Activision Blizzardの労働環境にまつわる訴訟のひとつが、正式に和解合意に至るようだ。ReutersやThe Washington Postなど海外メディアが伝えるところによれば、カリフォルニア地裁判事がActivision Blizzardと米政府機関EEOCの和解案を承認する意向を示した。これにより、Activision Blizzardは1800万米ドル(約22億円)を支払うこととなる。
Activision Blizzardは昨年7月より、社内でのセクハラや労働環境に起因する騒動の渦中にあった。発端となったのは、カリフォルニア州の行政機関であるDFEH(公正雇用住宅局)による訴訟だ。やがて騒動はActivision Blizzard元・現従業員による告発や大規模な抗議にも発展。さらにはマイクロソフトによる同社買収への合意なる、衝撃的な展開を迎えた。また、一連の騒動の間にはDFEHのみならず、株主や元従業員親族などがActivision Blizzardを相手取り訴訟を起こしている。今回、正式な和解合意が目前となったEEOC(雇用機会均等委員会)による訴えも、そのひとつだ。
Reutersなど海外メディアによれば、カリフォルニア地裁判事のDale Fischer氏は現地時間3月29日、オンライン上で実施された審問にてActivision BlizzardとEEOC間の和解案を承認する意向を示した。正式な判決はまだではあるものの、方針が決したかたちだ。Activision Blizzard側は1800万ドルを基金として支払い、被害を申し立てたスタッフへの賠償に充てていくとのこと。
また、この和解案は昨年9月の時点で公式に発表されていたものと見られる。そちらによれば、被害者に支払われなかった残金については、セクハラやジェンダー平等性にまつわる非営利団体などに寄付されるとのこと。また、Activision Blizzard社内環境改善への多様な取り組みも義務付けられているほか、中立的な外部コンサルタントの導入・監査なども盛り込まれている。
Activision Blizzard側の賠償金支払いが濃厚となったものの、端緒となる訴訟を起こしたDFEHはこの和解案を批判している。DFEHとEEOCはActivision Blizzardに求める賠償内容について対立しているためだ。また、DFEHはカリフォルニア州の行政機関であり、一方でEEOCは米連邦行政機関である。EEOCとActivision Blizzardの和解合意がなされてしまえば、DFEHのさらなる損害賠償請求に支障が出る懸念もあるわけだ。ほかにも、Activision Blizzard従業員の組合化に連携する、労働組合組織CWA(Communications Workers of America)も、昨年10月にEEOCに対して1800万ドルの賠償金額は不十分であるとの見解を伝えている。
一方で、今回のEEOCとの係争でActivision Blizzard側法律顧問を務めたElena Baca氏は、The Washington Postに対し「1800万ドルの賠償金は十分である」との見解を示している。また、和解承認については「Activision Blizzard側の勝利“とも見なせる(fair to characterize)”」としつつも、あくまでも被害者側に有利な結果となっていると強調した。
EEOCとの和解承認に向け、大詰めに入ったActivision Blizzard。しかし、1800万米ドルの賠償金が適正かどうか、さらなる議論を呼ぶだろう。和解案に不服を示すDFEHの動きも気になるところだ。そして、同社は未だほかの係争も抱えており、今年3月には自ら命を絶ったという元従業員の遺族によって訴訟を起こされている(関連記事)。Activision Blizzard再起の道のりは、まだ険しそうだ。