サウジアラビア政府、自国ゲーム産業に約5兆円投資。ゲーム開発、パブリッシング、eスポーツ事業に本格参戦へ

 

サウジアラビア政府は、自国ゲーム産業に約5兆円の投資をするという。中東の新たなゲーミングハブとして、ゲーム開発やeスポーツ事業に注力する計画があるとのこと。それを受け、政府系ファンドの子会社のSavvy Games Groupが意欲を見せている。Bloombergが伝えている。


Savvy Games Groupは、サウジアラビアの政府系ファンドの子会社として2021年に創設され、拠点を首都リヤドに置くゲーム会社。CEOはBrian Ward氏。Electronic Artsやマイクロソフトでマーケティングや人事系のディレクターを務め、Activisionの幹部になったのち、現在はSavvy Games GroupとLottoInteractiveの二社のCEOの座についている。また、Savvy Games Groupではサウジアラビアの王族、ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が取締役会の会長を務めている。2022年には皇太子が「Savvy Games Groupは、2030年までにサウジアラビアをゲームとeスポーツの究極の国際的ハブにする、その挑戦的な計画の一部だ」と宣言するなど、新興企業ながらサウジアラビア政府の後押しを受けている一大企業だ。


Savvy Games Groupは、これまではeスポーツ事業に注力していた会社であり、eスポーツ関連企業の買収や運営が主な事業であった。そんななか、日本時間の4月3日、サウジアラビア政府がゲーム産業に約5兆円(380億ドル)の投資をするとBloombergが報じた。同記事にてBrian氏は「今年はゲームの開発とパブリッシングに注力したい」と意欲的だ。すでにローカライズとパブリッシング事業は始めており、ゲーム開発もモバイルゲーム開発したのちにコンソールのゲームを出す予定があるとのこと。「他国の企業もサウジアラビアのリヤドを通して、この地域のパブリッシングや流通を手助けをするのも我々の使命だ」とコメント。 中東圏のゲーム産業の中心になる狙いのようだ。


サウジアラビアといえば、依然として石油の主要産出国というイメージが強い。なぜ今のタイミングでeスポーツなのか。ロイター通信の報道によると、2017年にムハンマド・ビン・サルマーン氏が副皇太子から皇太子に任命された際に、2030年までに脱石油依存をする経済改革を掲げている。そのような経済多様化の一角がゲーム事業だ。同2017年にサウジアラビアのeスポーツシーンを支援するSaudi Esports Federationが設立されたり、2022年には皇太子の有する団体がSNKのほとんどの株式を購入、政府系ファンドが任天堂の株式を一部購入するなど、サウジアラビア国内でのゲーム事業への注目度の高さがうかがえる(関連記事1関連記事2)。Brian氏も(投資先の企業と)パブリッシングやeスポーツ、新しいIPの開発を協働する意向を見せている。サウジアラビアやSavvy Games Groupがゲーム業界でどういう動向を見せるのか、今後も注目したい。