ゲーム開発者ら、ロード画面の“進捗バー”を「わざとガクガクさせている」と明かす。進捗バーは、プレイヤーのために嘘をつく

 

ゲームのロード画面においては、ロードの進行を表す“進捗バー”が用意されていることもある。この進捗バーは、わざと不規則な速さで進むように設計されていることが多いという。開発者たちがSNS上で明かしている。

開発者の口からロード進捗バーについての意外な“真実”が明かされる発端となったのは、コメディアンのAlasdair Beckett-King氏のツイートだ。同氏はゲームのロード画面の進捗バーは均等な速度で動くべきであり、ロードにかかる時間を適切に反映する必要があると問題提起。そうした仕組みを用意してからほかの部分の開発を進めるべきである、との願望を伝えている。ゲームにおいてロード進捗バーが止まったり急に進んだりしがちという、いわば「あるあるネタ」を述べているのだろう。


一方でこの投稿には開発者のMike Bithell氏が反応。同氏は『Thomas Was Alone』などを手がけてきたゲームデザイナーだ。同氏いわく、プレイヤーたちは均等に動くスムーズなロード進捗バーを用意しても「信用しない」そうだ。つまりバーの進み具合が滞ったりする方が、懸命にロードがおこなわれているイメージを抱きやすいということだろう。たしかに一定の速度でスムーズに進み続けるロード進捗バーを想像してみると、ロード状況にかかわらず“とりあえず用意されたアニメーション”といった印象を抱くような気もする。

一連の投稿には、ほかの開発者も反応。ゲーム開発者兼コンサルタントRami Ismail氏は、自身の携わったプロジェクトでは、スムーズに動く真っ当なロード進捗バーをコーディングしたことがないと述べている。ロード時間を伸ばしたり、バーを意図的に不均等な速度で動かしたりといった方策がとられたそうだ。そのほかゲームデザイナーのGreg Street氏は、自身の携わった『Age of Empire』シリーズ作品にて適当なスクリプトを選んで「すぐさま20%ロードを終わらせる」ようにプログラムしたと明かしている。


ほかには「バーが100%に到達しても、ゲームが開始しないケースが多い気がする」と語るユーザーがBithell氏に質問。「100%に到達した瞬間にゲームが始まればもっと信用できるのではないか」と疑問を受けて、同氏はバーが止まる理由のひとつを仮説として語っている。ゲームの動作においてはデータのロード自体が完了してもワールドを描き出す最後の工程が必要となり、その際にはフリーズが起こる可能性があるそうだ。ロード進捗バーをスムーズにしても、結局のところそのスムーズな表示が“本当に”止まる可能性はなくならないわけだろう。

Bithell氏いわく、上述のような仕上げ処理は、ローディングスクリーン表示と平行して実行されることも多いという。そしてエンジンによっては、“100%の仕上げ”中に数秒間にわたって画面が停止することもあるそうだ。Bithell氏はロード進捗バーが止まる瞬間を用意することで、フリーズが起こったタイミングを隠す狙いがあることも示唆している。ロード進捗バーが止まるタイミングが何回かあればどこで“本物のフリーズ”が起きているか分かりにくいといった意図かもしれない。

ちなみにゲーム業界でプロデューサーやディレクターなどを務めてきたSeb Downie-Blackwell氏も、ロード進捗バーは“嘘っぱち”であると明言。PS3以来、ロード進捗バーには技術的な意味合いがまったくないという。しかしながら、テストプレイで集中して検証された結果、プレイヤーたちはロード進捗バーなしではロード時間を我慢することができないことが判明したのだそうだ。現代のゲームにおいてロード進捗バーは、「ロードが進んでいること」だけをプレイヤーに示す役割であり、進み具合に“演出”が入るケースも多いのだろう。しかし、「しっかりと読み込みが進んでいる」と示してプレイヤーを安心させる要素の実装は、ユーザー体験設計の上でとても重要な思いやりといえる。


ちなみに数あるゲームの中には、ロード進捗バーではないスタイルのロード時のアニメーションが採用されているタイトルもある。ロード進捗バーについての開発者らの発言を踏まえると、そうした作品においてもアニメーションを止めることで「がんばってロードしている感」を演出している可能性はありそうだ。

ゲームを遊ぶうえでプレイヤーがほぼ必ず遭遇するロード画面。そんなロード画面におけるぎこちない進捗バーの動きは、プレイヤーのストレスを緩和するためにほどこされた興味深いひと工夫の場合もあるようだ。なお昨今ではSSD、さらにはNVMe規格のSSDの登場といったストレージ技術の進歩などで、ゲームのロード時間は飛躍的に短縮されている。作品によっては、そもそもロード画面での進捗バーの動きが気にならないプレイヤーも増えていることだろう。知られざる工夫も、お役御免となりつつあるのかもしれない。