SIE傘下Bend Studio、『Days Gone』の元開発者に対して「無関係です」宣言。元開発者の悪化する恨み節にNOを突きつける
デベロッパーのBend Studioは12月9日、公式Twitterアカウントにて『Days Gone』にまつわるツイートを投稿。かつて同スタジオに所属していた元開発者について「スタジオとは無関係である」と強調する声明を公開した。突然の声明の背景には、『Days Gone』元開発者のもたらした先日からの騒動があった。
Bend Studioは、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)傘下のゲーム開発スタジオだ。同スタジオはもともとEideticとして設立され、アクションゲーム『サイフォン・フィルター』シリーズなどを開発。SIE傘下のBend Studioとなってからは、『RESISTANCE 〜報復の刻〜』といったタイトルを手がけた。もっとも直近ではオープンワールドゾンビアクション『Days Gone』を開発し、2019年にPlayStation 4向けにリリース。2021年には、PC向けにも移植展開された。
そして『Days Gone』は、リリース当時評価が分かれる作品でもあった。記事執筆現在のPC(Steam)版には、3万1000件を超えるSteamユーザーレビューが寄せられ、うち92%が好評とする「非常に好評」ステータスだ。一方で、MetacriticにおけるPS4版の評価は100点満点中で71点と、大型タイトルとしてはやや低め。価格も大きく移り変わっており、遊んだ手段(フルプライス購入/セール購入/PSPlusフリープレイ)や、プレイした時期・プラットフォームによっても感想が変わってくるゲームであるといえる。
そんな『Days Gone』を巡って昨日、Bend Studioが公式Twitterアカウントに声明を投稿した。声明でBend Studioは同スタジオの“元クリエイティブ・ディレクター”について言及。「『Days Gone』の評価についての彼の主観的意見は、弊スタジオの見解とは無関係である」との旨を伝えている。つまり、“元クリエイティブ・ディレクター”なる人物からスタジオとしてきっぱりと距離を取る声明となる。その相手とは、『Days Gone』にライター/クリエイティブ・ディレクターとして携わった元開発者、John Garvin氏のことだろう。
『Days Gone』を巡る元開発者の不満
まず、『Days Gone』を巡っては、同作に携わった元主要開発者らの発言がしばしば取り沙汰されていた。たとえば、同作ゲームディレクターを務めたJeff Ross氏は「『Days Gone』が売り上げに対して、不当な扱いを受けていた」との旨を吐露。上述のGarvin氏は、同作の人気がフリープレイなどで上昇したとする話題にて「ゲームが好きなら、定価で買ってほしい」と語気を荒らげて語っていた(関連記事1、関連記事2)。本作は両氏にとって、振り返れば不満の残る経緯ある作品だったようだ。なお、両氏とも発言時点でBend Studioからはすでに離れており、あくまでも元開発者の意見となる。
そして先日にもGarvin氏は、『Days Gone』の評価に関して、物議を醸す発言をしていた。同氏は12月7日、「『Days Gone』はなぜもっと高い評価を受けなかったのか」というファンの質問に対して、Twitter上で3つの理由を挙げて回答。1つに「バグやフレームレートなどの問題」、2つめに「ゲームを遊びもせずに評価する者がいた」とした。そして、3つめの理由として「イカつい白人のバイカー主人公が自分の女を探す内容に耐えられない、“目覚めた(woke)”レビュワーのせい」と語った(VGC)。この発言が、瞬く間に波紋を広げることとなったのだ。なお、同氏のTwitterアカウントは本稿執筆時点で非公開設定となっている。
「目覚めたレビュワー」とは
Garvin氏の発言における「目覚めた(woke)」とは、社会的・政治的問題に気を配ることを指すスラングだ。たとえば、性・人種差別問題などに関心を払う人を「woke(目覚めている)」と表現することがある。一方で、この言葉はいわゆる「意識高い系」のように、揶揄のニュアンスを込めても用いられる。つまり、Garvin氏の上述の発言にて、「人種差別問題などを気にするユーザーが、白人が主人公で女性を探すという設定を嫌って低評価を下したのだろう」と断じたわけである。
そうしたGarvin氏の発言には、ユーザーらから反論や批判の声が寄せられることとなった。たとえば「主人公の人種などの設定を原因とする不評があった」という同氏の主張については、『Days Gone』と同時期にリリースされ、白人男性が主人公ながら高評価を得た『レッド・デッド・リデンプション2』といった作品群を挙げた反論が見られる。また、「woke」という言葉による揶揄そのものが、社会問題に気を配る人々を嘲笑するような姿勢として受け取られるだろう。
Garvin氏の主張には、「主人公らが白人であることを理由とした不評レビューも見られる」といった賛同の意見もある。しかし、Garvin氏の言動に反論する声がより多く見られる状況だ。
Bend Studioによる前述の「弊スタジオは“元クリエイティブ・ディレクター”とは関係ない」ツイートは、こうした状況を鑑みて投稿されたのだろう。Garvin氏の発言は多くのユーザーたちに「『Days Gone』への不評レビューの責任を転嫁している」と受け取られたのみならず、人種差別問題にまで発展しかねないトピックを含んでいる。同氏に批判が寄せられる状況を受けて、『Days Gone』の開発元スタジオとして立場をはっきりさせたかたちだ。
今回はGarvin氏の発言が問題となり、開発元が同氏から急速に距離を取るかたちとなった。Garvin氏はかつてのインタビューのなかで、自身の「短気を起こしやすい」パーソナリティを振り返り、自責するようなコメントも残していた(関連記事)。今回の一件を、同氏はどのように受け止めるのだろうか。
『Days Gone』はPC(Steam/Epic Gamesストア)およびPlayStation 4向けに発売中。