スクウェア・エニックスが運営するMMORPG『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FF14』)のパッチ5.55が本日公開され、新たなコンテンツが多数実装された。新パッチ公開に際したメンテナンスは5月25日の12時から19時までの予定であったが、データベースサーバーの最適化処理に時間を要し、メンテナンスは20時15分まで延長。そしてそのメンテナンスのさなかである18時ごろ、パッチノートに気になる文章が追記された。とあるNPCの年齢が「不具合」として修正されたのである。
年齢が修正されたNPCは、「セイブ・ザ・クイーン」に登場するミコト・ジンバである。セイブ・ザ・クイーンには登場人物の詳細な記録である「戦果記録帳」というものが存在し、そのなかでキャラクターの年齢や出自、性格などの設定を知ることができる。ミコトの戦果記録はすでに実装済みだが、今回のパッチで年齢の記載が29歳から24歳に修正されたのだ。誤植の修正とも思われたが、セイブ・ザ・クイーンのシナリオと戦果記録のテキスト執筆を手掛ける松野泰己氏はTwitterで弁明。どうやら、彼の強いこだわりが全面に出た結果の修正であるようだ。
ミコトの初登場はパッチ4.Xシリーズのアライアンスレイド「リターン・トゥ・イヴァリース」で、公式から出版されている世界設定本にも項目がある人物である。その世界設定本には29歳という年齢が記載されており、松野氏もそれをもとに戦果記録を執筆したが、年齢と言動が一致しないことに違和感があったという。そこで今回、メネニウス・サス・ラナトゥスの年齢の誤植を修正するにあたり、「ついでに」とミコトの年齢変更をリードストーリーデザイナーの織田万里氏に打診。結果、今回の修正に至ったというわけである。
『FF14』において、NPCの年齢が修正されたのは今回が初めてではない。ミコトと同時に修正されたメネニウスと同様に、パッチ5.3では「ウェルリト戦役」に登場するNPC・ミリサンディアの年齢が30歳から20歳に修正されている。兄妹たちの年齢や本人の言動から推測するに、こちらもおそらくただの誤植であろう。誤植からの修正は例があっても、シナリオライターのこだわりによって修正されるのはなかなか珍しいケースと言える。
ちなみに、リターン・トゥ・イヴァリースの執筆を手掛けたのも松野氏であるため、29歳という当初の年齢設定に松野氏自身が関わっている可能性は少なくない。とはいえ、なにか物語を描いたことのある方ならおわかりになる感覚だろうが、キャラクターを長く描いているうちに彼らが意志を持ったかのように勝手に動くようになり、当初の設定から徐々に逸脱していく……という現象は少なからず起こるものである。特に後から設定を追加したり、人間関係を複雑にしたりすれば、なおさら当初の設定との齟齬は生じやすくなる。筆者は別名義で細々と漫画を描いて食っている身であるが、松野氏の感覚に非常に強い共感を覚えた。この状況に陥った場合の作家の選択肢は、当初の設定に軌道修正すべきか、いっそ設定を変えてしまうかの二択。松野氏が選んだのは後者であったのだろう。 そしてその選択を尊重し、開発側も実際に修正作業をおこなっている。松野氏と開発スタッフの間に信頼関係があってこそできた修正とも言えるだろう。
パッチにて突然5歳若返ることとなった『FF14』のNPC・ミコト。ところで、SNSなどではこの修正を「アッパー」と呼ぶユーザーと「ナーフ」と呼ぶユーザーがいるようだ。ミコト24歳派は“アッパー”、29歳派は“ナーフ”と呼んでいる様子である。ちなみに筆者はミコトからほんのりと年上のお姉さん属性を感じていたので、実のところ修正前のほうが好みであった。修正によってミコトが年下になってしまったことに、いささかの悲しみを抱いている。
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