「A Ubisoft Original」ブランドは、なぜAnではなくAなのか議論勃発。英語話者でも戸惑う文法と発音の答え

Ubisoftのゲーム作品にしばしば冠される「A Ubisoft Original」の文字。この表記が変ではないかという意見が飛び交い、話題となっている。なぜ、「An」ではなく「A」なのか。

Ubisoftのゲーム作品にしばしば冠される「A Ubisoft Original」の文字。この表記が変ではないかという意見が海外掲示板に投稿され、にわかに話題となった。その背景には「Ubisoft」の発音に対する認識の違いと、英語話者でも戸惑う英文法のルールがあるようだ。


「A Ubisoft Original」は、Ubisoftによる自社スタジオ制作作品に冠される表記だ。こちらの表記については『Tom Clancy’s The Division: Heartland』から導入されたと見られ、以前にリリースされた作品のタイトルロゴなどには見当たらない。自社スタジオ製をことさら強調する表記が追加されたのは興味深い点だ。単純にブランディングの強化とも受け取れるほか、社外スタジオ製の大型タイトルや、インディーゲームのパブリッシングを視野に入れた差別化のためとも考えられる。

なぜこうしたブランドを冠するようになったのか。疑問を抱いた海外メディアEurogamerは、この表記についてUbisoft広報に問い合わせていた。結果、同社広報からは「“Ubisoft Original”の表記は、自社の才能あるデベロッパーたちにより制作されたすべての作品に付与されます」とのコメントが返ってくるに留まり、今後の展開についての深い言及は得られなかったようだ。しかし、そうした興味とよそに一部コミュニティでにわかに盛り上がっていたのは「AではなくAnではないのか?」という疑問にまつわる論争だ。

Image Credit: ResetEra/WastedDeer


先週末、海外ゲームコミュニティResetEraに「A Ubisoft Originalは何でAnじゃないの?」と題するスレッドが立てられた。内容は「Ubisoftは母音で始まるのに、なぜ冠詞としてAがついているのか」という旨を伝えるものだ。投稿者は「頭がおかしくなりそうだ」と述べ、激しい混乱を示している。

その理由は、英文法の冠詞についてのルールだ。「A」と「An」の2種類の冠詞は「不定冠詞」と分類され、文法上の運用も変化する。たとえば、「i・e・a・o・u」といったアルファベットで始まる単語の前には「An」を、それ以外の場合には「A」をつける、という風に覚えた方も多いのではないだろうか。「Ubisoft」はUで始まるため、Aという冠詞をつけるのは一見間違いのように思える。しかし、そこに落とし穴があった。実は、単語がi・e・a・o・uといったアルファベットで始まる場合でも、Aをつける場合があるのだ。そして、「A Ubisoft Original」の場合はAが適切であると考えられる。その理由は、Uの発音だ。

英文法の規則として、AとAnの使い分けは続く単語のアルファベットではなく、最初の「発音」によって変化するのだ。具体的には、母音から始まる単語の前であればAnとなる。例としては、「Update」の場合は「Up(アップ)」という発音となるため、「母音の前はAn」というルールにのっとって「An Update」と表記される。Aをつけてしまうと「ア・アップデート」となり、発音もなかなか困難だ。一方で、「Ubisoft」の場合、最初のUは「You(ユー)」と同じ発音となる。このため、子音と同様にAが冠されるのが適切と判断できるのだ。発音も「ア・ユービーソフト」となり、比較的無理なく口にできる。

また、逆の例としては「Hour」という単語については、冠詞として「An」が付けられる。これは「Hour」の発音が「アワー」となるためだ。「ア・アワー」ではやや言いづらい印象で、「アン・アワー」では比較的スムーズに口にできる。こうして、英文法の複雑さに由来する疑問はひとまず決着を見せた。

一方で、スレッド内での議論の焦点は「UbisoftのUは本当にYou(ユー)と発音するのか」というトピックに移っていく。国内では「ユービーアイソフト」と表記、発音されているUbisoft。しかし海外では「ウビソフト」または「ユービーソフト」と、話者によって発音が分かれるのだ。Ubisoftの発音については海外ではしばしば話題にあがっており、実は過去に当のUbisoft自身が見解を表明する動画を公開していた。

動画のなかでは、Ubisoft関係者たちが思い思いに「Ubisoft」を発音していく。話者それぞれに「ユービーソフト」と「ウビソフト」で発音が分かれている印象だ。なかには、隣にいる同僚と発音が一致せず「ウバ…ウビソフト、誰も気にしないよ」と投げ出してしまう一幕も。また、「カナダ式かフランス語ではウビソフト、ほかの場合はユービーソフトだね」と見解を示す社員もいるようだ。動画の終盤では同社CEOであるYves Guillemot氏が登場し、公式な見解を示している。同氏はUbisoftの発音について、「フランス語ではウビソフトですが、英語ではユービーソフトとも言えます」と説明しつつ、発音についてはそれぞれ喋る人の自由にしてかまわないとしている。

以上の情報を総合すると、発音自体は自由にして構わないものの、「A Ubisoft Original」という表記からは逆説的に「ユービーソフト」という発音が導き出される。オリジナルブランドを世界展開するにあたって、英語圏に合わせた表記を念頭に置いたものだろう。今回の一件は、広い言語圏で展開する企業にしばしば起こる発音の混在と、英文法のルールが組み合わさって疑問が生じたケースだった。

なお、Ubisoftは本日7月19日深夜より、『Tom Clancy’s』シリーズ新作を発表予定だ(関連記事)。

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

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