都市建設シム『Cities: Skylines II』では若者が“節約志向”で移動をおこなう。年齢層で好みが変わるAIたちが織りなすリアルな営み
Paradox Interactiveは6月27日、『Cities: Skylines II』の新情報を発表した。今作で都市を移動する市民たちが、どのように移動経路を選択するのかが解説されている。今作では、目的地までの距離だけでなく、移動時間や移動費用といった複数の要素が考慮されるという。
『Cities: Skylines II』は、Colossal Orderが手がける都市運営シミュレーションゲームだ。『Cities: Skylines』の後継作となる。プレイヤーは都市の市長として、区画整備からインフラ建設、そして公共サービスを用意。住民を増やし、彼らの満足度を高めていくのだ。新作は、大人気作品となった前作から基本的な要素を引き継ぎつつ、大きく進化。「史上もっともリアルな街づくりシム」であると銘打たれている。具体的には、緻密なシミュレーションと経済メカニズムが備えられているそうだ。また町の天候や季節が移り替わるといい、自然の力に上手く対処しながらの都市運営が求められるという。
日本時間10月25日の発売に向けて、公式サイトでは今作の各種要素を紹介する記事が順次掲載予定。先日には第1弾として、道路作成ツールに関する情報が明かされていた(関連記事)。このたび第2弾として「交通に関するAI(Traffic AI)」についての解説記事が公開。今作での市民やサービス車両(バスなど)・運搬車両がどのように移動経路を選択するのかが説明されている。
今回の記事ではまず、前作『Cities: Skylines』におけるAIがどのように移動経路を決めていたのかが解説されている。前作では、経路選択において“直線距離”だけが考慮されていたとのこと。そのため、たとえば火災が発生した場合、道路の繋がりで見るとより近い経路上に消防署があっても、直線距離でもっとも近い消防署から消防車が出動することになっていた。さらに前作のAIは、渋滞が発生したとしても辛抱強く直線距離から考慮されたルートに固執していたという。
今作ではAIが移動経路を選択する際の新たな指標「経路探索コスト」が登場する。このコストは都市の道路網のほか、移動時間、快適さ、移動費用、行動の傾向といった複数の要素に基づいて計算されるそうだ。さらにAIは道中の出来事に基づいてルートを調整するようになる。交通事故や停車中のサービス車両を避けたり、緊急車両のために道を空けたりといった反応も見られるという。
移動時間は経路探索においてAIがもっとも重視する要素になるそうだ。たとえば移動時間が短縮されるのであれば、ほとんどの場合移動距離が長くなっても高速道路を選択する傾向にあるという。快適さは、目的地までできるだけスムーズな経路を選択するために考慮される。これにより、不要な曲がり角を避けたり、適切な駐車場や公共交通機関の停留所を探したりといった挙動を見せるそうだ。
移動費用においては、燃費や駐車料金などが考慮される。ほかの移動手段や徒歩と比較して、どの選択が迅速で快適、かつ手ごろかが判断されるという。また運搬車両の場合は配送先が遠ければ遠くなるほど輸送コストが高くなる。そのためゲーム内の企業は遠くに商品を運ぶよりも、近場で販売する方が効率よく商品を販売できる、といった判断をおこなうそうだ。
行動の傾向は、AIがUターンのようなリスクのある運転をおこなうかどうかを決定づける。市民や配送車両はリスクのある運転を避ける傾向にある一方で、緊急車両は必要に応じて危険な決断をおこなう傾向があるとのこと。消防車や救急車、パトカーといった車両は、緊急時に迅速な対応を優先するようになっているのだろう。
そして今作では、市民の経路探索において年齢層も考慮されるという。10代の若者にとってもっとも重視されるのは「移動費用」。移動手段や駐車手段といった要素をできるだけ安くする傾向にある。一方で大人は「移動時間」を重視し、高齢者は高い「快適性」を好む。そのため、たとえば駐車場選びにおいては、10代の若者は目的地まで長い距離を歩いたりほかの交通手段を使ったりすることになっても、できるだけ安い駐車場を選ぶそうだ。対して高齢者は目的地の近くに駐車場があれば、値段にかかわらずそこを選ぶ可能性が高いという。
ほか、今作のAIは、スムーズに運転できるよう車線変更したりラウンドアバウトで適切に割り込んだりと、最適な経路で移動するためにさまざまな挙動を見せるそうだ。以上のようにAIの判断に影響する要素が増えたため、今作でAIが経路探索に要する計算は前作よりも詳細かつ大量になっているとのこと。しかし今作ではマルチコアCPUの処理能力をフル活用するように最適化されているそうで、計算効率や全体的なパフォーマンスは向上しているとされている。また今作ではAIの移動におけるハードウェア制限が設けられていないといい、ハードウェアの性能が許す限り、より大規模な人口の移動をカバーできるという。
AIが移動する際に考慮するさまざまな要素が明かされた今回の解説記事。直線距離だけに基づいて経路を選んでいたという前作のAIと比べ、今作のAIは町を走る車両によりリアルで合理的な動きを実現してくれそうだ。またAIの動きの変化は、前回明かされた新しい道路作成機能とあわせて、都市づくりに新たな戦略をもたらしてくれるだろう。
なお今回の公式記事では、道路網の調整時の判断材料となる「交通」と「道路」の2種類の情報ビューが用意されることも伝えられている。新たな要素で深まったシステムをカバーする、便利機能も用意されるわけだろう。そのほか詳細が気になる人は、こちらの公式サイト(英文)を確認されたい。
『Cities: Skylines II』はPC(Steam)およびPS5/Xbox Series X|S向けに発売予定だ。