国会議員の赤松健氏が「(ゲームは)3時間で飽きるだろ」と発言し謝罪。漫画家ゲーマー議員の発言の真意は

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先の選挙にて国会議員に当選した赤松健氏が、「ゲームは3時間で飽きる」との旨をTwitter上で発言し、波紋を呼んだ。一見ゲーム文化を軽視したような発言には批判的な声が多数寄せられ、赤松氏が同発言について謝罪するに至っている。しかしその背景には、同氏が抱く「ゲームが悪者にされる」事態に対する懸念があったようだ。

赤松氏は「ラブひな」「魔法先生ネギま!」などの人気作品を手がけた漫画家だ。漫画執筆業のかたわら表現規制への反対活動を続けており、先の第26回参議院議員通常選挙にて漫画家として初めて国会議員に当選。創作表現に対する規制反対を掲げ、全国から52万8053票の支持を集めていた。その出自や活動から、漫画・アニメ・ゲームなどを好む有権者らの支持層も厚いと見られる人物だ。

そんな赤松氏によるSNS上でのとある発言が、先日コミュニティに大きな波紋を広げた。発端となったのは、今年4月に実施された「全国学力テスト」の結果に関するFNNによる報道だ。このテストは、全国の小学6年生と中学生3年生、あわせて200万人以上を対象に実施されたという。同報道では、学力テストと同時に実施されたアンケート内容についても触れており、「ゲームのプレイ時間が長いほど、テストの正答率が下がる」傾向があると伝えていた。なお、これはPC/コンソール/モバイルにおけるビデオゲームのプレイを対象とした質問だったようだ(調査結果PDF)。

赤松氏は8月11日、上述の報道について自身のTwitterアカウント上で言及。その内容について、文科省の職員らに意見を求めたと報告している。赤松氏は「ゲームプレイの時間を短くすれば正答率が向上するとの認識か」と職員らに問い、「いいえ」との解答を得たとのこと。すなわち、文科省としてはゲームプレイ時間のみが、テスト正答率を下げる要因ではないとする見解だろう。

さらに続くツイートで赤松氏は、子どもたちの平日1日のゲームプレイ時間を問う設問に言及。「30%の小中学生が、毎日3時間以上プレイしていると回答した」とするアンケート結果を伝えている。しかし、赤松氏はこの結果に疑問があったようだ。同氏は「(平日1日のゲームプレイ時間が)3時間以上と答えた小中学生が30%もいるのは多すぎる。飽きるだろ」と発言したのだ。

この「飽きるだろ」発言は瞬く間にTwitter上で注目を浴び、ユーザーからの声も多数寄せられた。「たしかに30%以上は多いように思える」との同意の意見も見られるものの、基本的には赤松氏の認識に対する反対意見が中心のようだ。たとえば、「3時間以上ゲームをプレイするのは昨今では珍しくない」「同じゲームだけ遊んでいるとは限らない」などの指摘だ。

ほかにも、「飽きるだろ」という言葉を見て、赤松氏がゲーム文化や魅力を軽視していると解釈した者も少なくない様子だ。「ゲームというコンテンツの否定である」「オタクの側に立っていない」「ゲームにはそれくらいの魅力がある」などとして、赤松氏を真っ向批判する声も多数寄せられている。一方の赤松氏は8月12日、一連の指摘を受けて謝罪ツイートを投稿。「飽きるだろ」は余計な一言だったとして、表現について謝罪している。しかし、依然として「赤松氏が本心ではゲームを軽視しているのではないか」と訝しむ声があがる状況だ。

ただし、実際に赤松氏がゲームを軽視しているとは考えづらい面もある。というのも、一連のツイートの意図を要約すれば「子どものゲームプレイ時間が正確に計測されず、ほかの要因も考慮せずテストの正答率と結び付けられれば、いたずらにゲームが悪者にされる可能性がある」との懸念を示す内容である。また、アンケートに答えたのは児童ら自身。赤松氏が釈明したように「子どもの証言のみを分析の根拠としてよいのか」とする懸念も一理あるだろう。つまり赤松氏の発言は、ゲーム文化のいたずらな印象悪化を防ごうとする側の意見と受け取れる。

また、赤松氏がゲームについて無知無関心であるかというと、そうではないと思われる。まずひとつには、赤松氏は議員当選後「過去のゲームの合法的保存」に取り組んでいくことを明らかにしている(関連記事)。さらに同氏は、自身でゲームを開発した経験もある。PC-8801向けアクションRPG『PALADIN』である。同作の開発について振り返るブログ記事にて赤松氏は、幼少期よりゲームが好きであり「少ないROMカセットで朝から晩まで遊んだ」と懐述し、ゲームやプログラミングへの愛情を伝えている。ほかにも、赤松氏はMMORPG『ウルティマ オンライン』を10年以上遊び、寝食を忘れて熱中したとも語っている。つまり、赤松氏の言葉を信じるなら「夢中でゲームをやる感覚」や「ゲームの魅力」については知っていると考えられるわけだ。

そうした背景を踏まえると、赤松氏の「3時間で飽きるだろ」発言は、ゲームの魅力を否定したものではなく「不正確なデータではないか」との違和感を軽率に言葉にしてしまった結果だったようだ。ただ、この見解はあくまでも赤松氏の主観。昨今におけるゲームの遊ばれ方や、子どもたちのゲームプレイの実情とギャップが生じている可能性はある。赤松氏自身も認める通り、「飽きるだろ」との言葉選びも乱暴であり、批判を招くのも致し方なかっただろう。また、同氏が調査方法の一例として提案した「Nintendo みまもり Switch」アプリの利用や「親を対象とするアンケート」については、本当に手法として適切か、そして正確なプレイ時間データが得られるかとの疑問もある。

一方で赤松氏の発言そのものは、ゲームプレイ時間とテスト正答率の相関性について、しっかりとした吟味を求める内容だった。そもそも子どもの学力に影響する可能性がある娯楽や生活習慣は、ゲームのみに限らない。にも関わらず、「ゲームプレイ時間とテスト正答率に相関性がある」などの情報のみが独り歩きすれば、「ゲームをやめさせれば子どもの学力が上がる」といった短絡的思考に結びつきかねない。赤松氏が一連のツイートで示したのも、そうした早計な「ゲーム悪者論」に対する懸念だったのだろう。

子どもたちの成長は、あらゆる環境要因で変化していく。そのなかでゲームだけを見ても、教育との関連性はまだまだ未知の分野だ。ゲームと一口にいえど、もたらす体験は千差万別。子どもへの影響も一概にはいえない。一方で、ゲームは数ある娯楽のなかでも、官民からの“風当たりが強い”存在ともいえる。WHOによる「ゲーム障害」の認定や、物議を醸した「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」の施行などがその一例だろう。そうした状況のなか、赤松氏が政治家としてゲーム文化を尊重してくれるかどうかは、今後の同氏の活動こそが物語ることだろう。




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