「ゲーム開発がなぜ長期化しつつあるのか」開発者らがTwitterで分析。ゲームの進歩がもたらした影

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ゲーム開発が長期化しつつあり、その理由を分析する議論が活発化しているようだ。とある人物の疑問がSNSに投じられたことにより、さまざまな開発者が知見を共有している。結論からいうと、ゲームの開発期間が長期化した背景には、グラフィックの表現力の向上や開発の大規模化に端を発する、さまざまな原因があるようだ。

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多くの意見寄せられた発端

今回、多くの開発者たちが意見を投じるきっかけとなったのは、Twitterにおけるある投稿だ。3Dモデリング分野で活躍するとある開発者は5月29日、「昔に比べてゲーム開発期間が長期になっていることは、どこかで議論されているのだろうか」との旨の疑問をツイートした。同開発者は、昔のゲームは長くて2年ほどで開発完了していた一方で、現在では開発完了までに4~5年かかるとしている。その上で、昔のハード性能などによる制約はあったにせよ、なにが開発期間を伸ばしているのか工程を比較分析すれば、開発期間短縮のヒントになるかもしれないとの見解を示した。

さらに同開発者は、自身の考察としてその原因について言及している。「半自動でリソース制作を短縮する仕組みなどのために、かえってさまざまな部分に手が行き届くようになり、工程が増えているのではないか」との旨をコメント。真に作品に重要な部分を見極め、リソースをあてることが重要との考えを示している。また、一連のツイートは「一体なにによって、ゲーム開発が伸びているのか」という謎を明らかにしたい思いで投稿されたようだ。

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実際にゲーム開発期間は伸びているのか

実際に、ゲームの開発期間は伸びているのだろうか。開発期間は作品の規模や制作体制によってまちまち、という前提の上で、ひとつの指標となりそうなのが「長寿シリーズのリリース間隔」だ。たとえば『バイオハザード』シリーズの場合には、初期には1~2年のスパンでリリースされていたところ、『バイオハザード0』以降は3年以上のスパンに。さらに、『バイオハザード 7 レジデント イービル』は前作から約5年、『バイオハザード ヴィレッジ』は約4年の間隔をもってリリースされている。ほかにも、『ファイナルファンタジー』『ドラゴンクエスト』などの長寿シリーズでも、基本的に同様の傾向が見られる。

リリース期間が広がる原因は、必ずしも開発期間の伸長とは限らない。しかし、収益の柱となる看板タイトルは、品質とのバランスを取りつつも可能なかぎり短いスパンで開発し、ファンに届けたい面もあるだろう。そのため、リリース期間の伸びが開発期間と相関している可能性は高い。少なくとも人気大作ゲームシリーズに関しては、開発期間が長期化していっていると考えてもよいだろう。また、展開するゲーム機が代替わりするごとにリリース間隔が伸びている傾向も見られ、グラフィックなどのリッチさ向上による開発必要リソース増大も垣間見える。

『ファイナルファンタジー』ピクセルリマスター
『ファイナルファンタジーXV』

ただ、表現力向上によって工程が伸びるとはいっても、その具体的な機序はいくつかのケースが考えられるようだ。単に高精細な3Dモデルの制作などに手間がかかる、というのもそのひとつだろう。また、大作/人気作などについては、グラフィック含む品質についてファンの期待もついて回ることになる。開発者のGANBE氏は、グラフィックリソース増大・ゲームボリューム増大・そこにプログラミング対応の手間が乗算式にかかっての工数増についてコメント。さらにはユーザー意見の影響について言及。多少簡素な作りのグラフィックであっても、ユーザー批判が湧き上がるケースもあり、そうした点もゲーム開発上の判断に絡んでくるとの見解を示した。


プロジェクト管理も複雑化

GANBE氏は、人的要因による問題にも触れている。ゲームの開発工数が増大すれば、当然開発に携わるスタッフも増大しがちである。分業や外注化も進み、コミュニケーションコストは高まり、セクションごとの分断も激化するわけだ。同氏は、それぞれのセクションが各々の担当分野をもっとも重要と考えがちであり、ディレクターやプロデューサーなどがそこに適切に優先度をはっきり示せない場合“内戦”が起こるとしている。プロジェクト工数の肥大化が、人的リソースの管理コストにも波及し、さらには機能不全に至るケースがあるとの証言だ。

