Metaのザッカーバーグ氏による“抜け殻バーチャル自撮り”がネタにされる。本人が「急いで撮ったから」と弁明

 

Meta (旧Facebook社)が展開するメタバース「Horizon Worlds」が8月16日、フランスおよびスペイン向けに正式サービス開始された。新たな地域への展開を祝い、マーク・ザッカーバーグ氏がHorizon Worlds内での自撮りを投稿。しかしその見た目があまりにもチープだとして話題となり、ザッカーバーグ氏が弁明のコメントを出すに至ったようだ。海外メディアKotakuなどが伝えている。

「Horizon Worlds」

「Horizon Worlds」は、Metaが展開するメタバースだ。ユーザーは、VRヘッドセットMeta Quest 2などを用い、自らのアバターを通じてメタバースに参加。バーチャル空間にて、ほかのユーザーとさまざまなかたちで交流できるほか、独自のワールドを作成することも可能となっている。また、メタバース内での仮想アイテム販売機能などの機能拡充も進められている。「Horizon Worlds」は昨年12月から、アメリカとカナダで先行してサービスが開始。後にイギリス向けにも展開されるなどサービス地域の拡大も進行中だ。

そして8月16日には、フランスおよびスペインに向けた「Horizon Worlds」正式サービスが始まった。同日にはMetaの共同創業者およびCEOである、ザッカーバーグ氏もコメントを寄せている。同氏は自身のFacebookアカウントにて両国でのサービス開始を告知。「ユーザーたちがバーチャル世界を探検し、また自ら作り上げてくれるのを楽しみにしている」と伝えた。この投稿には、Horizon Worlds内でのザッカーバーグ氏の“バーチャル自撮り”画像も添えられていた。しかし、この画像が物議を醸すことになる。どうもチープに見えてしまうのだ。

まず気になるのは、立体感の乏しい山を背景に、木がぽつりぽつりと立っているやや薄味な世界観だろう。画像中央に配置されているのは、フランス・パリの象徴であるエッフェル塔のようだ。その後ろにあるのは、スペインを象徴する建物だろう。筆者はスペインのランドマークを思いつく限り調べたものの、類似の建造物は見当たらなかった。ただ、各所の特徴から察するに、サグラダ・ファミリアの完成予想図をイメージした3Dモデルかもしれない。そして何より目を引くのは、手前に写るザッカーバーグ氏のアバターである。ディティールを省いたつるりとした3Dモデルにより表現されたザッカーバーグ氏は、やや目がうつろ。分身というより人形のような、筆者の印象でいえば「感情のない抜け殻」感のある仕上がりとなってしまっている。その瞳も、未来というより虚無を覗いているような風情だ。

全体的に残念な部分が目立つバーチャル自撮り画像は、SNSを中心に波紋を広げた。Twitter上では「バーチャルザッカーバーグが怖い」などの意見のほか、「総じてグラフィックがひどい」といった声も数多く見られる。また、自撮り画像の妙なインパクトがウケたためか、ネットミーム化の兆しも(Know Your Meme)。「グラフィックに対していかに上手く皮肉をいうか」との大喜利めいた様相も展開され、画像をNINTENDO 64のゲームパッケージ風に加工する者などもあらわれた。

https://twitter.com/joeljohnson/status/1559924195152257032

大本であるFacebook上のザッカーバーグ氏の自撮り投稿にさえ、懸念のコメントが投じられている。「もっとゲーマーの意見を取り入れ、グラフィックやリアリズムに活かした方がよい」との指摘や、「死んだ目がよく再現できている」との皮肉のコメントも。また、各海外メディアも「Horizon Worlds」のグラフィック品質に疑問を呈するに至った。

ザッカーバーグ氏の自撮り投稿に対しては、「Horizon Worlds」の発展を祝う声もある。しかし、SNS上などで多勢を占めるのは、「Horizon Worlds」のグラフィック品質に懸念や批判を示すユーザーのようだ。

マーク・ザッカーバーグ氏
Image Credit: Anthony Quintano (CC BY 2.0) cropped.

そうした状況を受けてか、ザッカーバーグ氏は8月20日に、自身のFacebookアカウント上で新たなコメントを投稿。「Horizon Worlds」の今後の展開と自撮り画像についてコメントしている。まず、「Horizon Worlds」には近日中に大きなアップデートがなされるとのこと。アバターについても改善されるそうだ。そして、物議を醸したバーチャル自撮り画像について同氏は「ローンチを祝うため急いで撮ったものだった」と釈明。「Horizon Worlds」ではもっと高度なグラフィックも描画できると強調し、今後急速に改善されていくだろうとしている。また、投稿には新たなアバターおよびバーチャル空間と思しき画像が添えられている。いずれも先の自撮り画像よりはかなり品質が向上した印象だ。アバターとなったザッカーバーグ氏の瞳にもしっかり光が宿っている。

ザッカーバーグ氏によれば、「Horizon Worlds」は今後も世界の国々へと展開していく予定。発展途上のプロジェクトでもあり、「抜け殻バーチャル自撮り」の印象だけでその体験の真価を決めてしまうのは早計だろう。一方で、昨今では「メタバース」というコンセプト自体が濫用されがちな風潮もある。また、高品質な3DゲームやMMOでの交流などを経験しているゲーマー層からは、厳しい目線を投げかけられやすい分野だ(関連記事)。広い層に向けたメタバースを目指すMetaが、グラフィック面を含めどのように魅力的な世界を作り上げていくかは、今後にかかっているだろう。