『FF14』ララフェルがエモートで『WoW』を煽るネットミームが海外で生まれる。源流をリスペクトし続ける運営と、対極的な態度の移民たち

Image Credit : richwcampbell

『World of Warcraft』(以下、『WoW』)からのプレイヤー大量流入の影響で、連日プレイヤー数増加の話題がつきない『FINAL FANTASY XIV』(以下、『FF14』)。『FF14』への流入は、『WoW』の運営に不満を持ったストリーマーを中心に、視聴者を巻き込んでなだれ込んできているような状況だ。海外では『WoW』から『FF14』への流入をネタに、『FF14』プレイヤーが『WoW』プレイヤーを挑発するようなミームが生まれている。エモート「サイドステップ」を踊りながらこちらを見つめるララフェルのGIFは「Uninstallafell」の名称で呼ばれ、「Know your Meme」にも掲載されている。
【UPDATE 2021/7/21 16:10】
本ミームを面白がっているプレイヤーがあくまで一部であることを追記。あわせてタイトルを変更


 

 
Uninstallafellの発祥元は、海外ストリーマーRich Campbell氏の配信だ。Twitchでの『FF14』配信中、他プレイヤーとの交流を楽しんでいたRich氏。ハウジング内で黄色い帽子のララフェル族(Rich氏は「Gremlo」と呼称)が踊るのを眺めているRich氏の画面に、突然Blizzard Entertainmentのゲームランチャー・Battle.netがポップアップする。Rich氏はランチャーを画面外に移動させ、パスワードと思われるなにかを入力したのち、『WoW』をアンインストール。その一連の動作の合間には、Gremloがご機嫌に踊る姿が映し出されている。「Uninstallafell」の名前は、『WoW』のアンインストールと『FF14』の種族・ララフェル族をかけているというわけだ。陽気に踊るララフェル族が『WoW』のアンインストールを煽っているような仕草が一部に受け、特に『WoW』に不満を持って『FF14』に移住してきたプレイヤーの一部が利用しているようだ。海外掲示板の一部プレイヤーが面白がっている。

Rich氏は2020年7月まで『WoW』の公式大会にてホストやコメンテーターを務めていたが、現在Blizzard Entertainmentとの契約は解除されている。契約解除の理由は明らかになっていないが、Rich氏は契約期間中も配信やTwitterで『WoW』の批判をおこなっていた。批判のなかには口汚いものも少なくなかったようで、ファンの間ではこの言動が原因でBlizzard Entertainment側から契約を打ち切られたのではないかと推測されている。現在は『FF14』のストリームをおこなっているRich氏であるが、今なお古巣である『WoW』をこきおろすような発言も見受けられる。
 

※ Rich氏は6月に『WoW』をこき下ろしたのち、『FF14』を称賛している

 
TwitterなどでRich氏はたびたび『WoW』と『FF14』を比較し、『FF14』のほうが優れていると語っている。しかし対照的に、『FF14』運営側は『WoW』に対して敬意を抱いているとたびたび言及してきた。『FF14』のプロデューサー兼ディレクターである吉田直樹氏はかねてより『WoW』を尊敬し、『FF14』の開発にあたって目標としているタイトルであることを明かしている。直近では7月10日に配信された『FF14』の生放送「14時間生放送」にて、「2ちゃんねる」の創立者などで知られるひろゆき氏と対談した際に『WoW』に対する思いを語っている。

対談中、ひろゆき氏が「今年は『WoW』に勝っちゃったじゃないですか」と話を振ると、吉田氏は「『FF14』は『WoW』がなかったら新生できていないんですよ。MMORPGのゲームデザインをまるっきり変えた『WoW』をお手本に、ストーリー部分をより強化したものを作ろうというのが『FF14』のコンセプトだった。だから勝ったとか負けたとかいうのはちゃんちゃらおかしい」と返し、それでも勝ち負けについて論じようとするひろゆき氏を「勝っただの抜いただの言われるのは、正直、僕からするとちょっと迷惑」と両断した(53:07~)。かつて苦境に立たされていた旧『FF14』を立て直すアイデアをくれたタイトルとして、特に吉田氏は『WoW』に対して並々ならぬ思いを持っているのであろう。

古巣である『WoW』に不満を持ち多くのユーザーが『FF14』に流れてきた背景があるとされているだけに、今回のようなネットミームが生まれるのかもしれない。とはいえ、『WoW』批判と同時に『FF14』を持ち上げる海外の風潮は、このリスペクトを台無しにするものにならないかと、筆者は少し懸念している。

海外ストリーマーの影響でプレイヤーの流入が続いた結果、『WoW』を煽るミームまで生まれている『FF14』。しかし『FF14』の源流は紛れもなく『WoW』である。吉田氏をはじめとした開発スタッフは『WoW』に対して尊敬の念を抱いており、『WoW』なくして今の『FF14』は生まれなかったことは、両タイトルを深く遊んだプレイヤーにこそ覚えておいてほしい。

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