『エルデンリング』の“黄金樹の麓”に辿り着いたユーザーから「謎の人物がいる」との報告。改造なしで行ける未知エリアに待つ者とは

『エルデンリング』にて、本作の象徴である「黄金樹」の麓に、とあるボスキャラがいたとのユーザー報告が投稿されて注目を浴びている。本来プレイヤーが訪れない場所にぽつんと存在する重要キャラは、なぜ配置されたのだろうか。本稿には、『エルデンリング』終盤のネタバレが含まれるため留意してほしい。

エルデンリング』にて、本作の象徴である「黄金樹」の麓に、とあるボスキャラがいたとのユーザー報告が投稿されて注目を浴びている。本来プレイヤーが訪れない場所にぽつんと存在する重要キャラは、なぜ配置されたのだろうか。本稿には、『エルデンリング』終盤のネタバレが含まれるため留意してほしい。


『エルデンリング』は、フロム・ソフトウェアが手がけたアクションRPG。本作は『ダークソウル』シリーズなど同スタジオ過去作のゲームプレイを色濃く受け継ぎつつ、多くの新要素も盛り込み。広大なオープンフィールド「狭間の地」を舞台として、冒険が繰り広げられる。そして、本作の世界の象徴となるのが、マップ中央付近にそびえる、規格外の巨木である黄金樹だ。黄金樹は狭間の地の象徴であり、地上であればマップのどこからでもその威光を眺められる、太陽のような存在だ。生命の営みに深く関わり広く信仰を集めるほか、本作の大目的となるエルデンリングとも関係の深い、設定上もゲームプレイ上も重要な存在である。

ただ、黄金樹には謎も多い。本作ではアイテムのフレーバーテキストや会話などを通じて、多くの情報が与えられる一方、プレイヤーが情報をつなぎ合わせて解釈する部分が大きい。「黄金樹が実際なんなのか」という点にはさまざまな解釈もあり、その謎は依然として多くのプレイヤーを惹き付けているのである。そして先日、この黄金樹の麓にて、「とある重要人物を見つけた」とのユーザー報告があがり、注目を集めた。海外掲示板Redditユーザーの、vlad17design氏による報告だ。


vlad17design氏は8月2日、Reddit本作コミュニティ上にてある動画を公開した。そちらの動画では、通常プレイではまず訪れることのない、より黄金樹の根本に近いゾーンに到達する様子が映し出されている。手法としては、祝福「黄金樹の大聖堂」より出発し、戦技「水鳥乱舞」を駆使して橋脚の足場に着地。そして崖の上を慎重に歩き、黄金樹の麓に到達している。到達地点では地面の判定こそあるものの、建物の壁が表示こそされ衝突判定がなくすり抜けられたりと、プレイヤーが来ることを想定していないことがうかがえる。そして、同氏の映像は、そこに待ち構えていた本作の重要人物を捉えている。本作終盤のボス「戦士、ホーラ・ルー」である。


プレイヤーが来そうもない場所に、なぜか突然のボス。今にも襲いかからんばかりの姿で突如出現したホーラ・ルーは、黄金樹にまつわる新たな謎なのだろうか。また、vlad17design氏の動画では、黄金樹の内側、さらに根本の方にモンスターらしき謎の影が存在していると伝えている。

筆者はまず、実際にホーラ・ルーが存在するのかどうかゲーム内で確認した。バージョンは1.03.2および、本作現行最新バージョンである1.05だ。「王都ローデイル」に飛び、vlad17design氏の手法を真似した。すると、いずれのバージョンでも橋脚の足場に着地できず、見えない当たり判定に阻まれるようなかたちになった。本作ではこうした、予想外の場所に到達できるポイントに修正が入る場合もある。「黄金樹の麓への道」もそうして修正されたかと思いきや、別の条件があったようだ。

