『妖怪ウォッチ2 真打』で、「えんえんトンネル」を延々走り続けるチャレンジがついにフィナーレを迎えた。挑戦者はYouTube投稿者のバベル氏で、1日数時間、23回の配信にわたって「えんえんトンネル」完走を目指してストイックに疾走する様子を視聴者に届けていた(関連記事)。6月19日、同氏はプレイ時間にして約83時間を費やし、ついに目標である総延長99万9999m完走を達成した。配信の最大同時接続数は29万人を突破し、コミュニティは喜びと祝福の声で溢れている。
『妖怪ウォッチ2 真打』は2014年12月にレベルファイブから発売された、ニンテンドー3DS向けの『妖怪ウォッチ』シリーズナンバリング作品だ。同年7月に発売された『妖怪ウォッチ2 元祖/本家』の拡張版で、映画連動の追加エピソードや、新ダンジョンなどが追加されている。「えんえんトンネル」は『妖怪ウォッチ2 元祖/本家』にて初登場した新マップのひとつだ。一日一回しか挑戦できない上に、内部に踏み入れば、前進しかできない一方通行システム。そしてセーブも不可能となっており、出口に到達するまでは3DSの電源を消すことも、ほかのマップに行くこともままならない。
そして「えんえんトンネル」最大の特徴であり、今回の挑戦においてもっとも重要な要素が「出口までの長さが変動する」という点だ。同マップは、マップにまつわるイベントをクリア後も引き続きプレイ可能になっており、挑戦するごとに総延長が1000mずつ伸びていく。さらにはトンネル内で遭遇するイベントでも総延長が変動するようになっている。挑戦中はゲーム画面左上に、主人公ケータの現在の踏破距離が表示されており、トンネルの奥へ進めば進むほどレアな妖怪やアイテムが出現して“おいしく”なるという仕組みだ。
そして、どこまでも伸びそうな「えんえんトンネル」にも終わりはある。2016年には、ニコニコ動画にて99万9999m地点にて距離計がストップし、出口が出現した記録が投稿されている。今回のバベル氏のチャレンジは、その「えんえんトンネル」カンストを目指し、道中をひたすら克明に中継しつづけるというものだった。
このチャレンジは、バベル氏にとっては苦難の道だった。実を言えば、同氏が「えんえんトンネル」カンストに挑戦したのは今回が初ではない。同氏は数年前から20回以上にわたってカンストに挑戦しており、最長で52万mまで到達するも、幾度も野望を挫かれていた。その原因は前述の、トンネル内で遭遇するイベントにある。
「えんえんトンネル」内部では、さまざまなイベントが発生する。アイテムが入手できるもの、バトルが発生するもの、単純に怖いものなど豊富なイベントが用意されており、それぞれがチャレンジの助け、あるいは障害となる。そして、今回のチャレンジに際して特に重要なのが、トンネルの総延長を大きく変動させる「スイッチ」や「トンネル作業員」といったイベントだ。
総延長変動イベントは、チャレンジの成否に関わるほか、無言で進行するバベル氏の配信をドラマチックにする要素となっている。そうしたイベントの代表格「スイッチ」は、ランダムにトンネルの出口の位置を変動させる。結果には「すこし近くなった」「すこし遠くなった」「とんでもなく近くなった」「とんでもなく遠くなった」の4種類があり、「とんでもなく近くなった」を引けば、チャレンジ失敗に直結しかねない。しかしながら、バベル氏の計測したデータ上は「遠くなる」確率の方が高いようで、基本的には押していく方針で進めているようだ。
バベル氏はこの「スイッチ」がお気に入りのようで、スイッチが出現する度に主人公キャラを動かし、“カメラ目線”にして視聴者を煽る。スイッチが登場するたびに多くの視聴者たちは恐慌に陥り、チャットには「押せ!」「やめろ!」などのコメントが乱舞する。99万m突破後にスイッチが登場した際には、視聴者がこぞって悲鳴をあげる中、バベル氏が決断的にスイッチを押し、見事に「延長」を引き当てる一幕もあった。「スイッチ」はチャレンジを大いに盛り上げた立役者のひとり(?)だと言えるだろう。
ほかにも本配信に欠かせない存在が「トンネル作業員」だ。こちらは出会うと「トンネルを長くすべきか、短くすべきか」と聞いてくるNPC。コミュニティからの人気も高く、作業員の兄貴、通称「サニキ」の愛称で親しまれており、また本チャレンジの主要人物でもある。というのも、バベル氏の今までのチャレンジ失敗の主要な原因は、このサニキなのだ。
