説明する声明を投稿した。同作に先日実装されたアクセシビリティ設定に対して、実績が以前より取得しやすくなるのではないかといった批判が寄せられていたという。


高評価を獲得するローグライト奥スクSTG

『Whisker Squadron: Survivor』は3Dシューティングゲームだ。本作の舞台となる銀河は「Swarm」と呼ばれる、分裂や増殖を繰り返すロボットに征服されてしまった。銀河に生きる動物たち(Animalkind)を守るため、プレイヤーは猫のパイロットとなり、Swarmを一掃することとなる。

ゲームプレイでは、画面奥へと進む機体を操作しながら敵を倒していく。プレイヤーはショットとブーストを使用可能で、これらは使用するたびにエネルギーゲージを消費するためリソース管理も重要だ。そして倒した敵がばらまく経験値アイテムを回収することでレベルが上昇。ランダムに選ばれた複数アップグレードから希望のものを選択できる。またゲームオーバーになってしまっても進捗に応じてステージや武装が解除。敵を倒すごとにVPと呼ばれるポイントも獲得可能で、恒久的なアップグレードを開放できる要素も用意されている。

本作は本稿執筆時点で161件中91%が好評とする「非常に好評」ステータスを獲得。まだ早期アクセス期間中でありながら、キュートなキャラクターデザインやバラエティーに富んだアップグレードの品質がよく、何度も繰り返し遊べると評価する声が見られる。作風を『スターフォックス』シリーズになぞらえる声もあり、ローグライト要素を盛り込んだゲームプレイなどが評価を受けているようだ。


アクセシビリティ設定の実装と批判

本作に向けてはすでに複数回のアップデートが配信されてきた。9月14日に配信されたパッチ0.62においては、さまざまな新要素追加・不具合修正などに加えて、アクセシビリティ設定が実装。カメラの揺れの無効化、ゲームスピードの減速、プレイヤーが受けるダメージの減少の3項目を設定可能になった。また直近では9月28日にパッチ0.63が配信され、こちらでも不具合修正や新要素の実装がおこなわれている。

一方でパッチ0.62でのアクセシビリティ設定実装に対し、一部ユーザーからは不満が寄せられていたという。本来であれば取得が難しい実績について、取得難易度が下がったとの声だ。これを受けて開発者の1人であるAaron San Filippo氏が声明を投稿。アクセシビリティ設定実装の意図を説明している。

まずAaron氏によると、最近になって実績「Victory」の取得率が約1%から約10%に跳ね上がったそうだ。「Victory」は本作をZone 10まですべてクリアすることで得られる実績だ。同氏によると、あるユーザーは実績取得率の上昇はアクセシビリティ設定が実装されたためであるとして、否定的な意見を寄せていたという。アクセシビリティ設定を有効化することでゲームの難易度が緩和され、実績の希少性も下がることに対する不満だろう。


開発者の反論とアクセシビリティ設定の「狙い」

Aaron氏はこうした意見に対し反論。まず同氏は実績「Victory」の最近の取得率上昇は、アクセシビリティ設定の実装とは関係がないとの見解を説明している。同氏によれば、実績取得率が上昇したのはパッチ0.63による影響とのこと。同パッチではZone 10のクリアが適切に記録されていなかった不具合が修正された。これにより、パッチ配信以前に不具合により「Victory」を取得できていなかったプレイヤーが一気に実績を取得し、実績取得率が増加したと見られるわけだ。

またAaron氏はアクセシビリティ設定実装の意図についても説明。本作は難易度が高めに設定されているため、プレイヤーに選択肢を与える目的で用意したそうだ。プレイの障壁となる要素は人によって異なるため、今後もフィードバックを受けてアクセシビリティ設定は追加されていく予定とのこと。

そのためこれらのオプションは「難易度設定」としては想定されておらず、難易度を下げる目的で使われるようなオプションではないそうだ。あくまで遊びにくい場合の選択肢のひとつと想定されているようで、使う必要がないあるいは使いたくないのであれば使わなければいいとしている。また今後、難易度設定としてのバランス調整を加える予定もないという。


なおAaron氏は、アクセシビリティ設定の実装により、今後全体的な実績取得率がわずかに上昇(marginally higher)する可能性も認識しているという。しかし本作では、「実績はほとんど個人的な要素のはず」との考えのもと、たとえアクセシビリティ設定を使用していても、実績が無効化されない仕様になっているとのこと。また、実績達成率についてはチートで解除される可能性もある点も指摘。アクセシビリティ設定を使用している場合に別の実績が解除されるような仕様について言及し、実装・メンテナンス・別個取得の手間などが生じ、すべてのプレイヤーを混乱させる要因になるとしている。

Aaron氏は最後に本作が早期アクセス配信中のゲームである点に言及。プレイヤーが楽しめる要素として実績機能を早めに導入したものの、今後も継続的にバランス調整はおこなわれていくと述べている。またそのため、正式リリースとなるパッチ1.0に近づくにつれて実績を達成する難易度も変化するだろうと説明している。そのためパッチ1.0ではゲームの実績をリセットするオプション機能を実装するかもしれないとのこと。正式リリース時のバランスで遊び直す際の楽しみとして構想されているようだ。


声明に対しては、アクセシビリティ設定が実績取得の難易度を実質的に下げている点に対するユーザーからの批判も引き続き一部ある。取得率の低さは実績を狙うモチベーションのひとつであり、また困難な実績がアップデートで所得しやすくなる点には複雑な想いを抱くユーザーもいるのだろう。ただ一方で、アクセシビリティ機能によりユーザーの間口を広げる判断への称賛や、そもそも本作が早期アクセス配信中のタイトルであることから理解を示すユーザー投稿も見られる。

昨今ではアクセシビリティ設定の拡充に力を入れるゲームも数を増やしている。視覚情報、聴覚情報を補助する機能のほか、「水中への恐怖を和らげる設定」など、実装されるアクセシビリティ設定ゲームによって千差万別(関連記事)。どのアクセシビリティを用意するかは、ゲーム内の要素や、寄せられたフィードバックから吟味されているのだろう。アクセシビリティ設定は幅広いユーザーに楽しんでもらうための機能であり、本作『Whisker Squadron: Survivor』では実績機能についてもより幅広いユーザーが満喫できるような調整がおこなわれたかたちだ。

『Whisker Squadron: Survivor』はPC(Steam)向けに早期アクセス配信中だ。スペシャルプロモーションとして10月5日午前2時まで20%オフとなる1360円で販売中。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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