『フォートナイト』のEpic Games、従業員約800人をレイオフ。急成長事業「UEFN」の支出が収益を上回るため

Epic Gamesは9月29日、同社の従業員の約16%を解雇したことを発表した。あわせて、『Fall Guys』の開発元Mediatonicのスタッフらも同スタジオで大量の解雇がおこなわれたことを報告している。

Epic Gamesは9月29日、同社の従業員の約16%を解雇したことを発表した。またあわせて、『Fall Guys』の開発元Mediatonicのスタッフらも同スタジオで大量の解雇がおこなわれたことを報告している。


Epic Gamesはゲームエンジン「Unreal Engine」のほか、『フォートナイト』などの開発元として知られる米国の企業だ。エンジン・ゲーム開発のほか、デジタルゲームストア・プラットフォーム「Epic Gamesストア」を運営している。

今回Epic Gamesは、従業員のうちおよそ16%になる約830人を解雇したことを発表した。同社CEOのTim Sweeney氏が従業員に通達したといい、発表ではその際の社内メールも公開されている。発表によると、ゲーム開発や中核事業に支障がないように、解雇された従業員の3分の2は「コア開発以外のチーム」が対象になったとのこと。解雇された従業員へのサポートとしては6か月分の基本給が支払われ、米国・カナダ・ブラジルでは6か月分の医療費負担を含むパッケージ(退職金)などが提供されるという。

Epic Gamesは今回のレイオフの理由として“収支の持続可能性を確保するため”であると説明している。同社は昨今では『フォートナイト』に向けてコンテンツ制作ツール「Unreal Editor for Fortnite(UEFN)」を提供するなど、メタバースの創造を視野に入れた展開を続けていた。「UEFN」でコンテンツを制作したクリエイターは、エンゲージメントに応じて配当金を受け取れるという仕組みだ。


Epic Gamesは声明において、そうした展開により『フォートナイト』は再成長を見せているとしたものの、最近では収益よりもはるかに多くの投資をおこなっていたとしている。またクリエイター制作コンテンツが主体となるため、クリエイターへの多額の収益分配を伴うと言及。バトルロイヤルモードを主体に『フォートナイト』が成長を見せていたころに比べると、収益率の低い事業になっていると述べている。

Epic Gamesは当初従業員の解雇なしにそうしたビジネス構造の変化を乗り切れるとの見立てをもっていたそうだが、今回それが見直され非現実的であると判断されたかたちだという。従業員の解雇が収益を維持する唯一の方法であり、今回の決断に至ったとしている。

なお今回のEpic Gamesの発表に先駆けて、『Fall Guys』の開発元として知られるEpic Games傘下のMediatonicのスタッフらが、SNS上で大量解雇がおこなわれていることを報告する様子も見られた。レベルデザイナーのMax Boyle氏や同スタジオの研究部門(Lab Division)でリードゲームデザイナーを務めるEd Fear氏が、文字ブロックを組み合わせて作られた「Decimation(間引き)」という言葉を撮影して投稿していた。両氏はビジネス向けSNSであるLinkedInでも解雇されたことを報告しており、Mediatonicではゲーム開発に関わるスタッフも解雇となったようだ。なお海外メディアGame DeveloperがEpic Gamesの広報担当者のコメントとして伝えたところによると、Mediatonicは閉鎖されることはなく、『Fall Guys』への投資は継続されるとのこと。

Epic Gamesは今回の発表において従業員の解雇のほかに、音楽ストリーミング・販売サービスBamdcampおよび広告テクノロジー企業SuperAwesomeの大部分を売却することも明かしている。SuperAwesomeについては「Kids Web Services」部門のみがEpic Gameに残るかたちになるそうだ。Kids Web Servicesは保護者による認証・同意システムを提供するプラットフォーム。米国では13歳未満の子供が触れるコンテンツや、ユーザーデータの収集に厳しい規制をかける「児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)」が存在。ゲームの運営などにあたって、同法に反しないよう引き続き同部門のテクノロジーを活用する狙いがあるのだろう(関連記事)。

今回の決定の背景にあるとされた「UEFN」については、順調に展開されている傾向も見られる。Epic Gamesによる今年5月末(日本時間)の発表では、クリエイターへの収益整備の取り組みにより、収益配当額が大幅に上昇しているとされた。そうした収益規模の増大を受けて企業の参入や、クリエイターへの企業によるアプローチも増加傾向にある(関連記事)。ただ「UEFN」でのコンテンツ制作は活発化を見せている一方で収益分配の必要もあり、今回Epic Gameは事業計画を見直す決断に至ったようだ。

なお発表においては、レイオフの影響により当面は開発リソース不足のため予定どおりにリリースできないコンテンツもあるとしている。一方で『フォートナイト』の次のシーズンおよびチャプター5や、同作に向けて開発中と見られる複数のプロジェクトは優先的に開発され、スケジュールどおり開発されるとのこと。また引き続きメタバースのトップ企業になる能力を保持し続けるとのことである。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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