『FF14』の外部ツール騒動で、違反者が自ら使用キャラを削除。「デジタル切腹」として国内外に波紋

スクウェア・エニックスが開発・運営するMMORPG『ファイナルファンタジーXIV』にて起きた外部ツール騒動。一部の違反ユーザーが自らのキャラ削除を宣言したことを受け、「デジタル切腹(Digital Seppuku)」なる表現が国内外に広まっている。

スクウェア・エニックスが開発・運営するMMORPG『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FF14』)では1月31日、新しく実装された高難易度コンテンツの最速クリアをめぐるレースにおいて、不正ツール利用を発端とする騒動があった。最速クリアの報告をしたチームが、規約違反となる外部ツールを利用していたことが発覚し、コミュニティは大いに荒れた(関連記事)。この騒動は、やがて運営からの厳しい声明文が発表される事態にまで発展した。

発端となった不正ツール利用ユーザーは、Twitter上に謝罪文を投稿。『FF14』アカウントの利用停止にとどまらず、キャラクターを削除すると発言したユーザーもいた。こうした責任の取り方を、海外コミュニティでは「Digital Seppuku」と表現。言い得て妙なワードが日本ユーザーの間でも話題となり、Twitterには「デジタル切腹」がトレンド入りすることとなった。

まず、『FF14』にまつわる経緯について説明しておきたい。運営は1月31日、「絶オメガ検証戦における不正行為について」というトピックスを公開。プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏(以下、吉田氏)は、コミュニティにおいて不正に関する情報が確認されていることを報告。調査のうえで、外部ツールの使用が確定となったユーザーに対してはペナルティ付与を実施することを説明した。また、複数回にわたる過去の投稿を提示しつつ、今回も「外部ツールの使用は一切禁止」である旨を強調した。

ほかにも、正規の手段を用いずに、クリア時のカットシーンを公開したアカウントに対しても、ペナルティ付与を実施。内部からの流出が疑わしい一部不正動画についても、徹底的な調査をおこない対象者の特定を進めていると発表した。最後に吉田氏は、「外部ツールを多用して攻略速度を競うことに、何の意味があるのか、ゲーマーとしても理解に苦しみます」と発言。また、「今回、外部ツール不正使用が調査によって明らかになった場合、少なくとも僕は、該当チームをワールドファーストチームとは認めません」と、外部ツール利用者に対して、非常に厳しい言葉で締めくくった。

公式発表にて、外部ツールの使用が明らかとなった場合、運営のペナルティ付与がおこなわれることが約束されたわけだ。その後、外部ツールを使用して「絶オメガ検証戦」の攻略をおこなっていたチーム「UNNAMED_」のメンバー、Haruka氏はTwitter上で運営から処罰を受けたことを報告。そこにはゲームマスターとやり取りしたスクリーンショットが添えられており、クリア時に取得した称号が削除されること、そしてクリア報酬として入手した武器の放棄を指示された内容が映っている。運営から確かにペナルティが実施されたことが確認できる。なおHaruka氏の場合は、自身が不正行為をおこなったわけではなく、不正行為の恩恵を受けていた形となる。よって、アカウントペナルティは実施されないという判断がゲームマスターから通達されている。

https://twitter.com/Haruka_Setsuna_/status/1620502206645669888

その一方で、運営のおこなったHaruka氏へのペナルティは甘いと指摘するユーザーもいる。運営が公開したトピックスでは、調査のうえで外部ツールの使用が確定となった場合のペナルティ付与の具体例として、アカウントの一時停止(サスペンド)やアカウント永久利用停止(BAN)といったものが提示されている。今回はHaruka氏自身が不正行為をおこなったわけではないものの、規約違反を容認していたにもかかわらずアカウントの一時停止すら実施されなかったことに、納得がいかないユーザーも少なくないようだ。

そうした流れの中、規約違反となる行為を認め、謝罪とともにキャラクターの削除を宣言したプレイヤーもいた。その行為について、一部では当初から潔いとする声が上がっていたのだ。オンラインゲームにおいてキャラクターの削除は、そう簡単に決意できるものではない。人によっては1万時間以上のプレイ時間を捧げているユーザーもいる。

また、特に『FF14』においては、キャラクターの削除というのは気軽におこなえる行為ではない。サポートセンターには、削除してしまったキャラクターの復活を希望する場合、専用フォームからの申込みが必要となることが記載されている。また申告したキャラクターを必ず復活させてもらえるというわけではない。復活可能かどうか運営が確認した上での対応となる。そのほか、アカウント削除の場合は専用のフォームが存在せず、基本的に取り返しのつかない行為となっている。

そんな本作のキャラクターを削除する潔さが海外コミュニティでも話題となったのだろうか。『FF14』の海外コミュニティを中心に、責任をとってキャラクターを削除することを「Digital Seppuku」とする表現が散見されるようになった。自らの非を認め、オンラインゲームにおけるプレイヤーの分身であるキャラクターを削除するというのは、まさしく切腹ともいえる行為だ。インパクトがあると同時に、なんとも妙にしっくりくる響きである。同じような感想を抱いたユーザーが多かったのだろう。やがて国内でも「デジタル切腹」というワードが話題となっていった。

その語感が話題となった一方で、「デジタル切腹」の“抜け道”について指摘もある。というのも、オンラインゲームではもちろん実際の切腹と違って、削除したキャラクターやアカウントはつくりなおすことができる。オンラインゲームにかぎらず、SNSなどで人間関係のトラブルが起きた際に、アカウントをつくりなおすこと自体は決して珍しいことではない。コミュニティで問題行為を起こしたとき、火消しのために敢えてデジタル切腹をして、新しいアカウントに転生するというケースもあるだろう。別アカウントに転生するところまでセットとなると、潔さとは真逆の行為にも感じられる。

今回の『FF14』の騒動においても、デジタル切腹したユーザーに対して「潔い」と関心する声もあれば、反省している体裁づくりとする見方や新たなキャラクターやアカウントで復活する可能性を指摘する声もある。デジタル切腹という責任のとり方が、本当に潔い行為と感じられるかどうかは人によって違うだろう。

なお、「Digital Seppuku」という単語は今回初めて生まれたものではない。Twitterをさかのぼると、海外ではある程度昔から使われている単語であることが確認できる。海外ですでにスラングとして定着している言葉が、今回の一幕で改めて国内ユーザーにも知れ渡った形なのかもしれない。

【UPDATE 2022/2/2 15:04】
本件における規約違反ユーザーの対応がキャラクター削除であった点を明記し、見出しおよび本文を修正。




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蒼唯レン(VTuber)
蒼唯レン(VTuber)

自分のことをジーニアスだと思い込んでいる物書き系個人VTuber。FF14とドルフロをこよなく愛する特撮オタク。

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