議員当選の赤松健氏が“過去のゲームの合法的保存”に着手。あらゆるゲームをプレイ可能な状態で後世に残す

 

第26回参議院議員通常選挙で国会議員に当選した赤松健氏が、過去に発売・配信されたゲームの保存に強い意欲を見せている。同氏は7月13日、自身のTwitterにて「『プレイ可能な状態での、過去のゲームの合法的保存』について、専門家で選抜チームを編成して乗り出すことになった 」と投稿。レトロゲームなど古いゲームコンテンツのアーカイブ化に本格的に取り組んでいることを述べた。

赤松氏は「ラブひな」「魔法先生ネギま!」などの人気作品を手がけた漫画家だ。漫画執筆業のかたわら表現規制への反対活動を続けてきた同氏は、7月10日に執行された第26回参議院議員通常選挙に創作表現に対する規制反対を掲げて出馬。全国から52万8029票の指示を集め、漫画家として初めて国会議員に当選した。

赤松氏はこれまで、自身のYouTubeチャンネルにて今後の展望を話してきた。7月7日に配信されたライブ配信では「この世にある全てのゲームをプレイできる状態で保存したい 」という野望について熱く語っている。レトロゲームやガラケー向けのゲームなど、これまでに世に出てきたゲームのなかには、現在はプレイすることが難しいものも多い。それらのゲームを何らかのかたちで保存し、リモートでプレイできるような環境および法律の整備を目指していきたいそうだ。

※ ゲーム保存への言及部分は29分50秒~

すでに書籍やCDなどの出版物は国立国会図書館で収集・保存する仕組みが完成しており、デジタル化されている資料についてはインターネットを通じて閲覧することができる。赤松氏はこの国立国会図書館の仕組みをゲーム分野にも広げ、遠隔地からゲームを遊べるようなシステムを構想しているようだ。また、赤松氏はレトロゲームのみならず、ソーシャルゲームやオンラインゲームなど、サービス終了によって失われてしまうゲームの保存にも意欲を見せている。ゲームの歴史を未来に残し、プレイ可能な状態で保存することを目標としているようだ。

赤松氏は過去に、絶版漫画の保存に関するウェブサイトを立ち上げた実績もある。2010年に自身が代表を務める株式会社Jコミ(現・Jコミックテラス)を設立し、絶版となった漫画やライトノベル、TRPGルールブックなどを電子書籍化して配信するウェブサイト「Jコミ(現・漫画図書館Z)」を開設した。絶版や未単行本化など、将来的に保存していくことが難しい作品を著作者の許可を得て公開し、誰でも閲覧可能とするサイトである。かつて漫画分野で絶版作品のアーカイブサイトを立ち上げた赤松氏が、今度はゲーム分野でも近いことを成し遂げるべく奔走しているようだ。

ゲーム資料の保存を目的とする団体は、国内にも少なからず存在する。ビデオゲームの歴史や系譜など、文化を記録する「ゲーム文化保存研究所」、ビデオゲームの黎明期に制作されたメディアの保全をはかる「ゲーム保存協会」、これまで発売されてきたゲームがどこで、どのように所蔵されているのの調査および組織化活動を行っている「立命館大学ゲーム研究センター」など、さまざまな団体がさまざまな観点からゲームの歴史を保全すべく活動しているのだ。民間で多くの人々が尽力している分野に国会議員となる赤松氏が参入することで、これまでよりも踏み込んだアプローチも可能となるかもしれない。

漫画家初の国会議員となる赤松健氏が構想する、レトロゲームのアーカイブ化。サーバー運用が必要なオンラインゲームなどは、技術的に難しい部分もあるだろう。また、古いタイトルでは制作データ自体が散逸し、所在がわからないケースも考えられる。障害が多そうな構想だが、ゲーマーにとっては夢のような話だ。赤松氏がこの野望をどう実現していくのか、今後の動向に注目していきたい。

【UPDATE 2022/7/13 20:18】
赤松氏について、「議員になる人物」であることを追記



※ The English version of this article is available here


ポストアポカリプスとドット絵に心惹かれます。AUTOMATONではFF14をメインに担当します。