ゲーム開発者Jessica Gonzalez氏は、Activision Blizzardを退職すると発表した。Gonzalez氏は、
Activision Blizzardの性差別問題などの抗議を推し進めていた人物。自らの健康を理由に、同社と袖を分かつことを発表した。
Activision Blizzardについては今年7月より、社内での性差別問題に起因する訴訟や告発が相次いでいる。先ごろには「同社CEOであるBobby Kotick氏が問題を知りながら対応しなかった」とする告発が注目を浴び、抗議の動きが加熱。関係者などからさらなる背景が明かされるに至った(関連記事)。また11月にはデモなども実施され、Kotick氏の辞職を求める声もあがっている。
辞職を発表したJessica Gonzalez氏は、Blizzard Entertainmentでシニアテストアナリストを務めていた。同氏は現地時間12月10日をもって同社を離れ、今後はファイナンス・テクノロジー(金融技術)企業にて勤務するという。同氏は自身のTwitterアカウントに、社内向けに送られたと思われる辞職を告げる声明を投稿。社内に残る“良き人々”への感謝など、同社で抱いた思いを綴っている。辞職した理由については、自身の精神的健康の為としている。同氏は、会社を変えるための戦いにより、精神的なダメージを負ったとも伝えている。
Gonzalez氏は、Activision BlizzardのCEOであるBobby Kotick氏にもリプライにて意見を直接投じている。同氏はKotick氏の無責任な姿勢が、人材流出を招きゲーム開発にも悪影響を与えると指摘した。そして、問題に対処する時間は十分にあったにも関わらず、現在の状況を招いたと批判。Kotick氏が退かない限り、状況は変わらないだろうとの言葉を突きつけた。
Gonzalez氏は、従業員による抗議活動の主要メンバーだったようだ。海外メディアAxiosが、同氏の抗議活動について伝えている。従業員によるKotick氏辞職を求める署名の序盤には、Gonzalez氏の名がある。位置としては、抗議運動のほかの主要メンバーであるValentine Powell氏の次だ。なお、署名には現在1864人の従業員が参加している。また、11月の抗議デモが迅速に実施された背景には、Gonzalez氏の尽力があったとの従業員証言も紹介されている。上述のPowell氏もGonzalez氏について「社の文化的支柱」であり、従業員たちの声となってくれたとAxiosに語っている。
Activision Blizzardに厳しい目を向けるのは、従業員やコミュニティだけではない。各ゲーム企業も社内文章などで本件に言及している。例として、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のCEOであるJim Ryan氏や、米国任天堂社長のDoug Bowser氏、そしてマイクロソフトのXbox事業を率いるPhil Spencer氏など各社の重要人物が一連の騒動についてコメント。落胆や失望を伝えつつ、ハラスメントに厳しい対応を取っていく旨を従業員に対して伝えたと報じられた。また、Spencer氏については「Activision Blizzardとの関係性を見直す」とも伝えている(Bloomberg)。いずれも公への声明ではなく、あくまでも各社従業員向けの内部文章が報じられている段階ではある。しかしActivision Blizzardが、コミュニティや従業員のみならず企業からも厳しい目を向けられているのは確かだろう。
一方で、Activision Blizzard側は職場環境を改善する委員会の新設を発表。Kotick氏続投のもと、改善に動くとしている。また、Kotick氏については「もしも問題に素早く処置できなければ、辞職を考える」とBlizzard重役に語ったとの報道がなされている(The Wall Street Journal)。しかしいずれの対応も、従業員やコミュニティからの不信感を拭うには至っていないようだ。
Gonzalez氏による今回の発表には、労いと感謝の声が寄せられている。また、同氏はAxiousに対して、以降もActivision Blizzard従業員をサポートしていく意思を語っている。同氏の声明からは、従業員たちにかかる精神的重圧も垣間見えた。従業員らの団結が功を奏し、残されたメンバーがゲーム開発に安心して専念できる日が来ることを祈りたい。