サニキは選択肢を間違えなければ、確実に総延長を伸ばしてくれる頼もしいNPCだ。しかし「短くする」を間違って選んでしまえば、トンネルは大幅短縮。以前のチャレンジで最長距離52万mを記録した際も、チャレンジに不意の終止符を打ったのはこのサニキであった。今回のチャレンジでは、バベル氏の操作も的確になり、トンネル延長を確実にこなす「頼れる作業員の兄貴」として活躍していた。
上述の「スイッチ」「トンネル作業員」以外にも、本チャレンジには多くのNPCが登場する。主要なものでは「親切な車掌」があげられる。こちらはトンネル内でランダムに遭遇する「汽車」への乗車を促すNPCだ。乗車した際にはトンネルの奥に運んでくれるか、あるいは手前に戻されてしまう。バベル氏の経験上、このイベントは乗車すると進んでも戻ってもトンネルの総延長が短くなってしまう疑惑があり、今回の挑戦でも乗車には消極的だった。しかし、バベル氏の遊び心かゴール目前にして幾度か乗車に挑戦。その度に大きな前進や後退が発生し、コメント欄にはバベル氏の気持ちを代弁するかのように、一喜一憂する声が殺到した。
そうした紆余曲折の末、本日6月20日0時頃、ついにチャレンジの結末が見えてきた。その頃にはチャレンジ配信の同時視聴者数は、29万人という国内YouTubeライブでは記録的な数字を叩き出した。Twitterでは「#えんえんトンネルカンスト」が国内トレンドトップに出現し、同ハッシュタグにファンアートや応援の声が多数寄せられた。バベル氏の狂気のチャレンジは、いつしか多くの『妖怪ウォッチ』ファンたちの胸を打つ一大イベントとなっていたのだ。
出口が近づくにつれ、今までの疾走とは対照的にゆっくりと歩を進めるバベル氏。カウントをストップした際には、出口に向かう足を止めて感慨にふけるような様子を見せていた。そこからやや歩くと、光が差し込む出口が見えた。一瞬ためらう様に足を止め、それでも光の中に踏み込んでいくバベル氏。すると画面はまばゆい光につつまれ、「えんえんトンネル脱出!」の文字が出現。5月7日のチャレンジ開始から約44日間、23回の配信、プレイ時間にして83時間38分を経て、めでたくチャレンジ達成となった。
トンネルを抜けたエリア「むこうがわ」に待つのは、NPC「えんえん少女」だ。エリア内に咲き誇る桜も心なしか、バベル氏のチャレンジ達成を祝福しているように見える。待っていたえんえん少女は「あら また来たのね。」「楽しかったかな?」と主人公に問いかけた。返答の選択肢はないが、この旅は間違いなくバベル氏や視聴者にとって価値あるものだっただろう。そして与えられたクリア報酬は、妖怪ガシャを引くのに使う「桃コイン」3個。希少性はともかく、このアイテムは特別な勲章だ。
チャレンジ終了後もコミュニティの興奮は冷めやらず、Twitterでは「#えんえんトンネルカンスト」ハッシュタグに多数の投稿が寄せられている。挑戦者のバベル氏も視聴者への感謝の言葉をツイートしており、リプライ欄には称賛とねぎらいの声が連なっている。なお、バベル氏は今回のチャレンジ最初の動画にて、完走した際には総集編を投稿する予定だと告知していた。楽しみではあるものの、今はただゆっくり休んでほしいところだ。
今回のチャレンジ完走は、バベル氏の『妖怪ウォッチ』愛の結実と言えるだろう。このチャレンジは、7月11日の同シリーズ8周年を記念するためにおこなわれたそうだ。コミュニティの盛り上がりに反応したものかは定かではないが、バベル氏の挑戦終了直後には、『妖怪ウォッチ』公式Twitterアカウントも奇しくも「えんえんトンネル」にまつわる投稿をしている。
『妖怪ウォッチ』ファンを中心に、多くの視聴者の注目を集めた今回のチャレンジ。結果として、約7年前にリリースされた『妖怪ウォッチ2 真打』が、再び脚光を浴びることとなった。そういった点でも、バベル氏の挑戦はシリーズ8周年祝いとして非常に有意義だったのではないだろうか。人気冷めやらぬ『妖怪ウォッチ』シリーズとファンコミュニティは、バベル氏のような愛あるプレイヤーが存在するかぎり、これからも発展し続けることだろう。