Blizzard元従業員から新たな告発。ゲーミング保守派なるコミュニティで、ベテランスタッフがさまざまな中傷コメントを投稿

 

Blizzard Entertainment元従業員のJessica Gonzalez氏は12月28日、とあるベテラン男性スタッフの不適切言動について明かした。同氏は自身のTwitter上で一連のチャットログを投稿。従業員のセンシティブな情報の共有や、同氏に対する中傷があったと主張している。


Activision Blizzardでは今年7月より、セクハラなど社内の差別問題に関する訴訟・告発が相次いでいた。抗議活動は加熱の一途を辿り、現在同社は現・元従業員はもとよりコミュニティやゲーム業界からも厳しい目を向けられる状況にある(関連記事)。Jessica Gonzalez氏は、従業員による抗議活動の主要メンバーだ。同社の改善を求める運動「ABetterABK」の発起人だ。同氏は現地時間12月10日、自身の健康を尊重するためBlizzardを辞職している(関連記事)。しかし同氏は、現在も抗議を続ける現従業員たちをサポートをしているほか、社内でのハラスメント行為などについてしばしば言及している。

今回Gonzalez氏が伝えたのは、「The Right Wing of Gaming(ゲーミング保守派)」なるDiscordサーバーの存在と、同サーバーにおける元Blizzard従業員による不適切発言のチャットログだ。同氏が公開したログには、「Nebu」なるハンドルネームの従業員がGonzalez氏に対する中傷のコメントや、会社への不満を吐露する様子が収められている。一連の発言は、2021年中旬にかけて投稿されたようだ。Gonzalez氏によれば、このNebuこそ元Blizzardベテラン従業員であるGeoff Fraizer氏であるという。Gonzalez氏は、Fraizer氏が同氏を「有害な人物である」として上層部に訴えようとしていたと主張している。

チャットログにおける、Fraizer氏とされる人物の発言を一部紹介する。まず、この人物は社内で多くの人員がBlizzardを離れていくことに強い不満を抱いていたようだ。「会社が同性愛者や障害者を“崇拝”するよう強いている」と主張してBlizzard社を批判しており、別の投稿では「Electronic Artsより最悪だ」として転職を仄めかしている。また、「俺がワクチン打ってない保守派だから、間抜けリベラル(Libtard)の上司3人が俺を追い出そうとしている」とも主張。インターンが女性中心であることに不満を述べつつ、それらの従業員たちについて「胸が大きい」などの身体的特徴や、性的指向についてあけすけに言及している。また、Gonzalez氏についても「精神障害だ」「会社を壊そうとしている」「みんなのことを政府にチクった」などの中傷コメントを投稿していたようだ。

https://twitter.com/_TechJess/status/1475589326272544768


また、Gonzalez氏によれば、このDiscordサーバーでは従業員のセンシティブな情報のリークや、インターン従業員を「モノ扱い(Objectify)」するような不適切な投稿がなされていたとのこと。また、自らではカミングアウトしていないトランスジェンダー従業員の性指向を暴露するような投稿など、多数の不適切なやりとりがおこなわれていたとしている。

https://twitter.com/_TechJess/status/1475594238746185729


一連の発言者とされるFraizer氏は、Blizzardの黎明期から約24年間に渡り勤め上げたベテランだ。同氏は1997年に、『StarCraft』のQA(品質保証)業務に参加。その後はBlizzard作品にまつわるウェブコンテンツの制作にあたるなど、マーケティングの要職を長期に渡り務めていた。自主退職か解雇かは定かでないものの、同氏は今年の9月にBlizzardを離れている。今回のGonzalez氏によるツイートは波紋を呼び、Fraizer氏がかつて運営していたウェブサイトでの差別的発言なども取り沙汰されるに至っている。また、別のBlizzard従業員からもGonzalez氏のツイートは真実だとするコメントが寄せられている。

今回のGonzalez氏の告発が事実ならば、Blizzardにおける有害な職場環境の一端がまた白日に晒されたことになる。クローズドな場での発言とはいえ、従業員のセンシティブな情報の共有や、偏見をもたらす中傷などは許されるべきではないだろう。Activision Blizzardでは、こうした告発や社内文章の流出が相次いでいる。同社が真に改善しすべての膿を吐き出すまで、抗議と告発の声は止まないだろう。