フィンランドの大手メディアHelsingin Sanomatは6月2日、『Counter-Strike: Global Offensive』(以下、CS:GO)向けの同紙企画マップ「de_voyna」がロシア国内からダウンロード不可能になったと伝えている。同マップには、ロシアによるウクライナ侵攻における民間人被害など、ロシア国内では検閲対象と見られる情報を伝える“隠し部屋”が存在している。
『CS:GO』は、ValveがHidden Path Entertainmentと共同開発し、2012年にリリースしたタクティカルシューターだ。そのPC版はSteamにて絶大な人気を誇っており、2018年以降は基本プレイ無料にて提供されている。ユーザーによるMod制作も盛んにおこなわれており、Steamワークショップでは有志制作のマップが多数公開されている。
Helsingin Sanomatは5月1日、同紙の企画により作成された本作向けマップ「de_voyna」をSteamワークショップにて公開した。本マップは「一見するとスラブ風の普通の街並みだが地下には何かが隠されている」と説明されている。隠された地下室には、観戦時やコンソールコマンドを用いた際の自由移動状態(Noclip)でのみ到達可能。写真や文章により、ロシアによるウクライナ侵攻時の民間人被害などが伝えられている。
今回、Helsingin Sanomatは本マップがロシア国内からダウンロード不可能になったとを伝えている。同紙は、ロシア政府がSteamワークショップ内のカスタムマップひとつだけをアクセス遮断することは不可能ではないかと推察。Steam運営元のValveが、IPアドレスに基づきロシア国内からの「de_voyna」のSteamワークショップページ閲覧をブロックしているとの主張をしている。また同紙はValveに本件について問い合わせをしたそうだが、フィンランド時間での5月31日朝の時点で回答は得られていないという。
ロシア国内ではウクライナ侵攻以降、同戦争や政権批判などに関するインターネット上の情報が組織的に遮断されている。そのため「de_voyna」における各情報も、ロシア国内では検閲対象と見られる。Helsingin Sanomatは本マップの制作を企画した背景として、ロシア国内の人々に戦争の実情を伝えたいという狙いがあったことを説明していた。
ロシア政府の検閲をかいくぐるべく作成された「de_voyna」ながら、同国での新たなダウンロードは不可能となってしまったようだ。Helsingin Sanomatの主張どおりValveが講じた措置であるならば、ロシア政府から同社への働きかけがあった可能性もありそうだ。
なおロシアでは現地時間5月30日、Lesta Studio(関連記事)の主催で政府が支持する全国規模のeスポーツ大会が開かれることが発表された(Kommersant)。発表時には『Counter-Strike』では“ゲーム内世界で政治的な出来事が一方的に描写されている”とされ、同作が同大会での種目とならないことが説明された。ロシアでも『CS:GO』は大きな人気を博していると見られるものの、ロシア政府が関与するeスポーツ大会では政治的な理由から種目として採用されない判断がおこなわれたようだ。