人気大規模マルチFPS『BattleBit Remastered』2週間で売上180万本を記録。開発6年半以上の努力と“苦渋の方針転換”が実を結ぶ


オンラインマルチプレイFPS『BattleBit Remastered』は約2週間で180万本を売り上げていたという。マーケティングコンサルタントのChris Zukowski氏のインタビューに対し、本作開発チームを率いるSgtOkiDoki氏が伝えている。


『BattleBit Remastered』は、ローポリゴングラフィックが採用されたオンラインマルチプレイFPSだ。現在PC(Steam)向けに早期アクセス配信中。本作では1サーバーあたり最大254人のプレイヤーがサポートされ、現代戦をテーマにした大規模対戦を楽しめる。また32対32や64対64といった人数でのゲームモードも用意。プレイヤーは、アサルトやメディック、エンジニア、サポート、リコンといったクラスからキャラクターを選択して参加する。

本作は早期アクセス配信以前から、1年以上にわたってプレイテストが断続的に実施されていた。一部で話題となり当時から非常に多くのプレイヤーを獲得。その勢いは早期アクセス配信が開始されてからも衰えることはなく、最大同時接続プレイヤー数8万7323人を記録。直近でも連日ピーク時7万~8万人のプレイヤー数を維持(SteamDB)。Steamユーザーレビューには約4万件が寄せられ、そのうち91%が好評とする「非常に好評」ステータスを獲得している。


マーケティングコンサルタントのZukowski氏によるWebサイト「How To Market A Game」のインタビュー記事によると、本作は早期アクセス配信開始から約2週間で売上180万本を達成していたという。本作は3人の開発者によって制作されており、小規模開発の新規マルチプレイヤーゲームとして、きわめて大きな記録を打ち立てたといえる。

How To Market A Gameのインタビュー記事では、本作開発チームを率いるSgtOkiDoki氏が6年半以上におよび本作の開発を振り返っている。本作開発チームのうちLarry氏とVilaskis氏は、本作の開発を手がける前に『Ravenfield』『Unturned』といったゲームのMod制作をおこなっていたそうだ。開発が発足したのは2016年のことであり、当初はModプレイヤーたちから募った20~30人での小規模クローズドテストが実施。できるだけ定員最大でテストを実施できるように、テストは週末におこなわれていたという。

その後は、コンテンツクリエイターたちに働きかけてクローズドアルファテストへのアクセス権を提供するなどの施策もとられていたそうだ。クリエイターにより動画での取り上げも定期的におこなわれ、順調に注目を集めていたとのこと。

そうしてプレイヤー数が増え続けるなかで、SgtOkiDoki氏は初期バージョンの本作に問題点を見出したそうだ。それはゲームデザインと、ビジュアルや打ち出し方がミスマッチではないかという懸念。本作は当初ハードコアなシミュレーションシューターとして設計されていた。具体的には、高い場所から落ちると足を骨折する、回復のためにモルヒネが必要といったシステムが存在。一方でグラフィックは現在と同じくローポリゴン。スクリーンショットや動画でビジュアルから知ったユーザーからすれば、グラフィックと裏腹にやたらとリアルなミリタリー描写に驚いたことだろう。


SgtOkiDoki氏はビジュアルとゲームプレイが一致しない点は問題であったとして、当時の開発方針を“酷いやり方(terrible move)”だったと振り返っている。そこで開発チームは苦渋の決断として、本作をハードコア路線から現在のよりカジュアルなスタイルに方針転換したそうだ。

その後もフィードバックを反映し開発は進み、2020年に入るとカジュアル路線が功を奏してかプレイヤーベースは拡大。100人以上のプレイヤーがテストプレイに参加するようになり、Patreonで募られていた開発費も増加して順調に開発が進められたそうだ。そして、じっくりと形成されたプレイヤーコミュニティの口コミもあってか、『バトルフィールド』の大手ストリーマーたちも本作を遊ぶようになったという。2022年1月にはSteamの本作フォロワー数が急増した様子が見られ、早期アクセス配信に向けて順調に人気を獲得していったことがわかる(SteamDB)。

なおインタビューにおいて、SgtOkiDoki氏は初めてゲームを作ろうする開発者に対して助言を送っている。同氏いわく「マルチプレイゲームを作ろうと思うならやめるべき、まずはシングルプレイゲームを作りましょう」とのこと。本作は結果的に大きな成功を収めているものの、100人のプレイヤーを確保するのに約4年間テストプレイを重ね続けた。当初実現したかったハードコアなシューターという路線を諦め、多大な苦労を経て早期アクセス配信での成功に至ったわけだ。


先日には、本作の早期アクセス配信後には運営の裏側でDDoS攻撃との熾烈な戦いがあったことが明かされていた(関連記事)。対処は無事実を結び、今後は引き続きバグ修正や遊びやすさ改善アップデートを中心に実施されていくとのこと。またチート対策強化のために、同分野に特化したチームを雇用する予定だそうだ。そのほか本作に向けては、新武器・新ガジェット・新マップそして新ゲームモードといったコンテンツの追加も計画されている。早期アクセスとして絶好調のスタートを切った本作の、今後の展開にも注目していきたい。

『BattleBit Remastered』は、PC(Steam)向けに早期アクセス配信中。ゲーム内は日本語表示に対応している。