また、GANBE氏は「国内の現場では基本的に新兵器投入や作戦の練り直しがおこなわれず、人海戦術が取られるためにデスマーチや発売延期に繋がる」との見解を示している。マネージメント層での采配のミスや、適切でない解決策などの問題も、開発期間の増大に影響しているかもしれない。モデリングにも携わる制作者POLY-AN氏は「ゲーム業界以外でもよくあるパターン」としつつ、開発期間延長の「ループ」に陥っている可能性を指摘。開発計画では、往々にして当初の想定期限をオーバーする。次のプロジェクトでは、そのオーバー分を繰り込んで目標期限が立てられる。しかし、その期限もまたオーバーしては、オーバー分を次の計画に繰り込む……といったかたちで、どんどん期限が上乗せされているという考えだ。



「ゲーム」自体の変化も

一方で、ゲーム自体の変化を指摘する声もある。『アトリエ』シリーズや『ROBOTICS;NOTES』のモデリングに携わったまじかる☆しげぽん氏は「ゲームがサービス化していったのが一つの要因かなと思っている」とコメント。かつてはリリースがゴールであったゲーム作品が、サービス化して継続してコンテンツを提供できるものに変化したと指摘している。そのため、リソースの高品質化に加えて、サービスとして長く運用できるようゲームを設計する必要が発生。結果として、開発期間の伸長が生じていると分析した。昨今では、パッチ配信やDLCによる追加コンテンツ投入はもはや大型タイトルの基本となっている。リリース後まで視野に入れたゲーム基礎設計・開発には、相応の手間がかかるということだろう。

かつてセガでプロデューサーを務めていた、ゲーム研究者である下田紀之氏は、聞いた話であると前置きしつつも複数の可能性について言及。グラフィック工数の増大に加えて、ローカライズ版開発の変化やオンライン対応について語った。まず、かつてゲームのローカライズ版開発は別プロジェクトとして開発されていたところ、ゲーム本体と一緒に進行するようになったため、開発期間に影響を与えている可能性があるようだ。そして、昨今ではさまざまなゲームにオンライン対応機能が盛り込まれるようになり、ゲームモードやボリュームが増加。結果として開発期間が伸びているとの見方だ。さまざまなかたちに変化したゲームとゲーム開発は、多角的に開発期間に影響を与えていそうだ。

また、下田氏は自身の見解として組織の巨大化に伴う人員増加による影響に言及し、開発スタッフが適正人数を超えているのではと推測。また同氏は、「昔の方が長時間労働していたため、短期間で開発できた」との意見には懐疑的なようだ。近年のゲーム業界では、残業や長時間勤務を避け、健全な働き方を実現する動きも盛んだ。その結果、開発者の実働時間が減ったとすれば、開発期間が伸びる可能性はありそうだ。しかし下田氏は「働いただけ生産できる超人」が集まるプロジェクトならともかく、長時間労働では生産性が落ちる点を指摘。労働時間が短くなったとしても、必ずしも開発期間の伸長にはつながらないとの見解を示している。

大型ゲームタイトルの開発期間が伸びる傾向にある大まかな原因としては、「グラフィックのリッチ化」「ゲームの売り方やシステム自体の変化」などがあるのだろう。しかし、開発者たちが分析すると、さらに具体的な理由が解像度を高めて見えてくる。そこには、「単に手間がかかるようになった」だけでは片付けられない、多面的影響があるようだ。

ゲームが変わり、開発者が変わり、そしてユーザーも変化していく。しかし、いずれの立場の人々も、「開発が効率よく、いい結果で短く終わってほしい」とは思っているはずだ。次世代のゲーム体験に向けての技術開発も進み続けるなか、ゲームを面白く素早く作るためになにが重要なのか、開発者たちも自問自答しているのだろう。



※ The English version of this article is available here

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