PS5を「全社員に支給した」会社に話を訊いた。支給理由は、スタッフに“見てほしいもの”があったから

「インターン生含む全社員にPS5を支給した」と宣言した社長が現れた。なぜそのようなことをしたのだろうか。話を訊いた。

先日投稿された、とあるツイートが話題になっている。そのツイートとは、「インターン生含む全社員にPS5を支給した」というもの。ゲーム・映像制作会社Glitz Visuals代表の江口拓夢氏のPS5支給宣言はTwitterユーザーに驚きをもって受け止められているようだ。なぜそのようなことをしたのだろうか。江口氏に話を訊いた。


Glitz Visualsは、ゲーム・映像などのデジタルコンテンツ制作会社だ。ゲーム開発(特にCGの背景やライティング、カットシーン)を中心にTVアニメやドラマなどの映像、バーチャルプロダクションなどCGに関わることなら何でもする会社だという。代表の江口氏は24歳。高校卒業後CGの専門学校に入学。学生ながらフリーランスとして開業しさまざまな仕事を請け負い、そのままフリーランスとして活動。23歳の時に事業を法人化し今に至るという異色の経歴の持ち主だ。今では大河ドラマやAAAタイトルなどさまざまな制作に協力しているという。具体的な実績としては、大河ドラマ「どうする家康」のバーチャルプロダクション制作協力があげられる。

そんな江口氏は3月24日、インターン生含む全社員にPS5を支給したと宣言した。PS5といえば、通常版ならば6万円はするゲーム機である。機材としてもそれなりなお値段であるが、それを全社員に支給したというのだから驚きである。なぜ支給したのか、話を訊いた。


PS5を支給した動機としては、「スタッフに自分でエンドクレジットを探してほしかった」のだという。Glitz Visualsの案件の70%はPS5で発売されるようなゲーム案件とのこと。しかしながら、そうして関わった案件のゲームをプレイできない環境のスタッフが多かったそうだ。江口氏にとっては、ゲームや映画のエンドクレジットに名前が載るのは、アーティストとして“プライスレスの体験”だと考えているという。PS5を所持し、自分でエンドクレジットにて自身の名前を見つけることを大切にしてほしいため、支給を決めたそうだ。

ただ理由としてはそれだけではないと江口氏は述べる。創業後の一年を振り返り、Glitz Visualsという小さな会社に入社してくれた人に、言葉だけでなくモノで感謝を伝えたいと思いPS5を支給した側面もあるようだ。


ちなみに支給の形態について訊いてみたところ、名目上は貸出に近いという。3年以内に退職する人には返してほしいと伝えつつ、スタッフには長く勤めることで“返す必要がない”ようになることを願っているそうだ。PS5をどのように利用するかについては、特に制限も設けていないとのこと。なお、PS5をすでに持っている社員にはAmazonギフト券を支給したという。また現在1名在籍しているというインターン生にもPS5を支給したとのこと。このインターン生は自分で仕事を持ってくるなど優秀な人材であり、働きで貢献してくれるという期待を込めて支給したそうだ。

ちなみに、Glitz Visualsは江口氏が紹介したように小規模な会社。社員は6名で、業務委託者などを含めると15人前後が在籍しているという。全社員といっても100名在籍するスタッフに支給するような話ではない。とはいえ、PS5は前述したように決して安くない機材で、支出としては50万円ほどになり、「出費としては痛い」とのこと。しかしながら、社員にとってGlitz Visualsに勤めることがステータスになればいいと考えており、スタッフが喜んでくれればそれ以上のことはないと考えているそうだ。


なおGlitz Visualsはほかにも福利厚生を用意しており、スタッフなら映画を月一回無料で見られるというサービスのほか、フルリモートスタッフには宅食を半額負担。さらに趣味で自主制作をしたスタッフに最大5万円の自主制作報酬を与えるという。設立後まだ日は浅いながらも、かなり多彩な福利厚生が用意されている。PS5支給は、そうした江口氏のサービス精神の延長線にあるのだろう。単なるサービスではなく、自分でクレジットを探してほしいという動機づけも用意されている。社長としてのクリエイティブ面での想いも込められているわけだ。

今やゲームを含んだエンタメ業界は市場が大きくなり、クリエイターはさまざまな業界・分野で求められている。スタッフを満足させるにあたっては、経営者もさまざまな努力をしているのだろう。なお、Glitz Visualsは現在CGディレクターとプロジェクトマネージャーを募集中とのことである。






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Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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