Steamの居住国設定変更に「3か月制限」追加か。ゲームの地域別価格差を利用する一部ユーザーの取り締まり


ValveがSteamにおいて「利用者の居住国設定の変更に制限を加えている」とする報告が、海外コミュニティで話題になっている。Steamのようにグローバル化したマーケットでは、同一商品であっても、利用者の居住国によって違う価格が提示されるのは珍しいことではない。Steamの居住国設定の変更制限は、そうした国別の“価格差”を利用して安くゲームを入手する行為への対策と見られる。


話題の発端と見られるのは、Steamの詳細なストア情報を提供するサイト、SteamDBによるTwitterへの投稿だ。同投稿によれば、利用者が居住国を偽装してゲームを安く購入する行為を取り締まるために、Valveが「国設定の変更は3か月に1回」という制限を設けたとしている。

Valveが、ユーザーの居住国偽装購入を取り締まる動きを見せるのは初めてではない。Steamでは以前から、VPNなどを利用して、居住地以外の住所を装うことを利用規約上で禁じている。また、Steamは昨年2020年に「支払い方法と居住国の一致」を求める制限を追加している(関連記事)。つまり、SteamDBの報告が事実であれば、今回の国設定の変更制限はそうした取り締まり活動の一環であると見られる。


Steamストアで販売されているタイトルの国による価格差は、たびたびコミュニティでも議論の的になる話題だ。俗に「おま値」といわれることもある国/地域別の値段設定(Geographical pricing)は、Steamに限らずグローバル展開しているマーケットやサービスではよく見られる慣行だ。地域によって顧客の収入や物価などの環境は変わるため、地域別で価格差が生まれるのはある意味必然であるとも考えられる。しかしながら、「安く商品を手に入れたい」という消費者の要望もまた否定しがたい。

Steamでも、地域によって大きくゲーム作品の販売価格が変わる傾向がある。特に顕著に平均価格が安いとされるのが、アルゼンチンやロシアなどの地域だ。海外メディアVPNproが今年1月に発表した調査によれば、アルゼンチンのSteamタイトル価格平均は、米国に比べて49%安いとされている。また、人気ゲーム『Rust』のSteamDBページによれば、同作は記事執筆現在、日本国向けには4100円で提供されている。一方アルゼンチン向けには、883.99ARS(アルゼンチン・ペソ)、すなわち日本円にして約1027円という割安な価格で提供されていることがわかる。

なぜ、こうした価格差が生まれるのかについては、為替や各パブリッシャー、プラットフォームのマーケティング上の判断もあり、断定は難しい。いずれにせよ、規約違反を犯してでも居住国を偽り、安くゲームを購入しようとする利用者を生み出すことに繋がっている。Steamの一連の動きは、規約のみならずシステム上でそうした行為を強く取り締まっていく姿勢のあらわれだと見られる。

なお記事執筆現在、ストア国設定についてのSteam日本語サポートページでは、「過去2週間でストアの国を変更した場合、または以前の国の設定で過去48時間以内に購入した場合」において、アカウントに(ストアの国変更の)クールダウンが入ると記されている。一方で英語の同一サポートページでは、質問に関する項目自体が存在しない状態になっている。これが何を示すかは解釈の余地が広いものの、「国によって国変更への対応が変わる」といった可能性がある。

ゲームの値段設定は、消費者にとってもっともセンシティブな要素のひとつだろう。求めるゲームが他国では半分以下の価格で売られているとなれば、不公平さを覚えるのも致し方ないことだ。実際に、前述のSteamDBによる投稿にも、価格の公平化を求める声などが寄せられてる。しかし、国が変わればマーケットの質や経済的背景が変わるのも事実であり、Valveの判断を擁護する意見も見られる。いずれにせよ、値付けにまつわる販売者と消費者の摩擦は、すぐに解決を見せるものではないだろう。