Blizzard Entertainment社長J. Allen Brack氏が辞任。訴訟騒動にて批判されていた人物

 

Blizzard Entertainment(以下、Blizzard)は8月3日、同社社長を務めたJ. Allen Brack氏の辞任を発表した。Blizzardのリリースによれば、社長にあたる役割は今後Jennifer Oneal氏とMike Ybarra氏の2名が共同して務めるとのことだ。


Activision Blizzardの子会社であるBlizzardは、『オーバーウォッチ』や『Diablo』シリーズなどの人気作品を複数世に出したゲームメーカーだ。同社は先月7月20日、親会社Activision Blizzardと共にカリフォルニア州行政機関より女性従業員に対する不当な扱いについて提訴されている。訴訟は海外を中心に多くのコミュニティや業界関係者を巻き込む騒動に発展しており、未だ過熱の様相を見せている。本件については複雑極まる状況となっているため、詳細は弊誌における同問題のまとめ記事を参照されたい。

Brack氏は、上述の訴訟において名指しで批判されていた関係者のひとりだ。同氏は2006年にBlizzardに入社しプロデューサー職を務め、2008年7月にはMMO作品『World of Warcraft』のプロダクションディレクターに就任。その後、長きにわたり同作エグゼクティブプロデューサーなどを歴任してきた人物だ。2018年10月からは社長に就いている。訴状のなかで同氏は、Blizzardの社長として社内問題にきちんと対応してこなかったとして厳しく追求されている。一連の騒動のなかでは『World of Warcraft』関係の開発者が多く告発されていることもあり、同氏は強い注目と批判の矢面に立ってきた。Blizzardの発表では引責による辞任かどうかは明確に表明してはいないものの、訴訟問題に関連しての動きと見るのが自然だろう。

今後、同氏の職務についてはふたりの重役が、共同して務めていく。まず、同社開発部門にてエグゼクティブバイスプレジデントを務めている女性重役のOneal氏が起用されている。同氏は『ジェットセットラジオ』のゲームボーイアドバンス移植や『クラッシュ・バンディクー ブッとび3段もり!』や『トニー・ホーク プロ・スケーター 1+2』 などのリメイク作品を手がけたVicarious Visions(元Activision傘下で、今年Blizzardに吸収された)の要職を約13年間務めた人物だ。今年初めからBlizzard重役として起用されている。

もうひとりのYbarra氏は、2019年頃よりBlizzardの技術・プラットフォーム部門にてエグゼクティブバイスプレジデントを務めている。それ以前は、マイクロソフトにてXbox関連部門のさまざまな要職を約19年間にわたって勤め上げている。Oneal氏もYbarra氏も、Blizzard重役としての任期はまだ比較的短い。同社におけるしがらみも少ないとも見られる。この点については、Blizzardに対して抗議の意を示し続けている同社従業員たちへの配慮とも受け取れる。

Brack氏は辞任にあたって、上述のふたりへの信任を表明するメッセージを綴った。メッセージのなかで同氏は、ふたりが同社の変化を加速させるであろうとコメントしている。訴訟と相次ぐ告発により、早急な変化を求められたBlizzard。今回の人事が今後どのような結果に結びついていくのか、慎重に見守りたい。