『フォートナイト』中国版サービス終了へ。背景には、中国ゲーム界を取り巻く特殊な事情か
『フォートナイト』中国版のサービスが終了するようだ。中国版公式サイトに、告知文が記載されている。同作は中国ではテスト版として運用されていたが、11月1日に新規ユーザー登録受付を終了し、11月15日をもってゲームサーバーが閉じられゲームにログインできなくなる。欧米や日本では大人気の同作の中国での展開は、ひとまず幕が閉じられるようだ。
『フォートナイト』は、Epic Gamesが開発するシューターだ。現在では運営型のバトルロイヤルゲームとして、全世界で数多くのユーザーに親しまれている。基本的には、欧米や日本の『フォートナイト』の内容は同じ。しかし中国版には、同国向けにさまざまな変更がなされているようだ。海外有志がFortnite Wikiに提供した情報によれば、変更は一部スキンのデザインをはじめとして、ゲームシステムにまで及ぶ。
デザイン面では、頭蓋骨を思わせるいわゆるドクロの意匠が軒並み変更となっているようだ。例として、全体的に骸骨がモチーフとなっているスカルトルーパーは、時節に関係なくハロウィン風のカボチャ頭になっているようだ。ほかにも、「ブラックハート」スキン上位ステージのドクロマスクは、もやもやとして見通せないエフェクトに差し替えられている。
そしてゲームシステム面では、1マッチの時間短縮や勝利条件の緩和が図られているようだ。上述のWikiによれば、マッチで大多数の相手を撃破したプレイヤーには、最後まで生き残らなくても優勝にあたる「ビクトリーロイヤル」を選択する権利が与えられるという。また、マッチは20分経過時点で終了する仕組みになっており、生き残ったすべてのプレイヤーにビクトリーロイヤルが与えられるようになっている。一方で、プレイ時間を制限する仕組みも導入されている。平日ではプレイ時間が90分を超えるとXPが得られなくなり、学習を促すメッセージが表示されるそうだ。前述のスキンの変更とシステムの改変は、中国マーケットの規制や性質に適応するための変更だと見られる。
今回、『フォートナイト』中国版がサービス終了になった一因と考えられるのが、中国におけるゲーム規制だ。同国ではゲームの発売に対して厳しい規制が課せられており、有料ゲームを提供する事業者は中国政府から発行されるゲームライセンスの承認が必要だ。中国版『フォートナイト』については、ゲームライセンスをいまだに取得できておらず、少額課金要素はない。定期的にゲーム内通貨であるV-Bucksが手に入る仕組みになっていた。ほかのマネタイズ要素についても導入されていない。つまり、収益が得られていない状態である。運営のかたわら、ゲームライセンスの承認を得ようとしていたのだろう。
また、単純にサービスを続けられるほど人気がなかったとの指摘も見られる。中国のバトロワゲームとしては現在、『PUBG MOBILE』が絶大な人気を博している。同作は中国国内で『PUBG MOBILE』を提供していたものの、後に取り下げ。そして、中国版として『和平精英 Game for Peace』をゲームライセンス取得のもとでリリース、同国にて人気を博している(関連記事)。ゲームライセンスを得ているため、こちらでは少額課金などマネタイズ要素も盛り込まれている。人気でも劣り、マネタイズもできない『フォートナイト』は非常に厳しい立場に立たされていたわけだ。
今回の『フォートナイト』の中国撤退については、ほかの理由をあげるユーザーもいる。『和平精英 Game for Peace』を提供する中国ゲーム会社テンセントは、Epic Gamesの主要株主でもあるのだ。海外掲示板Redditでは、中国人を名乗るユーザーが「『フォートナイト』の中国での不人気を受けて、テンセントが『和平精英 Game for Peace』をメインに据えて『フォートナイト』を撤退させる判断をしたのではないか」と意見している。
いずれにせよ、真相は定かではない。中国マーケットの事情もあってか、今回中国版をサービス終了することになった『フォートナイト』。国外では押しも押されぬ人気タイトルが苦戦する様子を見ると、中国のマーケットの特殊さが浮き彫りになるようだ。今後再起をかけるのか、それとも同国を去ってしまうのかは興味深い点だ。