Xbox Game Passの問題点を指摘する海外メディア記事に、マイクロソフトが反応し話題。同サービスの価値はどこにあるのか
マイクロソフトが提供しているサブスクリプションサービスXbox Game Pass。今年1月時点で2500万人が加入している人気サービスである。同サービスについてあるメディアが、その価値について疑問視する報道をしたところ、批判的な意見が続出。さらにマイクロソフトも反応し、大きな注目を集めているようだ。
Xbox Game Passは、現時点で400本近いゲームが、XboxやPCにて遊び放題になるサブスクリプションサービス。月額850/1100円で加入でき、上位プランではゲームストリーミングサービスXbox Cloud Gamingも利用可能。また、プランによってはEAのサブスクリプションサービスEA Playにもアクセスできる。
海外メディアKotakuは5月24日、「この数年盛り上がりをみせてきたXbox Game Passは、ここにきて燃え尽きた(After Years Of Hype, The Xbox Game Pass Burnout Is Here)」というタイトルの記事を投稿。内容はというと、Xbox Game Passから退会したという人がここ数日増えているようだとし、その背景を同メディアなりに探るものとなっている。
期待作の延期が議論の引き金に
退会するかどうかはともかく、Xbox Game Passの価値について議論する人は、確かに最近にわかに増えていたようだ。きっかけは、マイクロソフト傘下のBethesda Softworksが5月12日に、今年発売予定だったRPG『Starfield』とオープンワールドFPS『RedFall』を、共に2023年前半へと発売延期したことにある(関連記事)。
Xbox Game Passでは、すべてのファーストパーティタイトルが発売日から提供されることが大きな特徴であり、“売り”のひとつになっている。同サービスの価値を年単位で評価した場合、両作の発売延期によって、今年においては価値が下がったと感じる人もいるかもしれない。
前出のKotakuは、マイクロソフトのファーストパーティタイトルのポートフォリオはさらに“干上がった”とし、Xbox Game Passは期待されたとおりには展開されていないと指摘。また、月額15ドル(日本では1100円)のXbox Game Pass Ultimateに加入した場合、4か月間に2本のフルプライスタイトルをプレイしなければ元は取れないと試算。そして、AAAタイトルの欠如が同サービスの問題点だとする、他メディアの記者らの発言を引用した。
Xbox Game Pass公式がツッコミ
Kotakuの報道に対しては、同調する意見もみられるが、批判的な見方をする人が多いようだ。そんななかで、Xbox Game Passの公式Twitterアカウントも反応。Kotakuに対し「“AAAタイトルしか見えてない”って言ってないけど言ってるよね(抄訳)」と返信し、AAAタイトルのみで同サービスの価値を測る手法を遠回しに批判した。同アカウントは、ユーモアを交えたフランクなツイートが多いことで知られ、今回もそのスタンスは崩さず。そのツイートに対しては、現時点で約7000件のリツイートと約4万7000件のいいねが投じられている。これを受けて当時米国などでは、「Game Pass」や「Kotaku」といったワードがTwitterのトレンド入りするほど話題となった。
Xbox Game Pass公式アカウントのコメントに対しては、インディーゲームパブリッシャーのRaw Furyなどが好意的に反応。Xbox Game Passではインディーゲームも多数配信されており、配信日から提供されることも多い。マイクロソフトの報告によると、同サービス加入者は未加入者よりも多様なジャンルのゲームを発見しプレイする傾向にあり、ラインナップされたタイトルは平均で8倍以上のエンゲージメントを獲得しているという。メーカーとユーザー双方が、同サービスのメリットを享受している状況だといえる。特にインディーゲームのような小規模なタイトルは、そうした恩恵を大きく受けているようだ。
つまり、Xbox Game Passには多種多様なタイトルがラインナップされ、そして幅広くプレイされており、その価値はAAAタイトルのみでは測れないと、同公式アカウントは言いたいのだろう。同サービスでは、インディーゲームを含むサードパーティタイトルはコンスタントに追加されており、注目作も多い。
*Kotakuの当該記事を執筆したAri Notis氏は、トレンド入りしたことを受けて、Twitterに認証マークを要求するジョークを飛ばしている。
議論を呼んだ今回のKotakuの記事であるが、そのなかでは上述したようなサードパーティタイトルの価値や、隠れた良作との出会いなどにも触れている。全体的には、バランスを取りながらひとつの見方を報じた内容だといえる。ただ、刺激的な記事タイトルや、AAAタイトルのみで価値を測ろうとそろばんを弾いたことによって、反発を受けることとなったようだ。
もちろん、マイクロソフトのファーストパーティタイトルのリリースが、今年はこれまでやや寂しい状況にあることは確か。Xbox事業を率いるPhil Spencer氏は、ファンの期待に応える品質に仕上げることが第一だと述べているが、『Starfield』と『RedFall』の発売延期は、Xbox Game Passを収益の柱のひとつにしているマイクロソフトにとって、痛手であったことは間違いないだろう。これを受けて一旦サービスを退会する人も、なかにはいるかもしれない。
そうしたなか注目されるのは、6月に開催されるイベント「Xbox & Bethesda Games Showcase」だ。このなかでは、Xbox Game Passについての新情報も届けられる予定。マイクロソフトとしては、イベントでの発表によって同サービスへの加入者を増やし、また既存の加入者を繋ぎ止めたいはず。ユーザー側としても、その後押しとなる発表が飛び出すことを期待するところだ。同イベントは、日本時間の6月13日午前2時から開催予定。日本語配信もおこなわれる。