国土交通省が『Cities: Skylines』Mod開発を検討中。行政機関による都市モデルがゲーム内に、その狙いとは

国土交通省が『Cities: Skylines』のMod制作を検討しているようだ。突如明かされた行政によるMod制作計画。それには国交省主導のとあるプロジェクトが関係しているという。Mogura VR Newsが伝えている。

国土交通省が『Cities: Skylines』のMod制作を検討しているようだ。突如明かされた行政によるMod制作計画。それには国交省主導のとあるプロジェクトが関係しているという。Mogura VR Newsが伝えている。

『Cities: Skylines』は都市運営シミュレーションゲームだ。プレイヤーは新たな都市の市長となり、街を発展させていくこととなる。その仕事は多岐にわたり、住宅地や工場地帯などの区画整備、水道や電気・道路といったインフラ建設、教育・警察・消防・医療などの公共サービス提供にまでおよぶ。徐々に移住してくる住民を増やしていき、街を活気づけていく。住民ひとりひとりは、それぞれのライフスタイルに基づいて日々を生活しており、ゲーム画面ではその動きを観察可能だ。


本作では、世界中のユーザーにより、Mod制作も盛んにおこなわれている。その種類は、ゲームシステムを便利にするものから、建造物を追加するものまでさまざまだ。なかには、日本的な建造物を追加するModも数多く配信。和風の住宅のほか、信号機や道路といった、インフラ設備も取り揃えられている。これらを駆使して(あるいは自らMod制作して)、日本風の町並みを作り上げているユーザーも存在する。


さらに本作のMod制作には、国交省までもが乗り出さんとしているようだ。Mogura VR Newsの取材に対し、国交省の都市局都市政策課課長補佐である内山祐弥氏が、本作のMod制作が計画されていることを明かしている。同氏によるとこのModは、国交省の有する3D都市モデルを利用し、地形や建物のデータを自動的にゲーム内に反映できるものになるという。詳細は未定とのことだが、実現すれば国交省が自ら作った日本都市Modが登場することになる。

そしてこの意外な展開には、コミュニティの注目も集まりつつある。人気YouTubeチャンネル「ゲームさんぽ」の編集者である、いいだ氏もMogura VR Newsの記事に言及。4月に国交省が公開した「嘉瀬川ダム バーチャル見学ツアー」をリマインドしつつ、期待の声を寄せている。


国交省が突然ゲームのMod制作を検討しているのには訳がある。というのも、国交省は2020年より、「Project PLATEAU(プロジェクト・プラトー)」(以下、PLATEAU)を進めている。PLATEAUは、現実の都市空間を再現した3D都市モデルの、オープンデータ化を目指すという計画だ。内山氏によると、オープンデータ化といっても、ただ3D都市モデルやデータを公開するだけではないという。PLATEAUの一環としては、国交省自らがさまざまなユースケースを開発。地方自治体や民間サービスへの利用を促すため、きっかけづくりをしているのだそうだ。

さらに、『Cities: Skylines』のMod制作には別の狙いもある。内山氏によると、このModには、子供に自身の住む町のことを深く知り、考えてもらうきっかけになってほしいのだという。それがPLATEAUが実現するメタバースへの理解や興味につながることを期待しているそうだ。PLATEAUでは現在、ARデバイスなどを用いた、都市型のメタバース構築における実証実験がおこなわれている。そうした取り組みを、子供にも親しみやすいゲームという形で、広く知ってもらうという意図があるのだろう。


一方で、PLATEAUのデータの扱いやすさに関しては、まだ改善の余地があるようだ。PLATEAUは建物の大きさの把握や、現実の建物との位置合わせには適している反面、グラフィック面では「コンシューマー向けのゲームやアプリにそのまま使えるほどのクオリティーはない」とのこと。低コストでメタバースなどに応用するためにも、グラフィックを作りこむノウハウが必要とされているそうだ。また、現状PLATEAUが提供するデータは、ゲーム開発エンジンなどに用いる際にデータの下処理など手間がかかる場合があるとのこと。3Dモデルデータそのものも、メッシュの分割サイズなどの面でエンジニアにとって使いづらい部分があるという。こうした問題に対する解決策として、2022年度内にSDK(ソフトウェア開発キット)を開発し、UnityとUnreal Engine 4のプラグインとして使えるようにしたいそうだ。

さまざまなコンテンツに応用可能なPLATEAUの3D都市モデル。各自治体が収集した既存のデータがもとになっているためコストも安く、その気になればどの都市でも3Dモデルを作成可能だという。コンテンツへの利用に関してはデータの扱いやすさという課題が残されているものの、UnityやUnreal Engine 4向けのSDKが開発されればゲーム開発においての利用は広がっていくことだろう。お堅いイメージを持たれがちな行政機関が、ゲームをはじめとする娯楽コンテンツに歩み寄っている点も興味深い。今後はModだけでなく多岐にわたるコンテンツに、PLATEAUのデータをもとにした日本の都市が登場するかもしれない。




※ The English version of this article is available here

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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