「ゲームの続編にて、続投した前作の主人公をいかにして“弱める”か」が、Twitter上で話題を呼んでいる。とあるライターによるひとことが、興味深い開発元の工夫にスポットライトをあてた。『ゼルダの伝説』シリーズといった作品にも、話題が及んでいる。
ゲーム作品の続編において、前作から主人公が続投するのはよく見られる展開だ。しかし、たとえばRPG作品などでは「前作で最強状態になった主人公を、本作で弱い状態からやり直しにさせる」といった必要性もシステム上生まれてくる。しかし、ただ主人公を弱くしただけでは「前作の経験はどうした」「装備はどこにやった」などツッコミどころが生じてしまうだろう。
インフルエンサーでライターのロッズ氏は5月12日、自身のTwitterアカウントでそうした「続編での続投主人公の弱め方」について言及。さまざまなパターンや作品による個性があるとして話題にあげた。同氏がいくつかのケースを提示しているほか、多くのユーザーからも“弱め方”の例があげられている。唐突な災難によって、前作で積み重ねた能力や財産が奪われるパターンが多いようだ。ロッズ氏があげたのが、『エバーブルー2』や『ロックマンDASH2 エピソード2 大いなる遺産(以下、ロックマンDASH2)』の例だ。
ひょんな災難でいろいろ奪われる主人公たち
『エバーブルー2』はダイビングゲーム『エバーブルー』の続編である。いずれの作品でもレオという愛称の男性が主人公で、装備を拡充してダイビングを有利にしていくシステムだ。レオは、『エバーブルー』クリア時点、つまり『エバーブルー2』の以前の段階では、相当に充実した装備が整っていることになる。しかし、『エバーブルー2』冒頭では、レオが前作で獲得した装備について、仲間を救出するため損傷。前作の装備が失われてしまうとの理由によって「なぜ主人公が弱まるのか」が説明されている。
一方の『ロックマンDASH2』については、前作『ロックマンDASH』で手に入れた装備喪失の理由として、ヒロインであるロールが説明。主人公のロックたちが搭乗するフラッター号の改造費用を捻出するためだったとして「ごめんねぇ、ロックの装備全部売っちゃった!」と弁明してくれる。なお、同作は初代PlayStation作品としてキャラボイスもふんだんに盛り込まれており、「ドラえもん」のドラミ役などでおなじみの、よこざわけい子氏がロール役を担当。美しい声で謝罪してくれるのだ。勝手に財産を根こそぎ売却されたロックも前作プレイヤーも諦めがつくというものだろう。ほかには『キングダムハーツ』シリーズでの主人公ソラの「能力の奪われっぷり」などが、恒例行事めいた扱いもされているようだ。
「強いまんま新作」のパターンも存在
一方で、前作での主人公の積み重ねた経験や装備が、次作にも反映されているパターンもある。たとえば、『ソフィーのアトリエ2 ~不思議な夢の錬金術士~』では、主人公のソフィーはレベル20からゲーム開始する。前作ではレベル20が一旦の上限となり、それ以降はアビリティポイントを入手して割り振り自己強化する仕組み。すなわち上限までレベルを上げた前作での経験を、しっかり受け継いだ表現としての気配りだろう。
また、『アークザラッドII』といった作品では、主人公らのキャラステータス含む広範なデータを、前作セーブデータから引き継ぎ可能なシステムもあった。時系列的な違和感を緩和するだけでなく、システムとして前作から地続きの能力で戦える仕組みが盛り込まれた例もあるわけだ。
「別人だけど同じ主人公」という発明
そしてロッズ氏は、続くツイートで「主人公の名前や印象は類似していても、人物としては別人」という設定に言及している。それが『ブレス オブ ファイア』シリーズにおける主人公リュウや、『ゼルダの伝説』のリンクだ。能力がリセットされたりする違和感を軽減しつつ、キャラとしての「おなじみの魅力」をキープする施策だろう。
なお、リンクについては「同じリンク」が続投することもある。たとえば、新作『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』のリンクは、前作『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のリンクと同一人物。そのため、新作では序盤イベントにて、演出と絡めた方法によってリンクの能力が大きく減退させられる一幕がある。また、システムとしても、能力が向上するたびに「能力低下の原因」が緩和されているような描写も。主人公が弱まる理由を提示しつつ、ゲームプレイに絡めた演出にもしっかり気を配られている例といえるだろう。
ゲームの続編を作り、主人公を続投させるにあたっては、各メーカーが違和感の緩和に取り組んでいるようだ。レベルや装備といった“積み重なる”要素が少なめなタイプのゲームなどでは、そもそも主人公がそのまま続投しても違和感が生じないケースもあるだろう。しかし、前作で積み重ねた財産がある場合、それを失う違和感をいかにして緩和させるか、もしくはキープさせたままいかにゲームバランスを取るかは、メーカーの腕の見せどころといえそうだ。そうした工夫に着目するのも、またゲームの楽しみ方といえるだろう。
なお、ロッズ氏のツイートにはほかにも、多数のユーザーからさまざまな作品での「前作主人公の続投パターン」が寄せられている。興味のある方はじっくりとご覧になるとよいだろう。
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