『マインクラフト』Java版は韓国では実質“19禁”。シンデレラ法の影響による異常事態、抗議の大規模嘆願も


子供から大人まで、幅広い年齢層のプレイヤーに愛されるサンドボックスゲーム『マインクラフト』。しかし現在、韓国における同作Java版は現在、19歳以上対象の“大人向け”レーティング状態になっているようだ。その背景には、韓国における青少年のゲームプレイ時間を制限する制度、通称「シンデレラ法」と、『マインクラフト』をプレイするために必要なアカウントの統合という動きがあった。PC Gamerが報じている。
【UPDATE 2021/7/8 21:15】
記事タイトルの「18禁」を「19禁」へと変更


『マインクラフト』は、言わずと知れた人気サンドボックスゲームだ。そのレーティングは、国内レーティング機構CEROにおいてはA(全年齢対象)、米国およびカナダの機構ESRBにおいてはE10+(10歳以上対象)となっている。動物を屠殺するなどの要素は存在するものの、ゲームプレイの軸となるのは創造性。教育用途などに用いられるケースもあり、少なくとも青少年のプレイが強く憚られる部類のゲームではない。

多くのユーザーが「子供が遊ぶにも安心」と捉えている『マインクラフト』。しかし現在、韓国において同作は実質“19禁”状態になっているそうだ。その原因には、韓国のゲームに関する法制度がある。「青少年夜間ゲームシャットダウン制」は、16歳未満のユーザーについて、午前0時から午前6時の間にオンラインゲームをプレイすることを禁ずる制度だ。0時より制限がかかることから「シンデレラ法」と呼ばれる同制度は、韓国において2011年に議会を通過、施行された。

青少年のゲーム中毒の防止を目的として施行されたシンデレラ法は、オンラインゲーム提供事業者を対象にしたものだ。事業者側は、アカウント情報などを通じてユーザーの年齢をスクリーニングし、午前0時きっかりから午前6時まで対象ユーザーについてはプレイ不可能にするなどの措置が求められた。違反した事業者には、懲役または罰金などが課せられる。また、韓国には国民の「住民登録番号」制度があり、アカウント登録時の年齢照会が比較的容易だ。韓国では多くのインターネット関連サービスで住民登録番号の登録が義務付けられており、年齢による規制などにも利用されている。つまり、他国に比較して、オンラインゲームサービス利用時にも年齢の詐称がしづらい背景があるのだ。


シンデレラ法の成立に対して、韓国の各ゲーム事業者は「低年齢向けゲームについては、メールアドレスのみでアカウントを作成可能にする」などの対策を講じた。住民登録番号を不要とすることで、年齢の詐称は容易になる。すなわち、年齢確認自体をスキップさせることで、シンデレラ法で禁じられている16歳以下のユーザーの深夜利用を黙認する迂回策だったと見られる。

現地事業者以外にも、韓国展開しているXbox LiveやPlayStation Networkなども規制対象になっている。例としてSCE Korea(現Sony Interactive Entertainment Korea)は、シンデレラ法に対応するため、16歳未満のユーザーのPlayStation Networkへの接続、および新規アカウント作成を停止するなどの措置を取っている。マイクロソフトについては、韓国における「青少年」の定義に合わせたものか、19歳未満のXbox Live(およびMicrosoft)アカウントを「子供用アカウント」として設定、サービス内容を制限している。

一方で、Steamなど海外に本拠を置くサービスについてはシンデレラ法の手は及ばなかった。『マインクラフト』についても、Mojangアカウントでプレイ可能だったJava版については、依然として子供でも夜間のプレイが可能だった。しかし、去年から今年にかけてJava版のプレイにもMicrosoftアカウントが必要となり、風向きが変わった。

前述のとおり、韓国において19歳未満のMicrosoftアカウントはサービス内容が制限されている。すなわち、『マインクラフト』Java版は韓国において実質19歳以上対象の“大人向け”ゲームになってしまったのだ。同作公式サイトにおいても「韓国の場合、19 歳以上のプレイヤーのみが 『マインクラフト』Java 版を購入してプレイできます。」と明示されている。シンデレラ法とアカウント統合の影響を受けて、本来であれば青少年でも楽しめるはずの『マインクラフト』が子供の手に届かなくなる状況は、かなり奇妙なものだ。


こうした状況を受けて、韓国では一部コミュニティが紛糾。韓国政府公式サイトの嘆願システムでは、今回の出来事を受けてシンデレラ法の撤廃などを求める署名ページが作成された。「シンデレラ法を撤廃し、『マインクラフト』が成人ゲームになるのを止めよう」と題されたこの嘆願活動には、記事執筆現在で9万5000件を超える署名がなされており、韓国ゲーマーたちのシンデレラ法への不満の大きさを示している。

マイクロソフト側は、今回の件に関する海外メディアGamesIndustry.bizの問い合わせに対して、「現在、韓国における19歳未満の新規、もしくは既存の『マインクラフト』プレイヤーについて、長期的な解決策に取り組んでいます」とコメント。何らかの対応策を考えていることを明かしたほか、今年中に何らかの続報を知らせるとしている。