今度は、上述と同じ手法を、黄金樹が燃え上がったあとの「灰都ローデイル」にて試してみた。すると、いずれのバージョンでも見事にvlad17design氏のルート取りを再現することができた。つまり、橋脚の当たり判定が「王都」と「灰都」で変化していると見られる。つまり、灰都ローデイルのみで到達できるエリアなのだ。また、このエリアには改造などをすることなく、通常の手段で到達可能だ。そして筆者が黄金樹の麓を探索していると、たしかにホーラ・ルーその人がそびえ立っていた。血みどろの戦士が僻地にぽつねんと存在する姿は、異様でもあり、なにかシュールでもあった。また、上述の「謎のモンスター」の姿もおぼろげながら確認できた。

Image Credit: vlad17design on Reddit


謎エリアにホーラ・ルーが実在することは確認できた。ただし、彼の場違いな登場は、『エルデンリング』の設定を深めるような意味深な謎ではないと見られる。一方で、本作開発上の工夫を感じさせる興味深い発見ではある。というのも、ホーラ・ルーはこの謎の場所に「いったん仮置き」されていると考えられるのだ。

黄金樹は旅の最終目的地ということもあり、プレイヤーが肉薄する機会はさほど多くない。しかし、黄金樹の“正規の入り口”の前にある「エルデの玉座」では、印象的なボス戦が繰り広げられる。中盤では「忌み王、モーゴット」と戦闘。終盤では「最初の王、ゴッドフレイ」が待ち構え、彼を追い詰めると姿を大きく変えて「戦士、ホーラ・ルー」となり、さらなる死闘が展開される。ゴッドフレイとホーラ・ルーは同一人物でありながら、その精神面の変化をあらわすかのように、ボス戦の途中で大きくキャラクターモデルや戦闘スタイルが変化するわけだ。つまり、同じボスでありながら、違うキャラクターモデルを利用していると考えられる。

ゲーム内で新たなモデルを表示するには、どうしても読み込みが必要となる。また、モーションやAIなどの準備も必要だろう。そんななかで、一瞬のうちにキャラクターモデルを切り替えるにはどうしたらいいだろうか。「先に読み込んでいったん見えないところに仮置きしておく」のである。つまり、黄金樹の麓の意味深なホーラ・ルーは、開発陣に「後で出すからここで待っておいてね」と配置され、お行儀よく待機している状態と考えられるのだ。


また、「仮置き説」を後押しする要素はほかにもある。まず、明らかにプレイヤーの来訪を想定しない場所に配置されている点に、隠し要素を置くのは不自然である。また、実は「仮置き」されているのはこのホーラ・ルーだけではないとの証言もある。上述のRedditスレッドでは、『ダークソウル』シリーズなど過去のフロム・ソフトウェア作品でも、ボスモデルなどを素早く出すための「仮置き」と見られる例があると報告されている。

さらには、黄金樹の下の「謎のモンスター」についても、その正体が判明。ユーザーのDweet氏がこのエリアについて分析。「接近して確認したところ、ラスボスであるエルデの獣だった」とYouTube動画で伝えている。黄金樹の内部は、ラスボス戦の舞台でもある。そちらに素早く登場させるため、巨大な獣をできるだけ遠くに仮置きしたのだろう。一連の分析は推察に過ぎず、真相を知るのはあくまでも開発陣のみである。ただ、一連の報告を踏まえると、なんらかの深い意味をもって黄金樹の麓にホーラ・ルーが佇んでいた可能性は薄そうだ。一方で、「ボスの突然の変化や登場」など、ゲームデザインの要件を実現する、開発陣の技が光る発見だろう。


今回の発見は、『エルデンリング』に新たな設定上の謎をもたらすものではなかった。しかし、あるプレイヤーが黄金樹の麓にどうにかして到達し、そこがたまたまホーラ・ルーの「待機スポット」だったのは、かなり面白い偶然だろう。現行のバージョン1.05でも、改造などなしに待機中のホーラ・ルーの場所を訪れることが可能となっている。彼の姿をじっくり眺められる貴重な機会でもある。ただし、開発者の予期しない動作と見られるため、行くこと自体は非推奨。また不具合が発生しても自己責任としてほしい。

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

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