メンタリストDaiGo氏の騒動を受け、とあるゲーム開発者がとばっちりを受ける。新作ゲームに込めた想いに思わぬ影響

SNS上などで特定人物に批判が殺到する際に、しばしば起こってしまうのが「人違い」だ。今回、ある国内ゲームクリエイターが「とばっちり対策」を迫られることになってしまったようだ。

SNS上などで特定人物に批判が殺到する際に、しばしば起こってしまうのが「人違い」だ。批難の対象とは無関係の同名の人物が“とばっちり”を受けるケースは多く、対策が必要になる場合もある。今回、ある国内ゲームクリエイターが「とばっちり対策」を迫られることになってしまったようだ。

すべての発端は、メンタリストDaiGo氏による発言だった。一時期、テレビにおいて人間心理を突いたパフォーマンスなどで人気を博した同氏は記事執筆現在、チャンネル登録者数約246万人を誇る人気YouTuberとなっている。オンラインサロンとしてD-Labなども開いており、インフルエンサーとして手広くビジネスを展開中だ。問題視されたのは、同氏が8月7日に配信したYouTube動画において述べた「ホームレスや生活保護受給者などの命は(同氏にとって)軽い」という旨の意見だ。この発言は「優生思想やヘイトクライムに繋がりうる」として、SNSユーザーや国内メディア、DaiGo氏の実弟である松丸亮吾氏などの著名人からも、大きな批判を受けることとなった。

この騒動を受けて、Twitter上では「DaiGo」「ホームレス」といったワードが現在トレンドに入っている。批判が過熱し続ける状況で心配になるのは、無関係な「ダイゴ」さんへのとばっちりだ。実際に、「メンタリストでない」とTwitter上で名前に明記し、別人である旨を明白にする対策を取る人物もあらわれた。それが、ゲームクリエイターのDaigo氏だ。

https://twitter.com/daigo/status/1426004238547578884


Daigo氏は、国内ゲームデベロッパーOdencatの代表だ。同スタジオは『ねずみバスターズ!』や『くまのレストラン』などのモバイル向けアドベンチャーゲームを展開している。『くまのレストラン』は、今年6月17日にはNintendo Switch版がリリースされており、昨日8月12日にはSteamでの発売が発表されていた。当然、代表であるDaigo氏はメンタリストのDaiGo氏とは無関係だ。新進気鋭のクリエイターであるが、名前がかぶったことにより、ややとばっちりを受けているようだ。実際にどんな影響が出ているのか。Daigo氏に話を訊いてみた。

まず、「人違いのDMなどが来ているのでは」という懸念については、「いえ、そんなにきてはいません」との回答をいただいた。どうやら今のところ、さほど被害は発生していないようだ。ただ、Daigo氏をDaiGo氏と誤認したかのようなツイートが発生していたため、対策としてTwitter上での名前の変更(「メンタリストでない」との明記)と、固定ツイートでの「人違い」明確化に至ったそうだ。Daigo氏のTwitterアカウントIDは「@daigo」というものであり、間違えが発生する可能性は高い。懸念を抱くのも当然のことだろう。

また、同氏は以前から人違いのツイートやリプライなどを受け取ることがあったそうだ。Daigo氏によれば「ウィッシュのDAIGOさんと勘違い」されることがあったという。こちらはミュージシャン・タレントで、元内閣総理大臣の竹下登さんを祖父に持つDAIGO氏のことだ。Daigo氏は、DAIGO氏に向けたファンからのメンションを受け取ることもあり、「紛らわしい」として心ないことを言われるなどの出来事もあったという。どうやら人違いの苦労は以前から存在したようだ。

現在のところ、Daigo氏の活動や精神面には大きな支障は出ていないようだ。しかし同氏は「こんなことになるとは想定していなかったので、なにか変なことにならないか少し不安です」として、今後への懸念が語られた。現状でも、一部ユーザーによる同氏をメンタリストDaiGo氏だと誤認したリプライが届いており、騒動がさらに過熱すれば同氏がさらなる被害を受けることは十分考えられる。さらに、9月にSteam版リリースを控えている『くまのレストラン』には、とある描写があり、その点も同氏にとって懸念材料になっているようだ。


『くまのレストラン』は、「最後の晩餐」を題材にしたアドベンチャーゲームだ。物語の要となるのは、天国と地獄の間に存在する、死者に最後の晩餐をふるまう「くまのレストラン」。プレイヤーは、レストランの店長「くま」の助手である「ねこ」となり、訪れた“お客さん”の記憶に潜り込み、生前の好物を探り出す。親しみやすいキャラクターとグラフィックでありながら、「死」というテーマにまっすぐ向き合う作品だ。

同作はiOS/Android版において世界100万ダウンロードを突破しており、2019年のGoogle Indie Game Festivalにてトップ3を受賞、Google Playストアの国内人気アプリが選ばれるGoogle Best of 2019のインディー部門賞に選出されるなど、人気や評価も高い。6月に発売されたNintendo Switch版および9月発売予定のSteam版には、モバイル版からの追加要素として「後日談」が追加されており、そこにホームレスが登場する一幕が含まれているそうだ。


Nintendo Switch版およびSteam版の『くまのレストラン』に、今回の問題の焦点となったホームレスというトピックが出てくることもあり、誤解を招きかねないとして懸念を寄せていたようだ。Daigo氏は自身のスタンスがDaiGo氏のスタンスと大きく異なることも明言している。あわせてDaigo氏は、『くまのレストラン』について、世の中にはいろいろな人がいて、いろんな死に様があることを感じてもらえるようなゲームだと説明。プレイヤーには、遊んだ後にやさしい気持ちになってほしいと願って作っていたようだ。

たしかに、DaiGo氏とDaigo氏のスタンスは大きく異なっている。真逆ともいえる考え方である。トピック自体がそもそもセンシティブであるだけに、Daigo氏の懸念はもっともであるだろう。筆者としては、一連の騒動が『くまのレストラン』に影響を及ぼすことなく、命の終焉を真摯に描こうとするDaigo氏の姿勢が、きちんとプレイヤーに届くことを願ってやまない。『くまのレストラン』はiOS/AndroidおよびNintendo Switch向けに配信中。今年9月にはSteam版がリリース予定だ。


なお、余談ではあるものの前述のミュージシャンのDAIGO氏については、騒動をよそに『星のドラゴンクエスト』にて超ギガレア装備を入手して喜んでいる様子が見られる。また、同じく「ダイゴ」であるプロゲーマーの梅原大吾氏についても平常運転で『テラリア』や『ストリートファイターV』をプレイしている様子だ。いずれの「ダイゴ」氏についても、今後とばっちりを受けることがないよう祈るばかりである。

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

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