AmazonのMMO『New World』“お金配りすぎ”でロールバック。大金を得たユーザーが爆買いに走る
AmazonのMMO『New World』にて、先ごろ欧州向けサーバーのロールバックが実施された。理由は、不具合の補償としてのゲーム内通貨を“配布しすぎた”ためだ。
『New World』は、Amazon Games Orange Countyが開発し、今年9月29日に配信開始したMMORPGだ。本作は一時90万人を超える同時接続者数を集め華々しいデビューを飾ったが、後に失速。現在でも週末のピーク時には約20万人が遊ぶなど多数ユーザーがプレイしているものの、人口流出傾向は続いている(SteamDB)。その理由のひとつとして、大規模な不具合などが度重なっている点が挙げられるだろう。不具合に対する対応についてもプレイヤーたちから不満の声が上がっている。注目作でありながら、多くのプレイヤーから懸念も受けているタイトルなのだ。
そんな『New World』にて、今回また騒動が起こることとなった。欧州向けのEU Centralリージョンにてロールバックが実施されたのだ。ロールバックは、プレイヤーの進捗やアイテムのやりとりなどゲーム内の状態を過去に巻き戻す措置だ。MMO作品ではしばしば見られるものの、一般的には極力避けられる施策である。問題に対してほかに手の打ちようがないときの“緊急手段”的に使われる場合が多い。
ロールバックの発端となったのは、今月半ばに発生した家具複製にまつわる騒動だった。まず、本作は一般的なNPC商人などが存在しない。アイテムを売るのも買うのもユーザーという経済システムを導入しているのだ。そして、本作には自分の家を所有するハウジング要素があり、家具などを設置できる。なかには、バフ効果をもたらすレアな家具もあり、プレイヤー間では高額で取引されていた。そうした高額家具類がバグによって複製できてしまうことが発覚し、ゲーム内の経済が崩壊寸前に陥ったのだ。運営側は緊急措置として、ゲーム内の一切の経済システムを停止するに至った(関連記事)。
しかし、プレイヤーやCompany(ギルド相当の組織)の収入が途絶える一方で、ハウジングにかかる税などシステム上の「固有資産税」は容赦なく徴収されていた。稼げないのに税金は取られる状況に、破産の危機を訴えるプレイヤーなども現れていたのだ。運営側も補償について動いており、現地時間11月24日にはハウジング税の一時的な90%引き下げを実行。Companyの収入についても上方修正されるなどの対策が取られた。また、今後も騒動にまつわる金銭被害を受けたユーザーへの補償をおこなっていくと発表していた。
そして同日夜、事件は起きた。補償金を配りすぎたのだ。本作でのゲーム内通貨はCoinと呼ばれる。ユーザーの報告によれば、約6万Coinから30万Coin以上の高額が多数ユーザーに突如として付与された。本作では最上位のハウジングでも、毎週の税の支払いは高くて数千Coin。補償にしても行き過ぎな、かなりの大金が舞い込んだことになる。
運営側はEU Centralリージョンについて緊急メンテナンスを発表。直後にサーバーのロールバックを実施すると告げた。さらには、本作ゲームディレクターのScot Lane氏がフォーラムに登場し、謝罪と事情説明を投稿している。Lane氏は今回ロールバックに至った理由について、配ったCoinが広範囲に影響を及ぼしていたと説明。大金を手にしたユーザーが片っ端からアイテムを爆買いするなどの現象が起きていたとのことで、副次的な影響が広まりすぎており苦渋の決断となったそうだ。また、ロールバック直前にサーバー移転をおこなったプレイヤーがプレイ不能になる不具合が生じてしまったとのことで、こちらも順次対応を表明している。
海外の本作コミュニティ/r/newworldgameでは、度重なる不具合や対応のミスに批難の声があがっている。一方で、もはや混沌とした状況に慣れてしまったユーザーも散見される。上述のメンテナンスを伝えるスレッドでは、「今回のロールバックで何がブッ壊れるのか、ワクワクする」と不具合を楽しむ姿勢を示すユーザーも現れた。騒動続きの『New World』は、こうした猛者たちに支えられていくのだろう。もし将来的に運営が安定することがあれば、一連の騒動も笑い話になるかもしれない。
『New World』はSteamにて現在配信中。