『Starfield』ディレクター、宇宙船バトルAIを思い切り“アホ”にしたと明かす。お蔵入りした「極限環境専用宇宙服」システムなど開発秘話が続々ポロリ

『Starfield』の開発において、“惑星づくり”は試行錯誤を重ねて苦労した部分だったという。当初は環境ごとに適した宇宙服を装備しなければならない、といった要素も構想されていたそうだ。

『Starfield』の開発において、“惑星づくり”は試行錯誤を重ねて苦労した部分だったという。当初は環境ごとに適した宇宙服を装備しなければならない、といった要素も構想されていたそうだ。ポッドキャスト番組「The AIAS Game Maker’s Notebook Podcast」にて、本作のディレクター兼エグゼクティブプロデューサーを務めるTodd Howard氏が本作開発中のさまざまなエピソードを明かしている。


『Starfield』は、『The Elder Scrolls』シリーズや『Fallout』シリーズの開発で知られるBethesda Game Studiosが手がけるRPGだ。プレイヤーは人類が太陽系外に進出している2330年の世界を舞台に、希少なアーティファクトを求める宇宙探検家集団コンステレーションの一員として、広大な宇宙の星々を冒険する。

今回、本作のディレクター兼エグゼクティブプロデューサーを務めるTodd Howard氏が、Academy of Interactive Arts & Sciences(以下、AIAS)のポッドキャスト番組に出演。AIASはゲームの授賞式典「D.I.C.E. Awards」を主催していることで知られる、インタラクティブアートの発展と認知を目的とする非営利団体だ。Todd氏は同番組にて、Insomniac GamesのCEO兼創設者Ted Price氏と対談。『Starfield』制作時のエピソードを語っている。

中でも注目したいのは本作の「惑星づくり」についてだ(映像の39分ごろ)。Todd氏によると、本作における惑星はプレイヤーを楽しませられるように作るのがもっとも複雑だった要素だったという。たとえば惑星の規模であれば、十分な広さを確保しつつ、かつ広すぎて退屈にならないような見極めが難しかったという。同氏は、惑星づくりにおけるそうした試行錯誤に長い時間を要したと振り返っている。

さらにTodd氏は惑星ごとの環境システムについても言及。本作においては、惑星が放射線や熱などの過酷な環境を有する場合もあり、宇宙服ごとにそれらへの耐性値が備わっている。同氏によれば当初このシステムはきわめて厳しかったという。高放射能の惑星用、極寒の惑星用といった複数の宇宙服を用意する必要があるシステムが構想されていたそうだ。

しかし社内フィードバックを受けた調整を重ねた結果、そうしたシステムは「状態異常」に形を変えたそうだ。本作では耐性が不十分な宇宙服で過酷な惑星にて活動すると、凍傷や被爆といった状態異常が付与。ステータスにさまざまなマイナス効果が生じるものの、治療が可能だ。Todd氏はこの変更について、ゲームプレイの根幹にはかかわらないようにしつつ、没入感ももたらせるようなシステムへと緩和したという狙いを説明している。現状のバランスでは重要度が低いため調整の余地があるかもしれないとしつつも、環境による状態異常は調整を重ねて解決された事例のひとつだそうだ。


Todd氏はこのほかにも本番組で、本作開発におけるさまざまな試行錯誤について紹介している。たとえば宇宙船の戦闘においては、AIを思い切り間抜け(really stupid)にしたという。これは宇宙空間という特殊な挙動の環境で、敵AIが賢くなりすぎるのを防ぐための施策だそうだ。同氏によると、たとえばあえて間抜けに調整されたAIは、プレイヤーが攻撃を当てやすいように旋回するといった挙動が設定されているとのこと。

また、この調整も社内プレイでのフィードバックに基づいているそうだ。Todd氏は、特に宇宙船の戦闘を担当したチームについて、フィードバックを受けた要素を全面的に変更することも厭わず、プロジェクトを前進させ続けていたと称賛している。

さらに今回の放送では、本作が昨年のホリデーシーズン、つまり発売の約9か月前に暫定的に完成していたことも明かされている。その後、社内でのテストプレイやQAによって磨き上げられていったそうだ。ちなみに過去には、マイクロソフトのゲーム部門CEOでXbox事業を率いるPhil Spencer氏が、社内のQA(品質保証)チームが“総出”で本作をテストプレイしているとも明かしていた(関連記事)。本作では、早期に主要な開発を終えたうえで、十分に人員を割いたテストプレイによりじっくりと磨き上げられていく開発方針がとられたわけだろう。

複数回の延期を経て開発されてきた『Starfield』。今回のポッドキャスト番組ではTodd氏により、本作において試行錯誤が重ねられた要素について興味深い話が語られた。なお放送によると、本作は今後長期にわたるサポートが計画されているとのこと。先日には今後のアップデートで実装が検討されている複数の要素が明かされたほか、ストーリー拡張コンテンツ「Shattered Space」も開発中となっている。今後はプレイヤーからのフィードバックも受けながら、さらなるブラッシュアップが進められていくことだろう。

『Starfield(スターフィールド)』は、PC(Steam/Microsoft Store)/Xbox Series X|S向けに発売中。Xbox/PC Game Pass向けにも提供されている。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

記事本文: 2643