株式会社ケイブは4月12日、2023年5月期第3四半期の連結決算を公開した。同社は昨年9月、『モンスターストライク』開発で知られる株式会社でらゲーを買収。今回発表された連結決算には、その影響が色濃く表れている。gamebizが伝えている。
株式会社ケイブ(以下、ケイブ)は、1994年に設立された国内のゲーム開発会社だ。同社は、これまでに『怒首領蜂』シリーズや『虫姫さま』『デススマイルズ』など、多数のシューティングゲーム作品をリリース。STG開発元としては代表的な会社だ。また同社は現在「東方Project」公認二次創作タイトルを開発中である。そしてケイブの連結子会社である株式会社でらゲー(以下、でらゲー)は、ヒット作『モンスターストライク』の開発を手がけ、スマートフォンゲームの開発運営において実績のある会社である。
なおでらゲーはゲームクリエイターである岡本吉起氏が在籍する会社だ。岡本氏は、かつてカプコンに在籍、『ストリートファイター』シリーズなど人気作に携わった人物。独立しゲームリパブリックを立ち上げるも倒産。その後でらゲーには2012年に参加しゲームプロデューサーとして『モンスターストライク』の開発を立ち上げ同作のヒットに貢献した。その後岡本氏は2019年に、ケイブの取締役役員に就任している。ケイブがでらゲーの全株式を取得し連結子会社化したのは2022年9月のことであった(関連記事)。でらゲーの株式をケイブに譲渡した株主3名のうち2名が岡本氏の親族であり、ケイブ入りは同氏の意向が強く影響しているだろう。
今回公開されたケイブの2023年5月期第3四半期の連結決算によれば、同社の営業損益は6億800万円の赤字。経常損益は5億9000万円の赤字とされている。一方で売上高は35億8600万円となり前年同期比204.0%増。最終利益としては、前年同期が7億3000万円であったのに対し、今期は20億200万円の黒字となっている。
ケイブの最終利益の大幅な黒字転換には、でらゲーの子会社化が大きく影響している。第2四半期連結会計期間においては、でらゲーの子会社化に伴って負ののれん発生益29億3900万円が計上され、全連結会計年度期末に比べて利益剰余金が大きく増加したとのこと。負ののれん発生益は償却されず特別利益として計上されるため、最終利益を大幅に引き上げたわけだ。なお今回の決算発表における負ののれん発生益は、所得原価の配分が完了していないため暫定的に算定された金額とのこと。
セグメントごとの状況としては、でらゲーの連結子会社化にともないゲーム事業にはでらゲーの損益が計上された。結果として売上高は32億6700万円となり、前年同期比487.4%の大幅な増加をみせている。一方動画配信関連事業は売上高3億1800万円で、前年同期比48.9%減となった。
そのほか株式資本の金額についても、大きな変動があったことが報告されている。2022年9月3日に連結子会社である株式会社でらゲーの取締役および従業員ならびに外部協力者に対し、割当てをおこなった第32回ストック・オプションとしての新株予約権を行使。第3四半期連結累計期間において、資本金が5億1400万円、資本準備金が5億1400万円増加したという。また第3四半期連結会計期間末において資本金が19億400万円、資本剰余金が8億8100万円になったとのこと。
ケイブは2017年5月期から2021年5月期まで5期連続の営業赤字を計上するなど、近年業績が悪化していた。複数タイトルをリリースするも、ユーザーが定着せず早期にサービスを終了。STGアプリ『ゴシックは魔法乙女』1タイトルの動向によって会社業績が大きく左右される状況が続いていたとされており、業績回復および企業価値の増大を目指し大きな収益源獲得のために昨年9月にでらゲーを子会社化するに至ったという。
でらゲーの連結子会社化にともない、ケイブの業績は回復する見込みとのこと。一方で現時点では信頼性の高い通期の業績予想数値を算出することは困難とされ、2023年5月期の業績予想は当面の進捗状況を踏まえて合理的な業績見通しが可能になった時点で速やかに開示されるとのことである。
なお決算発表とあわせて、先述の「東方Project」公認二次創作タイトルについて、11月22日にリリースされることが発表された。対応プラットフォームはiOS/Androidとなる見込み。ユーザー満足度の高い作品を提供するために開発が継続されているそうだ。
でらゲーの連結子会社化により大きく売上規模を拡大したケイブ。でらゲーの買収には人材確保も主眼にあったとされており、買収後の今回の決算発表に際して「東方Project」公認二次創作タイトルのリリースまでの開発スケジュールが確定したことも明かされたかたち。両社のゲームタイトルの今後の展開も注目される。