騒動渦中のダンジョンPvPvE『Dark and Darker』、ネクソンによる米国での訴訟が棄却される。「韓国で裁判する方が適切」との裁判所判断

 

ネクソンがアメリカで提起していた『Dark and Darker』をめぐる訴訟が、現地時間8月18日に棄却された。「アメリカよりも韓国で裁判をするほうが適切である」と判断されたためだという。Games Radar+が報じている。


『Dark and Darker』は韓国のスタジオIRONMACEが手がける、一人称視点のマルチプレイ対戦ダンジョン探索ゲームだ。本作は過去にSteam向けに配信が予定されており、数回のプレイテストを実施。Steam最大同時接続プレイヤー数で約10万8000人を記録するなど人気を博していた。一方Steam向けの配信は断念され、先日8月7日よりChaf Gamesなる配信サイトにて配信開始されている。

というのも、本作については大手ゲーム企業ネクソンが告訴をおこなっている。ネクソンはIRONMACEに対し、ネクソンの過去の未発売プロジェクトである『Project P3』のコードやアセットなどの内部資料が、『Dark and Darker』に流用されていると主張。韓国において不正競争防止法違反の疑いでネクソンが告訴したのを皮切りに、現在も係争中である。2023年3月には著作権侵害の申し立て(DMCA)通告によりSteamページが閉鎖(関連記事1関連記事2)。そして4月にネクソンはアメリカ・ワシントン州西部地区連邦地方裁判所に対して、IRONMACEおよびその代表者2名を被告とする営業秘密保護法(Defend Trade Secrets Act)違反および著作権侵害に基づく訴訟を提起していた。

Image Credit: CourtListener.com


そして先日8月18日、その訴訟が棄却されたことが伝えられている。裁判記録によれば、IRONMACEは7月22日に、裁判所に対してフォーラム・ノン・コンビニエンスによるネクソン側の訴えの棄却を申し立てていた。フォーラム・ノン・コンビニエンスとは、訴訟の審理をするうえでほかの裁判所の方が適切でより便宜な法廷地であると認められる場合に、申立を却下することができるという法理とされる。

今回のケースでは、IRONMACEの本拠地が韓国であり、証拠資料なども韓国語と見られる。そのため、韓国が法廷地として適切、かつより便宜であるというのがIRONMACE側の主張だ。最終的に法廷はこの主張を認めて訴訟を棄却。つまり「アメリカではなく韓国で裁判をする方がよい」と判断された形だ。

GamesRadar+によると、この判決を受け、IRONMACEは声明を出しているという。その中ではアメリカにおける訴訟を「大規模ゲーム企業が小さな競争相手を圧倒する強引な方策である」といった見解が述べられ、ネクソン側への批判がおこなわれている。対するネクソン側は本稿執筆時点では本件に関するコメントを出していないようである。ネクソン側が韓国を法廷地として新たに訴訟を提起するかどうかは注目されるところだろう。


なお韓国においては、不正競争防止法違反などの疑いでIRONMACEの一部スタッフらに対して韓国警察による捜査がおこなわれている状況にある。そうした数々の問題を抱えながらも、先述のとおり本作は8月7日に配信開始されている(関連記事)。今後の捜査の行方や『Dark and Darker』の運営の動向は注目されるところだ。