デベロッパーのInsomniac Gamesが、ある“過去”をイジられているようだ。ソニー・インタラクティブエンタテインメント（SIE）は6月3日、『Marvel’s Spider-Man Remastered』および『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』のPC版を発表した。SteamおよびEpic Gamesストアにて販売予定で、『Marvel’s Spider-Man Remastered』は2022年8月12日、『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』は2022年秋に発売予定とされている。PC版移植にあたっては先日SIEが買収したゲーム会社Nixxes Softwareが関わっているとのこと。レンダリング設定の調整やレイトレーシングなどの機能が搭載されるそうだ。
PS4にて発売された『Marvel’s Spider-Man』、PS5の『Marvel’s Spider-Man Remastered』、そしてPS4/PS5でリリースされた『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』という一連のシリーズ作品は、2022年5月15日時点で全世界3300万本以上の売上を達成しているという。こうしたヒット作のPC版移植は、PlayStationプラットフォームをもっていないプレイヤーにとって嬉しい報せだろう。
ところが今回のニュースを受けて、純粋な歓迎とは異なる反応を示しているファンもいるようだ。というのも、開発元Insomniac Gamesがある一点で揶揄されているのである。それはスタジオの2017年のツイートにさかのぼる。Insomniac Gamesは過去のツイートで、「『Marvel’s Spider-Man』は絶対にPCで出ない」と発言してしまっていたのだ。
Insomniac Gamesは上記ツイートにて、『Marvel’s Spider-Man』は決してXboxプラットフォームやPCでは発売されないと宣告。恒久的にPlayStation 4専用であると断言してしまっている。もちろん本ツイートはさかのぼること5年前の発言である。当時としては、『Marvel’s Spider-Man』のPC版移植の話など影も形もなかったことであろう。結果的に“嘘”となってしまったのは確かながら、先の展開を知っていて虚偽を広めたわけではないはずだ。SIEの方針との兼ね合いもあり、Insomniac Gamesだけが嘘つき呼ばわりされるのも酷である。
が、残念ながらインターネットは意地が悪い。そして事実として、『Marvel’s Spider-Man』のリマスター版はPC版が発売決定し、過去の発言は自動的に嘘ということになってしまった。ネット上の目ざとい人々はInsomniac Gamesの過去ツイートを発見し、取り上げ、鬼の首を取ったようにイジっているようだ。
＊ちなみにInsomniac Gamesは2020年にも「PC版は出ない」と発言。
SIEは2020年より、ファーストパーティタイトルについて、PCプラットフォーム向けのIP展開を強化する方針であることを明らかにしていた（関連記事）。その予告通り、2020年8月には『Horizon Zero Dawn』のPC版をリリース。2021年5月には『Days Gone』PC版を発売し、さらに2022年1月には『ゴッド・オブ・ウォー』のPC版を配信した。
そしてSIEのCEOであるJim Ryan氏は、今年5月26日の投資者向け説明会にて、SIEとPCとの関係性を振り返っている。同氏はSIEが2021会計年度において、PCゲームで8000万ドル（約104億円）の収益を上げたと報告。2020会計年度のPC版収益が3500万ドル（約45億円）だったことから、同社がPC版の販売において大きな成長を遂げたことが分かる。そして、2022会計年度においては、SIEは3億ドル（約392億円）のPC版売上を見込んでいると明かした。
こうしたSIEの経営方針にあたって、『Marvel’s Spider-Man』シリーズのPC版進出は自然な流れといえるだろう。5年前のInsomniac Gamesとしては想定外だったといえそうだが、PlayStationプラットフォーム恒久独占の方針は影を潜めつつある。そうした変化が、過去の発言を“嘘”にしてしまった一件だった。『Marvel’s Spider-Man Remastered』PC版は2022年8月12日、『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』PC版は2022年秋に発売予定である。
