『メタルギア』35周年偽サイトは『MGS2/3』DL版の再販求めるためだったとの主張。作者が「訴えないで」とコナミにお願い

 

先日、偽の『メタルギア』35周年サイトがコミュニティを騒がせた。いかにも同シリーズ権利元であるコナミデジタルエンタテインメント(以下、コナミ)公式を装ったサイトは、同社から「公式ではない」と明らかにされていた。精巧な偽サイトの背景には、再販の要望をアピールする意図があったようだ。

『メタルギア』諸作は、今年35周年を迎えるアクションゲームシリーズだ。1987年リリースのMSX版『メタルギア』を皮切りに、初代PlayStation向けの第3作目『メタルギアソリッド』から3Dグラフィックへと進歩している。現在KOJIMA PRODUCTIONSを率いるクリエイターである小島秀夫氏の代表作として、長らく愛されてきた。同シリーズの35周年の節目にあたって、あるサイトが先日話題を集めた。「メタルギアソリッド35周年記念サイト」である。しかし、これは偽物であった。


サイトはまず、ティザーサイトのようなシンプルな内容で公開されていた。ページ上部にはコナミのロゴがあり、シリーズを象徴する「!」マークと35周年の文字がコンテンツのほぼすべて。しかし、デザインは手が込んでいて、ドメイン名も「metalgear35th.com」といかにも本物らしい文字列で、真に迫った作りは多くのファンの注目を集めた。しかし4月1日には、コナミが「公式サイトではない」として、偽サイトであるとコメントしていた(GAME Watch)。

そして同日には、35周年サイトの方でも、「偽物である」と認める旨のメッセージが公開された。つまり、謎の35周年サイトは、ユーザーによる手の込んだエイプリルフールの嘘だったわけだ。また、同メッセージ公開と共に偽サイトは、『メタルギアソリッド』シリーズ登場キャラであるハル・エメリッヒのNFTを販売するという演出でコンテンツを公開している。

偽サイト上のメッセージによれば、同サイトは現在DL版が販売停止中の『METAL GEAR SOLID 2』および『METAL GEAR SOLID 3』リマスター作品 のDL版再販を求める意図で作られたようだ。作者はコナミに対して「どうか訴えないで」と伝えつつ、弁護士を雇う予算があるなら、上述の2作の再配信のために使ってほしいとコメント。ドメインの所有権は、コナミに無料で譲るとしている。


『METAL GEAR SOLID 2』および『METAL GEAR SOLID 3』の移植作品DL版は、昨年11月8日より販売が一時停止されている。コナミはその理由を、作中に利用されている資料映像の権利更新における遅延としていた(関連記事)。この措置はあくまで一時的とされていたものの、販売停止から約5か月が経つ現在でも再開の目処は立っていない。また、偽サイトのリンク類はすべて、この販売停止を伝える公式投稿ページに飛ぶようになっている。偽サイト公開の理由のひとつには、こうした現状の改善を求める意図があったようだ。

そして偽サイトには、コナミが最近展開するNFT(Non-Fungible Token/非代替性トークン)プロジェクトを皮肉る意味も込められているようだ。NFTとは、ブロックチェーン技術を用いてデジタルデータに所有権の証明を発行する仕組み、および所有権を発行されたデジタルデータのことだ。NFT自体は単なる技術ではあるものの、運用にまつわる環境負荷や、その投機性に目をつけた悪質な事業者などの存在から懸念も受けている。ゲーマーコミュニティからも疑念の目や反感を向けられやすいのがNFTなのだ。

コナミが実際に展開するNFT販売プロジェクト「KONAMI MEMORIAL NFT」では、第1弾として『悪魔城ドラキュラ』のNFTが販売された(関連記事)。そして偽サイトは、この「KONAMI MEMORIAL NFT」を細部まで再現したパロディとなっているのだ。

『メタルギア』35周年偽サイト
「KONAMI MEMORIAL NFT」公式サイト


一方で、偽サイトでは一部皮肉とも受け取れる記述が見られる。たとえば、Q&Aセクションでは質問の内容自体は本物のサイトに添っているものの、その回答はかなり突飛だ。「KONAMI MEMORIAL NFTとは何ですか?」とする質問の回答のなかでは、偽サイト版では「顧客は本質的に価値のないものでも喜んで買う」とNFTの価値に疑問を投じる言葉も。また、「NFTとは何ですか?」との質問には「いや、マジで知らない」と投げやりな回答だ。ほかにも「高額なJPEG画像をお楽しみ下さい」など、サイトの随所でNFTの価値を否定するような言葉が見られる。作者がNFTに、ひいてはコナミのNFT販売プロジェクトに否定的な見解をもっているのは間違いないだろう。

作者によるメッセージやページ内容を総合的に考慮すると、配信停止中作品の再配信の要求はもとより、コナミのマーケティング方針に対する批判の意図も見て取れる。『MGS』の再販やNFT販売をめぐってはそれぞれ意見はあるかと思われるが、公式を装ってユーザーを騙すような手法はフェアではないだろう。なお4月1日には、コナミは各メディアに対し、この偽サイトへの対応について検討中と伝えている。