謎のゲーム『Girl Story』に『ミリシタ』からのアセット盗用疑惑が浮上。NFT素材にされ、目の死んだアイドルたち

現在、国内SNS上でNFTゲーム『Girl Story』がにわかに話題となっている。とはいえ、ポジティブな話題ではない。同作がバンダイナムコエンターテインメント作品『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』からアセットを盗用しているという強い疑いがかけられているのだ。

現在、国内SNS上でNFTゲーム『Girl Story』がにわかに話題となっている。とはいえ、ポジティブな話題ではない。同作がバンダイナムコエンターテインメント作品『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ(通称、ミリシタ)』などからアセットを盗用しているという強い疑いがかけられているのだ。

https://twitter.com/GirlStoryBSC/status/1447813764485582852


『Girl Story』は、公式サイトによれば「Binance Smart Chainをベースにしたカジュアルアニメゲーム」だ。内容としては、プレイヤーがNFT化されたアニメ調の女の子キャラクターを所有し、レベルを上げトレーニングやデイリーミッションをこなすという内容のようだ。ふんわりとした説明ながら、ソーシャルゲーム的なゲームプレイを予期させる。しかし目を引くのは「Binance Smart Chain」や「NFT」といった用語だ。本作がどのようなコンセプトの作品と見られるのか、これらの用語を紐解きつつ解説する。

まず、NFT(Non-Fungible Token/非代替性トークン)について。NFTは、本来複製可能なデジタルデータに対して所有権を保証する仕組みだ。簡単にいえば、デジタルなアート作品やデータに対し、物理的な芸術作品の所蔵および証書のような所有権を付与する技術。本作におけるNFTは女性キャラたちであり、こうした技術によって唯一無二のキャラを“保有”できるというコンセプトのようだ。

NFTはアプリケーションプラットフォームである「イーサリアム」をベースに実装されることが多い。『Girl Story』が用いているというBinance Smart Chainは暗号通貨取引所Binanceが公開したもので、イーサリアム上で開発されたアプリケーションとの互換性があるプラットフォームだ。本作はBinance Smart ChainをベースとしたNFT技術により、女性キャラの保有および取引ができるという作品なのだ。


そして、今回問題になっているのがこの女性キャラたちの出自だ。主に国内Twitterを中心として、『Girl Story』の女性キャラのアセットが『ミリシタ』などから盗用されたものだという指摘が続出しているのだ。実際に『Girl Story』公式サイトやTwitterアカウントの画像を確認してみると、たしかに極めて似通ったキャラクターアセットが利用されている様子がわかる。


筆者が実際に『Girl Story』および『ミリシタ』のアセットを見比べてみたところ、両者には数多くの共通点が見いだせた。まず、『Girl Story』公式Twitterアカウントが掲載している女性キャラたちの画像だ。告知のほか、同作公式サイトでもキービジュアルのように利用されているギターを持つ少女の衣装については、『ミリシタ』登場キャラクターであるジュリアが着用していたもののようだ。形から色合い、特徴的なリボンの意匠まで酷似しており、キャラクターモデル盗用を強く疑わせる。一方、首から上は横山奈緒と見られるキャラクターに差し替えられている。ほかの衣装やキャラについても同定を試みたが、一致を見せるものがあまりにも多く、枚挙にいとまがないため割愛する。いずれの3Dモデルも、シェーダーの実装がいまいちなのか、全員目に生気がなく、居るべきでない場所に連れてこられたような悲哀を感じる。

【UPDATE 2021/10/14 11:40】
衣装について、読者からの指摘に伴い、記述を変更・追記。あわせて画像を差し替えました。


また、『Girl Story』公式サイト上のアセットにも『ミリシタ』公式アセットとの一致が見られた。『Girl Story』のキャラクターカードのような画像では、右手を差し伸べるポーズを取る女の子の姿が見られる。この画像は、『ミリシタ』公式サイトで見られる最上静香の画像と極めて似ている。念の為画像編集ソフトにて比較検討してみたところ、縮尺を除いて相違点が見当たらなかった。流用の有無については公式見解を待つしかないものの、少なくとも『Girl Story』側が権利元に許諾を得ていなければ、何らかの権利侵害の責は免れないと考えられる。


『Girl Story』はTwitterのほか公式サイトやメッセージングアプリTelegram、そしてReddit・Discord・YouTubeといったチャネルを通じて広報をおこなっている。筆者がそれぞれを確認したところ、いずれも本格稼働しているのは9月下旬から10月にかけてのようだ。また、肝心のゲームについてはPCおよびiOS/Android向けいずれもまだリリースされていない。

にもかかわらず、『Girl Story』公式Twitterアカウントは記事執筆時点で1.5万フォロワーを有している。また、同アカウントのツイートには「Great project(すばらしいプロジェクトだ)」と口をそろえるリプライや引用リツイートが多数寄せられている。英語圏ユーザーからも「『ミリシタ』からアセットを盗用している」という指摘が出ているものの、『Girl Story』公式Twitterアカウントはこのリプライを隠すように非表示にしている。また、批判ツイートを避けるためか、ほとんどのツイートにリプライ制限をかけているのも不審な点のひとつだ。

本作公式サイトではロードマップとして、今月からゲームのオープンベータを開始しIDO(分散型取引所利用による資金調達)をおこなうと掲示されている。しかし、アセットの酷似が発覚・指摘されたこの状況でリリースできるのか。リリースされた場合にいったい何が起きるのか。今後の展開に懸念を抱かせる。

NFT技術の利用は先ごろから盛んさを増している。NFTアートが高額で取引されたという報道などを目にしたことのある読者も多いのではないだろうか。ゲーム分野にNFT技術を盛り込もうという動きも活発で、キャラクターやアバターをNFT化する作品も散見される。一方で9月には、アセット流用を指摘されたNFTゲーム『Epic Hero Battles』が急遽アセットを取り下げSNSアカウントを削除する出来事もあった(関連記事)。

NFTはあくまでも単なる技術に過ぎない。どう扱うかは、使い手次第。しかし、NFTのもつ投機的な側面に突き動かされた一部活動者による行動は、技術に対する心証まで悪化させかねないものだ。『Girl Story』公式サイトには開発・運営元への直接の連絡先も記載されておらず、問い合わせや取材を拒絶しているようにも見える。『ミリシタ』酷似アセットを抱えた『Girl Story』は今後どうなるのか、また権利侵害を受けていると思しきバンダイナムコエンターテインメントは対処に動くのか、展開を注視したい。


* The English translated version of this article is available here

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

記事本文: 1856