Activisionは2月18日、『Call of Duty』シリーズ向けのチート対策システム「RICOCHET Anti-Cheat」に関する進捗レポートを公開した。同システムがマッチ中に不正を検出した際の、ややユニークな対策についても明かされている。
「RICOCHET Anti-Cheat」は、Activisionが昨年10月に発表したチート対策システムだ。PCのカーネルレベルドライバを利用してのチート検出のほか、サーバー側での監視強化など、包括的かつ強力にチートを抑制する仕組みとなっている。RICOCHETは『Call of Duty: Vanguard』を皮切りに、基本プレイ無料のバトロワ作品『Call of Duty: Warzone』でも現在稼働している。
今回のActivisionおよび、RICOCHET開発・運営チームのレポートによれば、同システムは導入後に一定の成果を挙げているようだ。開発元内部データでは、『Call of Duty: Warzone』 へのRICOCHET導入からチート行為の報告が大幅に減少。ホリデー期間中のチート行為の発生を過去最低水準に抑えることに成功したそうだ。一方で、チートツール開発者側もRICOCHETを破る方法に腐心しており、多くは失敗に終わったものの一部にはチートを可能にした者もいるとのこと。そのため最近ではまたチート行為は増加傾向にあるものの、同チームは引き続き対策にあたっていくと伝えている。
そして、今回明らかにされたのが、チートツール利用者からデータを収集するためのややユニークな方法だ。RICOCHETはBAN処分だけに留まらない、段階的な手段でチーターに処罰を下しているという。そのひとつが、「ダメージシールド(Damage Shield)」と呼ばれる取り組みだ。このダメージシールドは、チート利用を検出した際に、そのプレイヤーがほかのプレイヤーにクリティカルダメージを与える力を無効化するシステムだという。すなわち、チート利用者だけ武器がすべて弱体化するような仕組みだ。
ダメージシールドは現在すでに稼働している。また、同システムは不正をおこなっていないユーザーに対して発動することはないとのこと。チートが検出された際のアンチチートの挙動としては、マッチからの追放やゲームの強制終了、およびアカウントの停止などが一般的だろう。そうせずあえてマッチを継続させる理由としては、チート利用者のデータを長時間収集して対策に活かす目論見もあるのだろう。チーターを弱めて泳がせ、今後の対策の糧とするわけだ。なお、実際にダメージシールドが効果を発揮していると思われる様子も、動画で投稿されている。ダメージシールドの餌食になったチーターの銃は、まるで豆鉄砲の如き威力になってしまうようだ。
*ダメージシールド発動とみられるシーンは動画2分頃より
また、RICOCHETチームはこうした「緩和処理(Mitigation)」と呼ばれる中間的な手法を複数用意しており、開発および実装を進めているとのこと。実際に過去数週間において複数の緩和処理を有効化したところ、チート報告数は減少を見たそうだ。同チームは引き続き対策にあたるという。
レポートは、『Call of Duty』シリーズのセキュリティポリシー変更についての報告で締められている。Activisionは今まで『Call of Duty: Vanguard』だけに適用されていたポリシーを、ほかのタイトルにも拡大。チート行為などの重度の違反や度重なる違反がおこなわれた場合、「すべてのアカウント」の永久停止処分となる場合があるとのこと。これは、シリーズを包括するActivisionアカウント(CoDアカウント)の停止なども視野に入るという意味合いだろう(関連記事)。また、IDやハードウェア情報の隠匿・偽装・難読化などにも永久利用禁止処分が下される可能性があるそうだ。違反者への処分は、『Call of Duty: Modern Warfare』『Call of Duty: Black Ops Cold War』『Call of Duty: Warzone』『Call of Duty: Vanguard』など現行タイトルのほか、今後のシリーズ作品でも同様に下されるとしている。
高い堅牢性を打ち出し、ファンの期待を背負って登場したRICOCHETアンチチート。今回のレポートでは、同システムが挙げた一定の成果とともに、独自の取り組みについても明かされた。また、『Call of Duty: Warzone』については、同シリーズ新作と共に新エンジンへ刷新されることも明らかにされている(関連記事)。今後もRICOCHETがチーターを苦しめてくれることを願う。