ゲーム会社によって違うプレイテストへの“お礼”。交通費のみから、1時間50ドル相当の厚遇まで

 
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ゲーム開発におけるプレイテスターに対する報酬は、ゲーム会社によって大きく異なっているようだ。中でも『Destiny』シリーズで知られるBungieなどは、テスターに比較的高額な報酬を支払っているという。海外メディアInsider Gamingが伝えている。

『Destiny2』


プレイテストとは、正式リリース前に実際のゲームをプレイする開発過程だ。そこに携わるプレイテスターは、いわゆるQA(品質保証)スタッフとは立ち位置が異なる。一般公募や招待などでテストに参加し、ゲームに関する考えや意見を提供するだけでなく、遭遇する可能性のあるバグについてもフィードバックを提供する。一般的にはゲームプレイの腕前は不問とする場合が多く、普段ゲームをしない人も含め幅広い対象がプレイテスターとして募られている。テスター希望者によるボランティア的な側面もあり、お礼や報酬はスタジオによってまちまちなわけだ。

Insider Gamingに寄稿したフリーライターのTom Henderson氏の調査によれば、プレイテスターたちへの報酬はゲーム会社によって大きく異なるようだ。まず、控えめなお礼が報酬として渡されたり、そもそも用意されていなかったりするスタジオが多い様子。たとえばコナミデジタルエンタテインメントの英国・ウィンザーオフィスで は、プレイテストを招待制にて実施。報酬はなく、交通費のみが支給されるとのこと。またEmbark Studios も現在、原則報酬のないプレイテストをリモートで実施しているそうだ。こちらは公式サイトでテスターを募集しており、場合によってはささやかな報酬が用意されるケースもあるという。

*Embark Studiosが開発中の『THE FINALS』

またテスターへの報酬として、自社のゲームなどを無料で提供するゲーム会社も見られる。Electronic Artsではプレイテストの報酬として、ゲームが1~4タイトル贈呈されるそうだ。またBethesdaでは、自社タイトルに関連するグッズが詰め合わせで贈られるという。一方、ユービーアイソフトの報酬はゲームのほか、現金やクーポンコードなどさまざま。プレイテストの長さや内容に応じた報酬が用意されるようだ 。

そしてHenderson氏の調査したゲーム会社の多くは、商品券やギフト券をプレイテストへの報酬として用意しているようだ。中でもBungieは比較的高額で、1時間あたり50ドル(本稿執筆時点で約7400円)分のギフトカードが給付されるという。またテストは米国ワシントン州・ベルビューのオフィスにて実施され、テスターの移動距離に応じた交通費も少額ながら提供されるそうだ。

またスクウェア・エニックスについても、米・カリフォルニア拠点の募集テスターには比較的高額な報酬が用意されているという。報酬はゲームによって異なるものの、一般的にはオフィスでのテストプレイは4時間で100ドル(約1万4900円 )。リモートでは1時間につき、約50ドルがいずれもギフト券にて支払われるとのことだ。ほかには はActivisionが、1時間あたり40ドル(約5960円)のギフトカードにてテスターへの報酬を支払っているとされている。そのほか商品券などの支払いが採用されているスタジオについては、1時間20ドル(約2980円)程度が主流のようである。


会社規模を考えると、BungieがActivisionの支払額を追い抜いているのは意外なところだろう。ただ、Bungieは今年2022年7月、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)により買収(関連記事)。PlayStation Studiosのライブサービスタイトルの開発に注力していることが伝えられている。厚遇が買収後に始まったかどうかは定かではないものの、SIEの資本が後ろ盾となっていることで今後もこうした厚遇が続くとみてもよさそうだ。

前述のとおり、プレイテスターについては契約や雇用ではなく、有志参加のいわゆるボランティア的 なプログラムとしてみなされる場合が多い。そのため報酬が用意されていない、または低額の報酬となる場合も一定数存在する。一方でプレイテスターは、ゲーム会社のQA(Quality Assurance・品質保証)部門に採用されるためのキャリアの第一歩にもなるともされている。QAの業務範囲は会社によって違いがあるものの、テスター業務から改善提案まで幅広い業務を担うこともしばしばだ。そのため、プレイテスターとしての経験が活かせる部門ともいえるだろう。

テスターに選出されるには運なども絡む一方で、好きなスタジオ作品のテストに参加できるのはファンにとって喜びでもあるだろう。本格的にテスターとして活動するには、テスター派遣エージェンシーに登録するなどの手もあるようだ。なお、今回のデータは、海外でのプレイテスター待遇が中心となっている。国内企業や拠点ではまた違う待遇や応募手法が見られるかもしれない。


なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。