「プロゲーマーを目指すなら学校をやめるな」とのプロ選手の助言が話題。キャリアを選ぶ難しさ

 
Image Credit: Alex Haney

プロゲーム選手/ストリーマーによる、プロゲーマーを目指すユーザーたちへの助言が話題となっているようだ。自身の経験を踏まえた率直な意見は、大きな反響を呼んでいる。

プロゲーム選手/ストリーマーとして活躍するta1yo氏のもとには、「学校をやめてプロゲーマーを目指したい」という内容のダイレクトメッセージがよく送られてくるそうだ。同氏はそうしたメッセージに答えるかたちで、助言を投稿。その内容は、「プロは目指すものではないです。気づいたらなってます。学校いきましょう」というものであった。


ta1yoことヘンダーソン・ショーン・太陽氏は『オーバーウォッチ』のプロ選手であり、現在はZETA DIVISIONにてクリエイターとして活躍している。同氏は2017年から2019年にかけて、「オーバーウォッチ ワールドカップ」に日本代表として3年連続で選出。その後、北アメリカのチームThird Impactでの活躍を経て、San Francisco Shockに加入。同チームにて、日本人として初めて「オーバーウォッチリーグ」への参戦を果たした。また、そうした選手活動の一方で同氏は、高校に行きながらプロをやっていた経験もあり。プロやストリーマー活動をしながらも、慶応義塾大学に進学し現在も在籍している。今回の同氏の投稿は、自身の経歴に基づいたアドバイスだといえる。リプライでは同氏の意見に納得する声も多いようだ。

プロゲーマーを目指すうえで学校をやめるべきではないといった意見は、過去にNinjaことTyler Blevins氏が発言したこともある。同氏は元『Halo 3』のプロゲーマーであり、今では人気ストリーマーとして世界的に知られている人物。同氏はCNBCのインタビューに対し、自身が『Halo 3』での競技シーンおよび配信での活動と、学業を両立していたことを語っている。すべてを捨てたうえで、生活のためにゲームのプレイに専念することは不可能だ、と同氏は考えているようだ。


また、ZETA DIVISION所属の『VALORANT』現役プロ選手であるSugarZ3ro氏は、Riot Games提供のメディアBACKSTAGEの取材に対して、自身が高校時代学業とゲームプレイの両立に奮闘していたことを明かしている。「ゲームをやめる必要もないくらい、成績を上げればいい」と考えた同氏は、3年間の高校生活で学業・ゲームの両面で研鑽を続けたという。そして、ゲームをやめることなく受験勉強をして大学に合格。その後『VALORANT』との出会いを果たし、今に至るそうだ。

さらに、世の中には「ゲームは1日1時間」を守っているという社会人プロゲーマーも存在する。『鉄拳』シリーズにおいてキング使いとして戦い続けてきた、破壊王氏だ。GAMEクロスの取材によると、同氏はカスタマーエンジニアとしてフルタイムで働いているとのこと。家族との時間を差し引くと1日およそ1時間しかプレイ時間を確保できないのだという。それでも同氏は株式会社ハイドとスポンサー契約を結び、eスポーツチームであるTEAM HYDEに所属して『鉄拳』プロ選手としての活動を続けている。なお、兼業プロゲーマーとして活躍を続ける同氏の胸には「カッコいいキングをもっと目立たせたい」という思いがあるようだ。

『鉄拳7』


一方で、世界には家庭の事情から15歳で学校をやめたというプロゲーマーも存在する。今年の6月までプロ選手として活動していた、Benjyfishyこと Benjy Fish氏だ(関連記事)。同氏は学生時代、『フォートナイト』と学業の両立のため、2~3時間しか睡眠をとっていなかったという。しかしそうした努力が実を結び、ヨーロッパにおける『フォートナイト』の大会で優勝。1万ポンドもの賞金を獲得した。その後は母親のすすめもあって学校を退学し、プロゲーマーとしての活動に専念するはこびになったとのこと。

また、『Apex Legends』現役プロであるImperialHalことPhillip Dosen氏は、大学を中途退学した過去を自身の配信で語っている。同氏は米国のeスポーツチームTSM FTXに所属する選手だ。大学では医学系科目を専攻していたそうだが、出席した期間は1学期のみ。そのあと数年間籍を置いたものの、最終的には中退を選んだとのこと。一方で、当初は大学をやめるなど思いもよらなかったという。プロゲーマーとして生きていく気はなく、ゲームはあくまでも楽しみとして続けていたそうだ。ただ、結果的には、同氏はその腕前から注目を浴びることになった。そうした実績があるからこそ、退学を思い立ったのだという。

https://www.youtube.com/watch?v=ehJH47kePyI


プロゲーマーの定義は明確に定まっていないものの、おもに対戦ゲームにおいて大会などから賞金を得るプレイヤーという認識が一般的だ(コトバンク)。スポンサー契約やストリーミング配信などから収益を得る場合もある。いずれにせよ、プロゲーマーとして認知され、利益や知名度を獲得するためには、ゲームの腕前が不可欠だといえる。そのためには通常、途方もない練習時間が必要となるわけだ。ゲームジャンルによっては現役選手を続けられる年齢にも、ある程度の限界が存在する。そのため、プロを目指すプレイヤーにとっては、生活のほぼすべてをゲームに注ぎ込むというのも選択肢のひとつとなるのだろう。

今回の事例のほかにも、自分のキャリアを伸ばすために、大学の中退・休学あるいは進学しないといった選択をとるプロ選手は多い。ta1yo氏も、アメリカのチームに移籍した際には大学を休学していたという。しかしその一方で、すべてを投げ出してゲームだけに専念するのは、プロ選手にとってもハイリスクな選択肢だと考えられていることも確かだ。そうしたリスクを考慮しつつ、限られた時間のなかでキャリアを選択する困難さが、学校をやめるか否かを悩むプロ志望者が後を絶たない背景としてあるのだろう。



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なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。