『真・女神転生Ⅴ』にて、「Kawaii Physics」プラグインが採用されていた。ナホビノの髪揺れのヒミツはあの人気技術

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クリエイターのおかずこと岡田和也氏は12月7日、『真・女神転生Ⅴ』にて同氏の手がけたUnreal Engine 4(UE4)向けプラグインが使われていると伝えた。採用されたのは、揺れを表現する疑似物理演算プラグイン「Kawaii Physics」だ。抜擢に繋がった機能性の背景には、かわいさへのこだわりがあったようだ。


『真・女神転生Ⅴ』は、アトラスの人気RPG『真・女神転生』シリーズのナンバリング最新作。主人公は、都内に住む高校生の少年だ。彼は事故をきっかけに、崩壊した東京を舞台とした神と悪魔たちの戦いに身を投じることとなる。主人公は物語のなかで、神話的存在に匹敵する力をもつ超常の存在「ナホビノ」となるのだ。

シリーズ最新作『真・女神転生Ⅴ』では過去作と比べてグラフィックが大幅に進化した。ゲームエンジンとしてはUnreal Engine 4が採用され、進化した映像表現で退廃した東京が描かれる。そして、そうした進化した表現は、ナホビノと化した主人公の青い長髪にも適用されている。ナホビノの髪は、ダッシュやジャンプなどのアクションのたびに、動きに合わせて美しくなびくのだ。本作プレイ中は主人公の後ろ姿を眺める時間が多いのもあり、印象に残りやすいだろう。


この髪の毛の動きは、どうやら「Kawaii Physics」なるUE4向けの疑似物理プラグインを使って実装されているようだ。ゲームのキャラクターにはしばしば、動きに合わせて揺れる髪の毛やスカート、あるいは胸部などのパーツが付随する。そうしたパーツを自然かつ効果的に揺らすために、さまざまな技術や工夫が用いられているのだ。時には、職人技のようなパラメータ調整が求められる場合もある。「Kawaii Physics」は、そうした揺れを「かんたんに」「かわいく」実装するためのプラグインなのだ。

「Kawaii Physics」を開発したのは、国内開発者の岡田和也(おかず)氏だ。同氏はカプコンを経て2016年にEpic Games Japanに入社し、サポートエンジニアを務めている。業務においてはUE4利用企業へのサポートなどに携わるほか、講演会などにも登壇している。プライベートでも開発コミュニティとの交流に積極的で、SNS上ではUE4関連の投稿や情報拡散に余念がない。そのほか個人でゲームを開発するなど個人活動にも精力的なわけだ。そんな同氏は12月7日、自身のTwitterアカウント上にて『真・女神転生Ⅴ』での「Kawaii Physics」採用について報告。主人公の長髪の制御に利用されているようだと伝えた。


「Kawaii Physics」は、岡田氏の個人活動の一環として開発されたもの。2019年7月頃にリリースされた。前述の通り、揺れるパーツのモーションを自然に制御する実装は、一筋縄ではいかない。特にアクション要素のある作品においては、モーション付けの工数の面から物理演算に頼らざるを得ない。一方で、3Dグラフィック採用作品で、不自然な髪の毛や布の揺れを目撃した経験のある方も多いのではないだろうか。具体的には、本来あるべき髪の毛の重みや剛性を無視して「荒ぶる」ような挙動などだ。かといって、揺れを落ち着かせすぎても逆に不自然になったり、視覚効果としていまいちになってしまう。そうした揺れ表現を改善するためのプラグインである。

「Kawaii Physics」は実装の簡便さについても気を配っている。制御用パラメータを絞ることにより、UE4標準の物理演算機能、AnimDynamicsよりも簡便なセットアップが可能とのこと。また、モデルのいわば「骨格」となるボーンの長さを維持する設計となっており、異常な伸長などの現象を防いでくれる。ほかには、コリジョン(衝突判定)の追加にも対応。シンプルなアルゴリズムの採用で、計算負荷が標準の物理演算システムよりも軽減されているとのこと。実用性に気を配ったこのプラグインは、自由度の高いオープンソースライセンス(MITライセンス)のもとで公開されている。つまり、ゲーム開発者たちは著作者とライセンスを表示さえすれば、「Kawaii Physics」を自由に利用できるのだ。

「Kawaii Physics」のGitHubページでは、ほかの物理演算手法との比較GIF動画が掲載されている。調整にもよるものの、「Kawaii Physics」では不自然さを廃しつつ、アニメ的にかわいく髪の毛が揺れている印象だ。『真・女神転生Ⅴ』での主人公の長髪も、荒ぶらずかつ流麗に動いている印象だ。同プラグインが『真・女神転生Ⅴ』で採用されたのは、岡田氏が目指した「かわいく」「かんたんに」揺らす機能性が評価された結果だろう。


「Kawaii Physics」は採用例も多いようで、本作のみならず『SCARLET NEXUS』や『BLUE PROTOCOL』、『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER』や『聖剣伝説 3 トライアルズ オブ マナ』など名だたるタイトルにて採用されている。そのほか個人プロジェクトでも数多く使われており、個人開発ながら数多くの商用プロジェクトで使われる名プラグインなのである。

「Kawaii Physics」実装においては、バンダイナムコゲームスの『アイドルマスター』作品における揺れ表現のノウハウを参考にしたそうだ。こうした知見や「かわいい」へのこだわりも、プラグインの機能性に繋がったのだろう。岡田氏は同プラグインをUE5に動かすノウハウなども共有している。しかしながら、プロジェクトごとのサポートなどはおこなわれていないので留意したいところ。


岡田和也氏は現在、個人サークル「ぼっち猫」としてアクションゲーム『双腕のソルダート』を開発中だ。対応プラットフォームはPC(Steam)で、2022年リリース予定。こちらの作品でも、主人公の髪の毛など3Dグラフィックでの豊富な「揺れ」が表現されている。岡田氏が同作でどのようなこだわりを見せてくれるのか、楽しみにしたい。また「Kawaii Physics」の今後の採用例についても、注目が集まるところだ。




※ The English version of this article is available here

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