かつて任天堂にて『F-ZERO』シリーズなどの開発に携わってきた今村孝矢氏が、同シリーズの新作展開を求める声についてTwitter上で言及。オリジナルのレースゲーム開発の意欲をちらりと見せ、ファンから期待の声も寄せられている。
今村孝矢氏は任天堂にて『スターフォックス』シリーズや『F-ZERO』シリーズなどの開発に携わってきたゲームクリエイター/アートディレクターだ。2021年に任天堂を退社するまで30年以上にわたり同社の作品を多数手がけ、現在も大阪国際工科専門職大学で教鞭を執るかたわら、新作ゲームを制作するなど精力的に活動をしている(関連記事)。
『F-ZERO』は1990年にスーパーファミコン向けに発売されたレースゲーム。当時は珍しかった奥行きのある画面や、スピード感のある演出が特徴だ。以降も複数の新作がリリースされ、2003年には同名ゲームのメディアミックスとして「F-ZERO ファルコン伝説」としてアニメ化されるなど人気を博した。ところが、2004年に発売された『F-ZERO CLIMAX』以降は新作が出ておらず、復活を望む声は今も根強い。
今村氏は7月3日にVGCのインタビューに応じて、これまで手がけた作品や今後の展望について答えた。インタビューのなかで今村氏は『F-ZERO』が自身にとって初めて携わった作品であり非常に愛着があると言及しつつ「『F-ZERO』シリーズの新作が出ない理由」について自身の考えを語った。
今村氏は『F-ZERO』や『スターフォックス』シリーズが、ほかの人気シリーズと比較して新作リリースが比較的少ないことについて訊かれ「売り上げ面の懸念が原因ではないか」と回答。特に『F-ZERO』については、同じ任天堂のレースゲームには絶大な人気を誇っている『マリオカート』シリーズがすでにあり、また『F-ZERO』の新作を作るには大きなコストがかかるためだと分析している。
また、『メトロイド』シリーズのように『F-ZERO』が外部開発で新展開される可能性について訊かれた今村氏は、IPを復活させることそのものは簡単ながら、顧客を真に満足させる作品は熟慮の上での開発が必要とコメント。そのため、任天堂が自信を持って開発を依頼できる外注先があれば、そこに開発を任せるのがいいのではないかと提案している。
そして今回、今村氏はTwitterにて、前述のインタビュー内容をIGN Japanが伝えた記事に触れ、『F-ZERO』ではなく「悪魔がパイロットで地獄や天界で繰り広げられる」レースゲームのアイデアについて述べている。同氏のもとには海外から『F-ZERO』についてのメッセージが沢山くるとのことで、ファンの焦がれる気持ちに応えたいとの思慮もあって、意欲を見せたかたちかもしれない。
今村氏といえば、漫画「OMEGA6」を手がけ、独特の世界観を精力的にアウトプットしている。また、同漫画を原作としたゲーム『オメガ6 ザ・ビデオゲーム(仮)』も開発が進行中(関連記事)。そうした作品展開で「OMEGA6」のユニバースを拡大させていく計画とされている。
また、今村氏が得意とする「レトロフューチャー」的デザインは「オメガ6」はもちろん『F-ZERO』シリーズなどにもその影響を見て取れる。もし今村氏が新しいレースゲームを制作するとしたら、そうした世界観を色濃く反映した作品となるかもしれない。
また、任天堂側も『マリオカート8 DX』に『F-ZERO』シリーズの要素を収録したり、今年3月にはNintendo Switch Onlineにてシリーズ2作目の『F-ZERO X』を配信するなど『F-ZERO』シリーズを意識した動きは見てとれる(関連記事)。『F-ZERO』シリーズの根強い人気自体は、任天堂にも認識されていることだろう。