『メトロイドプライム トリロジー』Nintendo Switch移植は“技術的に”難しい。噂が絶えない同作について元開発者がコメント

『メトロイドプライム トリロジー』のNintendo Switch移植は“技術的に”難しいようだ。同作の主要開発者だったMichael Wikan氏が語った。

任天堂のプラットフォームWiiで2009年に発売された『Metroid Prime Trilogy(メトロイドプライム トリロジー/以下、トリロジー)』。同作は日本未発売ではあるものの、いまだにリバイバルを願う声が根強い。 そうしたファンの期待ゆえか、Nintendo Switch版についての噂もしばしば持ち上がっている。同作の主要開発者だったMichael Wikan氏(以下Wikan氏)がFacebook上で、『トリロジー』のNintendo Switch移植の難しさについて、見解を投稿していた。

『メトロイドプライム』シリーズは、『メトロイド』の名を冠した一人称視点シューターだ。「武装の切り替えやスーツの能力を駆使し、エリアを隅々まで踏破していく」という原作の特徴を活かしつつ3Dシューター化されている。2D作品であるオリジナルシリーズの魅力を保ちつつ、一人称視点シューターというアプローチを実現させていることで評価の高い作品だ。


『メトロイドプライム』シリーズは国内外のファンからの支持も根強く、2017年のE3で続編『メトロイドプライム4』が発表された際にはコミュニティが大いに沸き立った。過去3作がまとめられた『トリロジー』についてもNintendo Switchへの移植が熱望されており、 たびたびNintendo Switch版が発売されると噂になりファンを一喜一憂させている。

今回『トリロジー』の移植についてコメントしたWikan氏は、『メトロイドプライム』開発元のRetro Studiosでリードゲームデザイナーを務めた人物だ。『メトロイドプライム』3作や『トリロジー』にシニアゲームデザイナーなどの立場で参加しており、開発のコアスタッフと言えるだろう。なお、同氏はWiiで2010年に発売された『ドンキーコング リターンズ』に携わったのを最後にして、Retro Studiosを去っているとのこと。

Wikan氏は、『メトロイド』メディアサイトShinesparkersのFacebookアカウントによる投稿に対してコメント を残した。Shinesparkersの投稿内容は画像が一枚、映画「ロード・オブ・ザ・リング」で、ビルボ・バギンズが指輪を持っておくことを決めるシーンに絡めたミームである。画像では、指輪のかわりに『トリロジー』のパッケージを取り出して、再プレイを決断するかたちでコラージュ。同作を繰り返しプレイするファンの心境をコミカルに表現している。

45 playthroughs later…

Shinesparkersさんの投稿 2021年4月14日水曜日


上記投稿に対してファンも反応。とあるファンが「もしNintendo Switchで『トリロジー』が出たら、喜んでもう一度プレイするよ」とコメントした。その言葉に反応するかたちで、Wikan氏が自身の見解を述べた。同氏は「(『トリロジー』のNintendo Switch移植は)多くの労力を必要としますので、私は移植の実現には懐疑的です」と述べ、その理由を一連の投稿で語りだした。

「『メトロイドプライム』と『メトロイドプライム2 ダークエコーズ』をモーションコントロールに対応させて(Wii向けの)『トリロジー』に移植することは容易でした」とWikan氏。続けて「しかし、『メトロイドプライム3 コラプション』を通常のコントローラー操作に対応させることは莫大な労力を必要とします」と述べた。

移植が難しい理由のひとつは、操作方法の違いのようだ。Wiiで発売された『トリロジー』の操作はいずれも、Wiiリモコンの赤外線センサー機能などをふんだんに使った操作に最適化されている。Wikan氏の投稿によれば、特に『メトロイドプライム3 コラプション』についてはゲーム内のスクリプトやボスの挙動が、Wiiリモコンの操作に緻密に対応するよう組み上げられているそうだ。そういった操作をNintendo SwitchのJoy-Con向けに再調整するのが非常に難しいということだろう。


Nintendo Switchにおいては、コントローラーが本体に固定されているNintendo Switch Liteというバリエーションも存在する。Nintendo Switch Liteを考慮すれば、モーションコントロールのみに対応する移植はできない。ただ 、Wiiリモコン操作に特化した作品をNintendo Switch向けに移植しようとする作品がないわけではない。今年7月発売予定の『ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD』がまさしくそうだ。こちらはモーションコントロールに依らないコントローラー操作を両立させており、同作も操作面でのテコ入れが施されていることが予想される。Wiiリモコンを駆使したWiiタイトルをNintendo Switchに移植するにあたって、操作の再調整は避けられないのかもしれない。

また、Wikan氏は、過去の『メトロイドプライム』シリーズを編集するためのツールが、“機能する形で” Retro Studios内に残っていないとしている。そのため、移植にあたってはすべて「力技」であたることになり、その分かかる労力も大きいものになるだろうとの見解を示した。Wikan氏はあくまでもRetro Studiosから離れた身ではあり、実際に『トリロジー』がNintendo Switchに移植されるかどうかは現在の関係者のみ知ることだ。しかし、今回の同氏による投稿は『メトロイドプライム』シリーズにコアメンバーとして携わっていた人物の証言でもあり、同氏の把握する限りの情報を語ったものだろう。同氏の話が本当ならば、“ユーザーが想像するHD移植”以上のハードルが存在することになる。

Nintendo Switch新作としてファンが望みを託す『メトロイドプライム4』は2019年1月、開発体制の見直しが発表された。その際にRetro Studiosが開発を担当することが告知されている(関連記事)。旧作がリバイバルされるとしても、まず新作の再始動が必須条件となりそうだ。

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

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