FIFAが「権利を独り占めするな」なる旨の声明を発表。サッカーゲーム『FIFA』を手がけるEAがターゲットか
国際サッカー連盟FIFAは現地時間10月15日、ゲームおよびeスポーツに対する同団体の方針についての声明を発表した。先ごろにはElectronic Arts(以下、EA)が、サッカーゲーム『FIFA』シリーズの名称変更を示唆しており、EAの動きに応じての声明と見られる。
FIFA(Fédération Internationale de Football Association)は各大陸のサッカー連盟を束ねる組織。EAはFIFAとの契約のもと同じ名を冠したサッカーゲーム『FIFA』シリーズを1993年より展開しており、長きにわたりサッカーゲームファンに親しまれてきた。しかし先ごろ、EAは『FIFA』シリーズの名称変更を検討している旨を表明している。また、名称変更に向かっている理由は「EAとFIFAの間で、権利と契約料について交渉が難航しているため」だと、米一般誌The New York Timesが報じていた。この報道によれば、FIFAは交渉のなかでEAに対して現在の契約の2倍、10億米ドル(約1100億円) を超える契約料を要求したという(関連記事)。
そして、今回FIFAが出した声明は、EAに対する“意趣返し”とも取れる。FIFAは声明のなかでサッカーに関するゲームやeスポーツの将来性について触れ、「複数の事業者によって取り組まれるべき分野なのは明白です」と伝えた。EAは現在のFIFAとの契約期間において、FIFAの名称利用権およびワールドカップに関する権利を独占的に有している。すなわち、「ひとつの事業者のみが権利を独占すべきでない」という主張は、EAを意識したものと解釈できる。
続けてFIFAは「開発者・投資家・アナリストなどの業界関係者と協力し、ゲームやeスポーツなどインタラクティブ・エンターテインメント分野での展望を築き上げていく」としている。また、先ごろ立ち上げたeスポーツプラットフォームFIFAeのもとで、継続的にトーナメントを開催することを表明。サッカーワールドカップおよび女子ワールドカップを、新しいゲームやeスポーツを提供するためのプラットフォームとしても活用していくと述べた。やや漠然とした声明ながら、FIFA自身が主導してゲームおよびeスポーツ分野に切り込んでいく意図が感じられる。
EAとFIFAの間の軋轢は急速に顕在化しつつある。その背景には、発展を続けるゲームおよびeスポーツ分野への関心の高まりがあるのかもしれない。同ジャンルでは『FIFA』の対抗馬であるコナミの人気サッカーゲーム『ウイニングイレブン』も、今年に入りタイトルブランドを『eFootball』と改めている。にわかに動きを強めるサッカーゲーム業界からは、大きなパラダイムシフトの気配も感じられる。