SFホラー『The Callisto Protocol』日本発売中止へ。CEROのレーティングを通過できなかったため
パブリッシャーのKRAFTONは10月27日、『The Callisto Protocol』の日本発売中止を発表した。
『The Callisto Protocol』はストーリー主導のシングルプレイ・サバイバルホラーゲームだ。物語の舞台は2320年、木星において「死の月」と呼ばれる衛星Callistoだ。プレイヤーは厳重に警備されたBlack Iron刑務所からの脱出を図りつつ、Callistoに潜む恐ろしい秘密に迫っていく。なお、開発を手がけるのはStriking Distance Studios。CEOであるGlen Schofield氏は、かつてVisceral Gamesにて『Dead Space』のエグゼクティブ・プロデューサーを担当した人物である。
本作は日本国内向けにも発売が予定されていた。しかし本日10月27日、本作の日本向け公式Twitterアカウントは国内発売中止を発表。理由としては「CERO(コンピュータエンターテインメントレーティング機構)のレーティングを通過できず、内容を変更すると、プレイヤーが期待する体験を提供できなくなると判断した」ためとされている。また予約購入者には返金対応がおこなわれることが伝えられている。発売中止となるプラットフォームについては明記されていないものの、現在本作のPS StoreおよびSteamストアページは日本から閲覧できない状態となっているようだ。
【UPDATE 2022/10/27 11:02】
本作Steamストアページが閲覧可能である点を確認し、記述を訂正
【UPDATE2 2022/10/28 11:08】
本作Steamストアページが閲覧不可となった点を確認し、その旨を追記
国内家庭用ゲーム機のレーティング事情
日本の家庭用ゲーム機向けには、レーティング審査を受けて対象年齢などが決定したゲームが発売されている。日本では、その審査や年齢区分の決定については基本的にCEROが担っており、ゲームのパッケージなどで対象年齢が記載されたマークを見たことがある方も多いだろう。伝統あるレーティング機関であるが、審査手続きは主に国内でする必要があるほか、一定の審査料が必要となっている。
一方でダウンロード専用ゲームの販売については、IARC(International Age Rating Coalition)の審査を利用することもできる。IARCは、海外を拠点にするレーティング団体。ダウンロード専用ゲーム・アプリのみを審査対象にしている。北米のESRBや欧州のPEGIなど各国・地域のレーティング団体が加盟して成り立っており、審査結果に応じてIARCレーティングが加盟各団体のレーティングに変換されることが大きな特徴だ。
さらにIARCの審査料金は無料。つまりメーカー側からすると、IARCで1度無料審査を受けると、そのまま加盟各国・地域すべてでゲームをリリースできる。一方、現時点でCEROはIARCに加盟していないため、日本で発売するには別途CEROによる審査が必要となるわけだ。
IARC浸透も、一部CERO審査必要な日本国内展開
ただIARCにはプラットフォームホルダーも加盟しており、上述した変換されたレーティングあるいはIARCレーティングを付与されたタイトルを扱うかどうかを、それぞれが国・地域ごとに判断している。たとえばマイクロソフトは、IARCレーティングを取得したXbox版ゲームを、海外だけでなく日本でもダウンロード販売することを認めている。また任天堂も一定以下の対象年齢であることなどを条件に、IARCレーティングを用いた日本での配信を認めている。
ソニー・インタラクティブエンタテインメントも今年2022年3月からは、日本のPlayStation Storeにて販売されるダウンロード専用タイトルについて、従来のCEROに加え、IARC汎用レーティングをメーカー側が選択可能となった(関連記事)。一方で、18歳以上を対象とするタイトルに関しては、引き続きCEROレーティングの取得をメーカーに求めるとしていた。青少年保護の観点から、日本市場に特化したレーティング審査に長年実績のあるCEROの審査を経て配信することが望ましいという判断があったとのこと。また、パッケージ・ダウンロード併売タイトルについても、CEROレーティングを使用するとされている。
今回、日本発売中止となった『The Callisto Protocol』は、トレイラーなどを見るに主人公などの人間の身体が欠損を伴うようなグロテスクなシーンも多い。また、本作Xbox Series X|S版のストアページによると、IARCでは「18+」レーティングが取得されている。CEROにおいても、18歳以上を対象とする作品として審査されていた可能性は高いだろう。また本作はダウンロード版だけでなく、パッケージ版の発売も予定されていた。少なくともPS Storeの基準では、CEROレーティング取得が求められるタイトルであったといえそうだ。
ちなみにSchofield氏がかつて携わった『Dead Space』は、現在Electronic Arts傘下のMotive Studioのもとでリメイク版が開発中。2023年1月27日に国内発売が予定されている。しかしながら弊誌で確認したところ、いつからかは不明ながら、こちらも現在PS StoreおよびSteamストアページなどが閲覧できないようである。同作もグロテスクなシーンが多い上、ゴア描写はオリジナル版より強化されることが伝えられている。またオリジナル版は国内発売されていなかったタイトルでもある。本作もCERO審査予定とされており、現状国内発売についての予定変更は発表されていないものの、今後の動向が注目されるところだろう。
※ The English version of this article is available here