「Steam Summer Sale」、検索汚染される。季節すら無視の、嘘つきなニセモノたち


PCゲーマーにとって風物詩となりつつあるSteam大型セール。PCゲーマーの増加にともない、同セールへの関心は国内でも年々高まっていることだろう。そんなセールへの注目を利用した狡猾なページが、Google検索結果などに顔を出している。

Steam大型セールは、季節や行事にあわせ、多数タイトルの安売りが繰り広げられる大イベントだ。AAA級タイトルから小規模インディーゲームまで値引きされ、気になっていたゲームや過去に懐具合で我慢したゲームをお得に手に入れる機会である。夏にはサマーセール、年末シーズンにはウィンターセールなどが毎年恒例になっており、セールだけでなく「いつ実施されるか」についても関心が寄せられている。たとえばGoogleなどで「Steam Summer Sale」といったワードで検索をかけることで、開催期間のヒントだけでも手に入れようとするユーザーは多いだろう。


ところが現在Googleにて「Steam Summer Sale」と検索すると奇妙な結果が出る。トップに躍り出るのはサマーセール情報ではなく、「サマーセール」の購入ページなのである。しかも、購入できる「サマーセール」は複数あるようなのだ。そもそも“イベントを購入できる”こと自体が変だ。これらはSteamイベントのページではなく、サマーセールを名乗るゲームやバンドルなのである。

まず、日本語環境でGoogle検索トップに躍り出るのはセールシム『Summer Sale』のSteamストアページだ。こちらは「お金を失うことなくセールが体験できる」作品であるといい、税込100円で販売されている。しかし、タイトルに反して説明文などでは「Winter Sale」を体験する作品と記述されている。本作のメインイメージの表記も「Winter Sale」だ。一体どういうことだろうか。


SteamDBに記録された変更履歴によれば、本作は2016年6月当時『Summer Sale』としてリリースされていたようだ。しかし、同年12月16日にはタイトルの「Summ」を「Wint」に差し替えるかたちで『Winter Sale』と改題。その2日後にはまた『Summer Sale』と名称を戻している。その意図は定かではないものの、検索での露出を狙うような動きにも見える。

筆者が実際に『Summer Sale』を購入してプレイしてみたところ、ゲーム内で開催されていたのは「ウィンターセール」だった。この時点で虚偽記載である。ただゲームプレイとしては、セールシミュレーションとの作品コンセプトはある程度実現されており、多数のミニゲームをゲーム内でカートに入れて購入・プレイ可能。当然、実際のSteamウォレット残高は減らず課金は発生しない。一方で、ゲームはどれも脱力の仕上がり。数字を計算するゲームでは、正しい答えを入力しても「は?(What?)」とすっとぼけられてやり直しだ。


ほかにも、ステージ1をクリアすると(演出上の)バグで終了するパズルアクションや、約2秒で死んで終わるだけのゾンビサバイバルゲームなどが無駄に多数存在。ただし、いかにもSteam風にデザインされたゲーム内ストアでは、各ゲームに意外なほど細かくテキストが設定されており、ジョークとしてはそれなりに面白い。本作がサマーセールに便乗したWeb検索露出を狙っていたとしても、売上目的というより、単なる悪ふざけの可能性が高そうだ。でも100円は返してほしい。


一方で、検索によるユーザー流入を真剣に狙っていそうなのが、ゲームバンドル「SUMMER SALE」である。こちらはHH-Gamesなるパブリッシャー/デベロッパーによるゲームバンドルで、500円前後のカジュアルなパズルゲームやアドベンチャーゲームなどが大量にバンドルされている。英語環境にて「Steam Summer Sale」とGoogle検索すると、該当のSteamページがトップに登場する。


同バンドルの収録タイトル数は74本に及び、元値は4万190円となっている。バンドルで購入すると62%オフとなり、1万5115円とお得に購入できるようだ。ただ、本バンドルから「SUMMER SALE」との関連性は見られない。。そもそも夏をテーマにした作品はバンドルされていないようだ。また、本バンドルが公開されたのは約3年前であり、SteamDBに残る記録では2019年11月に登場したと見られる。つまり冬に始まり、春夏秋冬ブッ通しのサマーセールを約3周しているわけだ。

さらに、このHH-Gamesは「Winter Sale Bundle 3」なるバンドルも提供している。こちらは約2年前にリリースされ、収録タイトルの多くも「SUMMER SALE」と被るようだ。ほかにも「LUNAR NEW YEAR BUNDLE」といった、セールのおこなわれがちな行事を意識したバンドルが存在。なお、HH-Gamesについて調べようと公式サイトを訪れるとコンテンツはなく、「Under Construction(制作中)」の文字があった。同社が単に行事に合わせてバンドルを配信して、変更を忘れている可能性もある。しかしその振る舞いを見ると、サマーセールのネームバリューに便乗して、検索ユーザー流入などを狙っているのではという疑念は拭えない。また、HH-GamesのほかにはК и Коなるパブリッシャーが、「Summer Sale 2021」バンドルを配信している。2022年版も出るのだろうか。


こうしたゲームやバンドルは、検索汚染の面では困ったノイズである。一方で、深刻な問題になる可能性は低いだろう。というのも、ユーザーが「SUMMER SALE」バンドルを見て「あっ、サマーセールだ、買わなきゃ!」と思い、1万5115円の分の見知らぬゲームを購入する被害も考えづらい。また、セールと紛らわしい名前はSteamの規約で明確に禁じられている様子もなく、これらは数年にわたって存在している。目撃したユーザーを、ただ少し困惑させるだけの存在なのだ。「誤解を招く存在を許していいのか」との疑問はあるものの、放置するしかないのも実情である。

なお、2022年の本物のSteamサマーセールは、以前公開されていた情報によれば6月23日から開催予定だ(関連記事)。その際には『Summer Sale』もサマーセール対象になるかもしれない。