UE5「マトリックス」デモの街、おもちゃにされる。スーパーマンや怪獣が出て、超美麗大渋滞も起こる

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Epic Gamesが4月6日に正式リリースしたUnreal Engine 5(以下、UE5)。多数クリエイターたちが新技術に触れていくなか、UE5技術デモから派生したとあるアセットが、多くの人々にいじくり回されているようだ。


ゲーム制作はもとより、多くのコンピューターグラフィックス制作現場で利用されてきたUnreal Engine。UE5では新時代を見据え、詳細なアセットの軽快なレンダリングを実現する仮想化ジオメトリ・システム「Nanite」や、光の表現を助けるグローバル イルミネーションおよび反射システム「Lumen」などを盛り込み(関連記事)。昨年末に公開された、映画「マトリックス」をテーマにした公式テックデモ『The Matrix Awakens: An Unreal Engine 5 Experience』では、都市をまるごと再現した圧巻のグラフィックに、PS5/Xbox Series X|S実機で実際に触れることができた。

さらには、同テックデモにおけるアセットの大部分は「City Sample」プロジェクトとして無料公開されている。こちらはUE5における利用であれば、クリエイターたちが自由に“遊び場”として利用できる。さらに内容としては、上述のNaniteやLumenのほか多数のUE5新技術がぎっしり詰め込まれた、クリエイター垂涎の濃縮パッケージとなっているのだ。また、同プロジェクトには交通の再現システムなどのソースコードも同梱されており、驚きのをあげるユーザーも。「思う存分おもちゃにしてくれ」とばかりの大盤振る舞いになっている。


そして現在、実際に多くのクリエイターたちがCity Sampleを利用して楽しんでいるようだ。4月18日に公開された映像「Rush Hour」は、そのスケールの大きさと映像の美麗さから注目を集めた。こちらは、City Sampleの街を行き交う車の交通量をみっちりと高めて、さまざまな角度から映像にした作品だ。車たちが所狭しと行き交う様子はまるで血管を流れる血液のようで、いってしまえば「めちゃくちゃリアルな交通渋滞再現」なのに目が離せない美しさだ。なお、こちらはEA/DICEにてシニア・スクリーンショットキャプチャーアーティストを務めるPetri Levälahti氏による作品である。同氏のサイトでは街のスクリーンショットも公開されており、そのセンスが遺憾なく発揮されている。

ほかには、City Sampleの街の中をキャラクターに駆け回らせるユーザーや、あるいはスーパーマンの如くキャラを飛び回らせてみるクリエイターも出現(関連記事)。さらには、マントはためくスーパーマンの姿でビュンビュン飛び回れる作品をPC向けに配信するクリエイターもあらわれた。この実験作『A Superman Style Flight Experience (UE5)』は、開発者のTyson Butler-Boschma氏による作品である。こちらはファイルサイズが大きいためか、itch.ioにてURL入りのZipをダウンロードし、そちらを経由してゲームファイルをダウンロードする仕組み。また、かなりマシンパワーも必要となるようなので、スペックに自信のある方は試してみてはどうだろうか。

ほかにもCity Sampleの街はさまざまな形でおもちゃにされている。街中で銃撃戦ができるFPSゲームにしてみた者のほか、iPhoneの動きをトラッキングして利用し、仮想空間の街にスマートフォンを持ち込んだかのような映像を投稿したユーザーもいる。カメラワークのぎこちなさにより、リアルさがさらに増した印象になるのが不思議だ。また国内では、巨大怪獣を出現させ、怪獣映画ごっこをする開発者も登場している。

ほかには、漫画「ドラえもん」のひみつ道具「バイバイン」を適用した栗まんじゅうを街に放つ者もいるようだ。バイバインは、物体を2倍ずつに増殖させていくひみつ道具である。バイバインが適用された物品は、5分ごとに増殖する。その最終的な影響については諸説あるものの、増殖を放置すれば、たとえ栗まんじゅうでも速やかに人類は絶滅する。その初期の恐怖が、UE5の美麗な街にて再現されているわけだ。

そして、UE5とCity Sampleのリアルさを別媒体の作品に活かすクリエイターもいるようだ。「ソラニン」や「おやすみプンプン」などの作品で知られる、漫画家の浅野いにお氏である。同氏はCity Sampleのクオリティを絶賛し、作画への利用例をTwitterへ投稿している。UE5や街のクオリティは、ゲーム以外の分野のプロダクションにも活かされていくかもしれない。

UE5は、リリースされてまだ約2週間が経ったばかり。City Sampleという絶好の“おもちゃ”が提供されたことにより、多くのクリエイターが創造性を発揮しやすかった面もあるだろう。今後も多くの才能の手によって、UE5のポテンシャルが引き出されていくことに期待しよう。




※ The English version of this article is available here

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