CD PROJEKT RED(以下、CDPR)は9月26日、『サイバーパンク2077』に向けた最初で最後の拡張パック「仮初めの自由」の配信開始を予定している。今回、CDPRを擁するCD PROJEKT Groupの2023年上半期決算報告にて、「仮初めの自由」が本作に向けた唯一の拡張パックとなる理由が改めて説明されている。
『サイバーパンク2077』は2020年発売のオープンワールドアクションゲームだ。開発はCDPRが手がけ、内製エンジンであるREDengine 4が用いられている。本作初の大型拡張パックとなる「仮初めの自由」では、壁で外部と隔絶された危険地帯ドッグタウンが登場。主人公Vに新たな任務が託され、“新合衆国大統領”を救出することになるという。忠誠心と陰謀が絡み合うスパイ・スリラーをテーマにした物語が展開されるそうだ。誰を信用し、誰を味方につけるのか。プレイヤーの選択が物語を左右するのだろう。
今回、CD PROJEKT Groupの2023年上半期決算報告がおこなわれた。そして報告では、事業開発部門シニア・バイスプレジデントのMichał Nowakowski氏により「仮初めの自由」が本作に向けた唯一の拡張パックとなることが改めて明言されている。さらに同氏は、本作に向けたほかの拡張パックを用意しないという決定は、本作の売上や経営陣による評価などとはまったく関係ないと強調。これは技術的な理由による決断(technological decision)だといい、スタジオがUnreal Engineでの開発に移行することが重要な理由のひとつだとしている。
CDPRは『ウィッチャー2 王の暗殺者』以降、独自のゲームエンジンREDengineをベースに開発をおこなってきた。先述のとおり本作『サイバーパンク2077』にもREDengine 4が用いられている。一方で2022年3月に開発中であることが発表された『ウィッチャー』シリーズ新作からは、Unreal Engine 5での開発に移行することが発表された(関連記事)。
一方でその際には『サイバーパンク2077』の拡張パックがREDengine 4で開発されることも明かされており、その後拡張パックは「仮初めの自由」として2022年8月に発表。公式サイト上では当時から『サイバーパンク2077』向けに予定されていた唯一の拡張パックであると説明されていた。今回の2023年上半期決算報告にて、改めて「仮初めの自由」のほかに拡張パックが予定されていないことが明言。REDengineからUE5へのエンジン移行が主要な理由であると明かされたかたちだ。
なお『サイバーパンク2077』では当初、マルチプレイコンテンツの開発なども計画されていた。一方で、マルチプレイ計画は開発の優先順位の関係で停滞していたことが明かされている(関連記事)。本作のシニアクエストデザイナーなどを務めたPhilipp Weber氏によると、『サイバーパンク2077』においては“ゲームのメイン要素を快適に遊んでもらうための改善”に高い優先度を置いてきたという(Eurogamer)。
本作は発売当時、ゲームのコア部分は評価されながらも、バグなどの不具合問題やPS4/Xbox One版の最適化不足などパフォーマンスに関する批判が寄せられていた。一方で本作に向けては複数の大型無料アップデートを実施。不具合修正に加え、ゲームバランスの調整も実施されてきた。
昨年2022年9月には本作をもとにしたアニメ「サイバーパンク エッジランナーズ」が配信開始。同時期にはアニメの要素をゲーム内に実装する無料アップデートも展開され、「4週連続毎日100万人が遊んだ」と公式が報告するほどの賑わいを見せることになった。最近ではSteamでの評価ステータスが「やや好評」から「非常に好評」に持ち直すなど、無料アップデートを重視する開発方針の転換が功を奏した様子が見られる(関連記事)。
紆余曲折を経た本作にて、最初で最後の拡張パックとして9月26日に配信される「仮初めの自由」。REDengineからUE5への移行によるスタジオの開発体制の変化が、本作が新展開を終える大きな理由となるようだ。なお2022年10月には『Project Orion』として、『サイバーパンク2077』の正式な続編の開発をCDPRが手がける計画も明かされている(関連記事)。『サイバーパンク2077』にて実装を見なかったマルチプレイコンテンツといった要素が、続編に盛り込まれるかどうかも注目されるところだろう。
『サイバーパンク2077』の大型拡張パック「仮初めの自由」はPC/PS5/Xbox Series X|S向けに9月26日発売予定だ。同プラットフォーム向けの無料アップデート2.0も同日配信となる見込み。