「モンスターエナジー」権利元、過去に『ポケモン』や『モンスターハンター』などの商標登録異議を大量に申し立てていた

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「モンスターエナジー」権利元は、日本国内において「モンスター(Monster)」の名を含むさまざまな商標に対し、過去に登録異議申立てをおこなっていた。特許情報プラットフォームJ-PlatPatなどで確認できる。昨日弊誌にて、海外ホラーゲーム開発者が「モンスターエナジー」権利元からタイトル名変更の要求を受けていると報じた(関連記事)。同記事を公開したのち、読者からの情報提供や、弊誌の調査から、「モンスターエナジー」権利元がさまざまなゲームに商標異議の申し立てをしていたことが改めて判明している。

モンスターエナジー(Monster Energy)はエナジードリンクだ。米国ではMonster Beverageが製造・販売している(日本ではアサヒ飲料株式会社が製造・販売を担当)。ゲーム関連イベントや団体、ストリーマーのスポンサーを務めるなど、ゲーム業界とも縁深い会社と飲み物だろう。


そんなモンスターエナジーの権利元は日本国内において、過去に「モンスター」の名を冠するさまざまな商標に対して、特許庁に商標登録の取消しなどを求めていたようだ。J-PlatPatでは、申立人がモンスターエナジーカンパニーの異議申立てを現時点で134件確認できる。タイトルにモンスターを含むゲームも複数該当。『ポケットモンスター』や『モンスターハンター』といった人気タイトルも含まれている。

『ポケットモンスター』シリーズでは、『ポケットモンスター X・Y』や『ポケットモンスター サン・ムーン』などが対象。『モンスターハンター』シリーズでは、『モンスターハンタークロス』のほか、『モンスターハンター』そのものの商標にも登録異議が申し立てられている。たとえば『ポケットモンスター X・Y』では、以下のような主張が展開されている(J-PlatPatより一部引用):

(2)本件商標の構成中,顕著に表示された「ポケットモンスター」の文字部分は,独立の自他商品識別標識として機能し得るところ,該文字は,その称呼「ポケットモンスター」が冗長であるから,簡易迅速を旨とする商取引の場においては,これを常に一体不可分のものとして看取されるとはいい難く,「ポケット」又は「モンスター」の文字部分が独立して自他商品の識別機能を有するものである。
してみると,本件商標は,「モンスター」の文字部分から「モンスター」の称呼と「怪獣,怪物,モンスター」の観念が生ずる。

異議申立てにおいては上記のとおり、『ポケットモンスター』との名称から、「怪獣,怪物,モンスター」の観念が生ずるとの主張がなされている。そして「モンスター」の文字を有する点において、MONSTER(モンスターエナジー)のファミリー商標と一致すると説明。『ポケットモンスター X・Y』の商標に接した需要者は、MONSTERファミリー商標の一つであると誤信し、あるいは、該商品が申立人と何らかの関係のある者の業務に係る商品であると誤信し、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるとの主張がなされている。


またモンスターエナジーカンパニーは、スマホ向けアプリ『モンスターストライク』の商標にも異議を申し立てている。さらに略称である『モンスト』の商標にも異議申立て。理由としては、(『モンスターストライク』の)省略形として直観されるものであり、需要者の注意、感心は正式名の冒頭部分「モンスター」「MONSTER」に惹かれることが容易に推認できるとの説明がなされている。また冒頭3文字および冒頭3音である「モンス」までを「モンスター」と共通にすることから、「モンスター」と外観および称呼において類似する、と主張。そうした判断から「商品の出所について混同を生ずるおそれ」などがあると主張されている。

さらにモンスターエナジーカンパニーが登録異議を申し立てたのはモンスターの名称だけではない。爪痕状の「M」のロゴマークに類似しているとして、ロゴマークの商標についても登録異議申立てがおこなわれていた。全米バスケットボール協会(NBA)のトロント・ラプターズのロゴマークをはじめ、複数の商標が該当。爪痕状のデザインや、Mをモチーフにしたロゴが対象となっている。

トロント・ラプターズのロゴマークに対する商標登録異議申立てでも、需要者がモンスターエナジーカンパニーと経済的または組織的関係を有する者の取り扱いに係る商品であると誤信することにより、商品の出所について混同を生じるおそれが高いなどの主張がなされている。なおトロント・ラプターズのロゴマークは米国でも、モンスターエナジーカンパニーにより商標登録異議申立てがおこなわれている。

左:モンスターエナジー、右:トロント・ラプターズ


こうしたモンスターエナジー側の登録異議申立てに対し、特許庁は「商品の出所について混同を生じさせる恐れはない」などの判断を下し、いずれも商標の登録を維持すると結論付けている。本稿執筆時点でJ-PlatPatにて確認できる「モンスターエナジーカンパニー」および同社の旧称となる「ハンセンビヴァレッジカンパニー」による大量の異議申立ては認められず、商標登録が維持されるに至っている。

モンスターエナジーカンパニーは、海外においても「モンスター」を含む商標登録に対し、異議申立てなどをおこなってきた。過去にはユービーアイソフトの『ゴッズ アンド モンスターズ(Gods & Monsters)』の商標登録に異議を申し立てていたことも(関連記事)。同作のタイトル名は結果的に変更となった。さらに先日にはインディーホラーゲーム『Dark Deception: Monsters & Mortals』開発元の代表者が、タイトルの「Monsters」を巡ってモンスターエナジーカンパニーと争っていることを明かしていた。行政機関に対する商標登録への異議申立てだけでなく、商標権を巡る当事者間の争いとなるケースもみられるわけだ。

「Monster」あるいは「モンスター」を名前に含む商標は日本にも数多く存在する。モンスターエナジーカンパニーは過去からそうした商標への多数の異議申立てをおこなってきたものの、本稿執筆時点ではいずれも特許庁は異議を認めていない。なおJ-PlatPatに公開されているなかで最新の異議申立ては、特許庁により2022年11月17日に審決されたもの。国内においても、直近でも「モンスター」や類似名称などを認めない姿勢を崩していないようだ。