ゲーム販売サイトHumble Bundleが寄付率を最大15%に制限する意向を発表。チャリティー販売先駆者の方針転換にユーザーからとまどいの声
Humble Bundleは4月23日、同サイトでバンドルを購入する際に設定できるチャリティー寄付率を固定し、最大を15%とする方針を発表した。こちらの仕様でのテストは来月5月下旬から行われるとのことだ。これはチャリティーを軸にする同サイトの根幹に関わる変更であり、コミュニティの間に波紋を呼んでいる。
Humble Bundleは、コンテンツ購入金額の一部をチャリティー団体に寄付できることが特色のコンテンツ配信プラットフォームだ。サイトではゲームだけでなく、書籍や一般ソフトウェアなど幅広い分野のバンドルが販売されている。
同サイトでは、複数のゲームが安価で手に入るバンドルが頻繁に提供されているほか、支払い方法も特徴のひとつだ。というのも、バンドルのほとんどはユーザーに購入額をゆだねる「Pay-What-You-Want(好きな額でお支払い)」というシステムで提供されている。支払った額に応じて、入手できるコンテンツも変わる。さらには、「購入額から何%を、どこのチャリティー団体に割り当てるか」という、“寄付率”をユーザーがみずから設定することができる、柔軟性の高い仕組みが導入されていた。
しかし、今回の発表とともに寄付率を変更するスライダーが購入画面から消失。また、発表に先行して1か月ほど前から、一部のユーザーの画面からスライダーを無くすテストがおこなわれていたようだ。Humble Bundleは今回の発表のなかで、告知なくテストをおこないコミュニティに混乱を招いたことについて謝罪している。
しかし、発表を受けてコミュニティの反応はいっそう激しくなっている。争点はおもに、寄付率に上限が設けられるようになったことのようだ。スライダー廃止以前は、支払額のほとんどをチャリティーに回すことも可能だった。しかしHumble Bundleは今回の発表で、寄付率はサイト側が設定した5%、もしくは15%のどちらかをユーザーが選ぶかたちになるとしている。なお残りの取り分としては「パブリッシャーが85%と Humble Bundleが10%」もしくは「パブリッシャーが80%と Humble Bundleが5%」となっている。
もともとはチャリティープロジェクトとして発足したHumble Bundleだけに、今回の寄付率15%制限について失望の色を隠せないユーザーも多いようだ。SNS上では、運営企業が買収されたことによって売り上げを重視するようになったとする意見もみられる。Humble Bundleは2017年にIGNに買収されている(関連記事)。
海外掲示板Redditでも、このトピックに関するスレッドで活発な議論がかわされている。こちらでも多くのユーザーが批判的な意見を投稿しているようだ。しかし、Humble Bundleの過去のビジネスモデルは持続可能なものではなかったとし、競合他社が増加するなかで生き残るための決断だとして、方針転換を進める同社を擁護する意見も投稿されている。
今回の決定についてはHumble Bundleの規模拡大も影響しているかもしれない。かつてはインディーゲームのバンドル販売が軸だったHumble Bundleだが、設立から10年以上を経た現在では『CONTROL』や『Call of Duty』シリーズなど、AAAタイトルの単品販売もあつかう大規模プラットフォームになっている。
ゲーマーが継続して寄付に協力できるゲーム配信サイトとしては、Humble Bundleは本稿執筆時点では最大規模。運営や維持にも規模相応の売り上げが必要だろう。それゆえにチャリティー部分を制限する決断をとったのかもしれない。しかし、寄付率に大幅な制限を設けるという決定は、Humble Bundle立ち上げの発端であり、ユーザーの支持の基盤でもあるチャリティー精神を揺るがしかねない。
組織が維持できなくなれば、寄付の場自体が失われてしまう。しかしビジネスに舵を切りすぎれば、Humble Bundleの重要な魅力が失われてしまう。理想と現実のはざまで、今後どう歩みを進めるのか、Humble Bundleの今後の動向に注目したい。
【UPDATE 2021/5/6 12:50】
Humble Bundleは5月5日、寄付率スライダーの廃止を一時的に取り下げることを発表、実装方法について謝罪した。コミュニティーの意見を受けて、方針を検討し直すとのことだ。発表に伴い寄付率スライダーが再び表示されるようになっている。スライダー廃止と共に予告されていたサイトUIの変更については、スライダーをふくむ形で今後数週間のうちに実装予定とのこと。